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朝日新聞がベストライセンス株式会社こと上田育弘氏にインタビューした記事を掲載していました。

先日は産経新聞の一言コメントに失望しましたが、さすがわが国のクオリティペーパーは取材力が違いますね。高木真也記者には賛辞を贈りたいと思います。

 「リニア中央新幹線」「民進党」などよく知られた名前を自分の商標として大量出願する男性がいる。出願件数は国全体の1割に及び、特許庁は異例の注意喚起を出した。本人は「あくまでビジネス」というが、主張は通るのか。

 「検索に頻繁に引っかかり、『ああ、またか』と思う。その都度、顧客に説明するのが大変」(弁理士)と非難を浴びるのは、大阪府在住の元弁理士、上田育弘氏(53)。知的財産の情報サイト運営会社「ルート ip」によると、2015年に上田氏と同氏が代表の会社は計1万4786件を出願した。国内全体の約14万7千件の約1割を占め、他を大きく引き離す。

出典:商標乱発、国全体の1割出願 男性「あくまでビジネス」

別記事で一問一答を掲載していましたので、簡単にレビューしてみます。

――大量の商標を出願する目的と、始めたきっかけは

 将来に自分で商標を使う、他人に権利を譲渡する、先に出願しておくことで権利を仮押さえする。この三つが狙いだ。2013年に弁理士会の会費を滞納して、弁理士の登録を抹消され、出願代理人として活動できなくなった。そこで、自分で商標を出願することにした。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

さすが弁理士試験予備校を経営しているだけあって教科書通りの回答です。

登録抹消の理由が会費未納ということも判明しました。とにかく財布の紐が固い人のようです。

 ――なぜ、手数料を払わないのか

 権利化するメリットがあるものを、後から厳選して払う。数千件の中からいくつかを選び出す。もうけにはまだなっていないが、いつカネに結びつくかわからない。欲しい人が現れれば実になる。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

日本の商標制度は先願主義なので、この考え方自体は(好ましいとは言えないとしても)否定できるものではありません。

 ――出願する言葉はどうやって決めているのか

 新聞が主で、インターネットやテレビ、ラジオなどあらゆるメディアの情報を元に選んでいる。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

まぁ、そうでしょうね。

 ――「民進党」や「STAP細胞はあります」「LOVELIVE(ラブライブ)」といった、よく知られた名前や話題になったものが多い

 自分自身がこれから政治家になって活動するかもしれないし、権利を譲渡する可能性もある。民進党は私に3日遅れて商標を出願したが、出願前に党名を公開したのが間違い。東京五輪の新しいロゴは、商標出願をすませてから公表された。権利をとりたいなら、あれが正しいやり方だ。

 「STAP細胞~」は、ジャーナリズムの中でこれから役に立つ可能性がある。いろんな標語に使えると思って出願している。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

言ってることの大半は筋が通っています。民進党は公表前に出願しておくべきでした。ある意味有益なケーススタディであるとも言えます。

ちなみに「標語」について従来の商標審査基準では標語やキャッチフレーズは識別力がないものとして拒絶されていましたが、審査基準の改正で一律に拒絶されることはなくなりました。ただし、仮に標語が登録されても標語として使用する限りは商標としての使用ではないので、登録する意味はありません。少し違和感のある説明だと思います。

 ――群馬県太田市が複合施設の愛称「BITO」の使用を断念した。周囲に影響も出ている

 太田市にライセンスの譲渡をメールで市長あてに申し込んだ。まだ返事は来ていない。3、4カ月前かな。これから(出願の)手数料を払うかどうか検討していく。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

商標ゴロ宣言をいただきました。

ここから推測するに、上田氏は出願だけして(そして分割出願を繰り返して出願を維持しながら)ライセンス契約を迫り、相手が応じたところで出願手数料を支払い権利化を目指す、という戦術を描いていることがわかりました。

これは大方の予想どおりです。いわゆるサブマリン商標の亜流みたいなものでしょうか。

しかし通常のトロール行為とは異なり、交渉時には登録されていない上に瑕疵ある出願ですから裁判に持っていくことができないし、相手が使用を中止したらなす術もありません。非常に非効率なやり方です。

特に、これだけ名前が知れてしまえば相手が交渉に応ずることは期待できませんから、ビジネスとしてはもう破綻しているのではないでしょうか。

 ――制度上、問題はないのか

 全然、問題ない。商標は創作物ではないので窃盗という概念がない。選択の問題で、選択眼が正しいかどうかが問われていく。私自身としてはこれだけで有名になりたくはないという気持ちはあって、当然金もうけ、ビジネスモデルを打ち立てた時点で有名になればとは思う。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

これはおっしゃる通りで、世間一般の「パクリ」観念と法上のいわゆる「冒認」との差を表していると思います。上田氏の行為は制度上は問題はなく、流行り言葉で言えばまさに「不適切ではあるが違法ではない」行為と言えます。

後段についてはもう手遅れという印象です。しかし上田氏に「有名になりたい」という願望があったとは少し意外でした。

 ――制度に抜け穴があると

 その通りだ。今のシステムには問題点が多い。知的財産は所有しているだけでは意味がない。他人に使わせるための取引市場が整備されていない。活動でこうした点も訴えていきたい。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

まぁ、その通りではありますね。

どのようにしたら抜け穴を埋められるのか、ぜひご提言いただけたらと思います。

 ――インターネット上などで批判されていることについては

 問題になる、ネットで騒がれる、ということは僕の出願をいやがっている人も多いということ。逆に言えばその権利を欲しいということ。売買に結びつけば即、ビジネスになる。これからライセンス売買のためのホームページを立ち上げる予定だ。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

「逆に言えばその権利を欲しいということ。」???

 ――第三者から依頼されたケースもあるのか

 暴力団のような悪いつながりは一切ない。正当なビジネスだ。

出典:「民進党」「ラブライブ」…大量出願した男性の一問一答

3年間も実入りのない活動を続けているわけだから、反社会的勢力との繋がりがないのはその通りなのだと思います。もしそうなら今頃無事ではないでしょう。

ちなみに上田育弘さんはこんな感じの人です。

こんな動画も出てきました。多才な人ですね。

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