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マツコロイドの開発で有名な石黒浩氏の著作です。最近仕事関係で石黒研究所の方と間接的に関わることがあったので興味を持って読みました。

他の書籍は自ら筆を取られているようですが、本書は過去の文章や最近の話からライターの方が書き起こして編集したものだそうです。

本書の章立ては以下のとおりになっています。

第1章 不気味なのに愛されるロボット--テレノイド
第2章 アンドロイド演劇
第3章 対話できるロボット--コミューとソータ
第4章 美人すぎるロボット--ジェミノイドF
第5章 名人芸を保存する--米朝アンドロイド
第6章 人間より優秀な接客アンドロイド--ミナミ
第7章 マツコロイドが教えてくれたこと
第8章 人はアンドロイドと生活できるか
第9章 アンドロイド的人生観

全体で220ページほどの新書ですが、全9章となかなか盛りだくさんな内容です。ご覧のとおり、石黒教授が開発したアンドロイドの代表作を切り口に、開発の経緯や研究の意図が語られています。

テレビなどではマツコロイドやジェミノイドFのようにリアルなアンドロイドが注目されることが多いですが、テレノイドやコミュー、ソータのように、一見アンドロイドと呼んでよいのかわからないアンドロイドの話の方が個人的には面白かったです。

テレノイドは人間の顔に申し訳程度の体躯が付いただけの男とも女とも子供とも大人とも判別できない通話用ロボットです。高齢者が医者や家族と話すときにテレノイドを通じて話した方が話がはずむという結果が出ているそうです。徹底的に個性を殺すことで相手に対して気遣う必要がなく本音で話せるようになるようです。

Telenoid
出典:Telenoid

コミューとソータは玩具のような見た目の対話ロボットです。人間も交えてグループで対話をしながらコミュニケーションを行うことができます。

CommU
出典:JSTプレスリリース

特徴的なのはコミューとソータはいわゆるAI的なものを持たず、人間の発話を聞き取ったりそれに対する適切な返答を考えたりする機能は備えていません。あらかじめ定めたシナリオに沿って決められたセリフを話すことしかできません。本書でも紹介されているプロモーションビデオを見ると、人間とちゃんと会話が成り立っています。

これらの試みは、人間を模したはずのアンドロイドから必要な機能を徹底的にそぎ落としていくことで、人間とは何なのか、コミュニケーションとは何なのかを、露わにしていくなるのだと思います。人間のコミュニケーションにとって必要最低限に必要な機能は何なのかが明らかになることで、より人間らしいアンドロイドに近づいて行くのだろうと思います。

本書では星新一の『ボッコちゃん』について触れている箇所もあります。『ボッコちゃん』はSF小説だけれど、同じことを人類はすでに実現しているというわけです。『ボッコちゃん』の発表は1958年だそうです。半世紀を超えて過去の人間が想像したものが現実になっているというのは感慨深いものがあります。

私はあまり長生きしたいとは思っていない方ですが、あと半世紀後にどんな世の中になっているか見届けたい気持ちも出てきました。

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