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特許実務系の書籍は久しぶりですが、大変勉強になりました。

本書はタイトルにもあるように、英文に翻訳されることを想定した日本語クレームをどう書くべきか、を主なテーマにして経験豊富な弁理士が長年の実務経験を踏まえて作成したワークブックです。

本文は三章に分かれており、第1章は「クレームドラフト入門」、第2章は「構成要件列挙型クレーム作成の実務」、第3章は「クレームドラフト演習」となっています。

第1章は、クレームとは何か、どのように作成していくのか、クレーム記載の形式にはどんなものがあるのか、など、まさに入門的な内容になっています。構成要件列挙型、書き流し型、ジェプソン型の一般的な説明があり、英文クレームはどのような表現になるのかを特に詳しく解説しています。また、クレームドラフティングにおいてどのように特許要件を意識するかも詳しく、それなりの経験者を前提としているのがわかります。

第2章は、構成要件列挙型でクレームドラフティングしていく中で、電気・機械分野で押さえておくべき論点を各節に分けて解説している各論的な内容になっています。私が特に興味深く読んだのは、第4節「下位概念、クレームの展開」、第5節「システムと構成装置,完成品と部品,本体装置と消耗品」です。

第4節「下位概念、クレームの展開」では、従属クレームを記載する意義を掘り下げて論じていて勉強になりました。本書では、(1)権利取得の観点から、どこまでの限定であれば拒絶理由を解消できるか判断する手掛かりとする、(2)無効の抗弁への対抗の観点から、下位概念に限定することで無効の主張を回避できる可能性がある、(3)独立クレームの権利範囲の解釈において、特許権者側に有利となるように、と3点が挙げられています。自分の業務では権利取得が第一義的な目標になっているので、中間対応で新規性・進歩性違反の拒絶理由が通知されたときに対応し易いように、という観点で従属クレームを立てがちです。権利化後に関しては、確かに(2)の無効主張への対応くらいは頭にありますが、(3)のように権利解釈において、下位概念が確実に権利範囲に含まれると解釈されることを意図して従属クレームを立てる、というのは目から鱗が落ちる思いでした。本書では、その他にも、内的付加の従属クレームを作成する意義、外的付加の従属クレームを作成する意義など、さらに細分化して検討していて興味深く読みました。

第5節「システムと構成装置,完成品と部品,本体装置と消耗品」に関しては、いわゆるコンビネーションとサブコンビネーションのクレームについて、下位概念と同様に、部品のクレームを作成する意義などを実例を挙げながら説明されています。私は情報通信関係の特許を扱うことが多いので、「A装置とB装置とC装置からなるDシステム」みたいな発明で、権利行使の観点から「Dシステム」の他に「A装置」「B装置」「C装置」それぞれのクレームを立てるということをよくやりますが、システムには拒絶理由はないが装置には拒絶理由があるという中間対応を行うことが大変多いので、大変興味深く読みました。基本的には、『特許実用新案審査基準 第III部第2章第4節 特定の表現を有する請求項等についての取扱い』にある内容なのですが、実施の裁判例などを挙げて具体的に説明しているのでイメージしやすい説明になっていると思いました。

第3章は、いろいろ分野の発明内容からクレームを起案してみようというものでした。時間があったらやってみたらいいと思います。もし後進の指導をする立場にあるのであれば、題材として適当な感じがするので参考にしたらよいかもしれません。私は読み飛ばしました(すいません)。

特許実務も、ある程度の件数をこなしてくるとルーチンワークになってきて、自分がしている仕事の細かい意義を見失うようなところが出てきます。本書では普段何気なくやっている実務を掘り下げて検討しているので、そうした気の緩みを突かれたような気分になり、気を引き締めて日々の業務に取り組まなければいけないという思いを強くしました。ある程度実務になれてきた3~5年目くらいの人が読むと効果的なように感じます。もちろんそれより上の方でも頭をブラッシュアップするのに活用できるのではないでしょうか。

また数年したら改めて読み直したいと思いました。

▼特許実務関係では、このあたりもおすすめです。

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