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いわゆる「脱獄」したiPhoneをネットオークションで販売したとして逮捕されたニュースが流れていました。

逮捕されたのは、富山市に住む池田大将容疑者(24)です。警察によりますと、池田容疑者は、ことし春ごろ、iPhoneの「iOS」という基本ソフトを不正に改造した端末5台をオークションサイトで販売したなどとして、商標法違反の疑いが持たれています。こうした改造は、販売元のアップル社の規制から逃れるという意味で「脱獄」と呼ばれています。
iPhoneでは、安全性の問題からアップル社が公式に認めたアプリしかダウンロードできないように規制されていますが、「脱獄」するとこの規制が解除され、どんなアプリでも入手できるようになり、ゲームの不正利用などが行われてしまうということです。しかし専門家は、安全性が低下し、ウイルス感染する危険性が高まると指摘しています。

出典:「脱獄」iPhone販売容疑で24歳の男を逮捕 | NHKニュース

逮捕容疑が商標法違反であったので、なぜ商標法と関係があるのかと注目を集めています。私も最初は不正競争防止法あたりかなと思って記事を開いたのでちょっとびっくりしました。

一般的に、商標には以下の4つの機能があるとされています。これらの機能を害する行為が商標権の侵害とされます。それぞれの詳しい説明は省略しますが文字面から何となく内容はわかると思います。

  1. 自他商品等識別機能
  2. 出所表示機能
  3. 品質等保証機能
  4. 広告宣伝機能

市場に流通する商品を正規に購入した後、改造を施して元の商品名で転売する場合、品質等保証機能が侵害されるおそれがあります。

「iPhone」のロゴが付いた商品を購入するとき、消費者はその「iPhone」のロゴに裏打ちされた品質を期待して購入を決めるわけですし、商標権者であるApple社は「iPhone」の品質が消費者の間で信用を獲得できるように日々の営業活動を行っているわけです。改造した商品に「iPhone」のロゴを付けて販売する行為は、このような消費者の期待を裏切ることであり、商標権者の信用を毀損することです。

こうした事案はいくつも判例があって、有名なのは「マグアンプK事件(大阪地判H6.2.24)」です。大袋で販売している化学肥料を小分けして元のロゴを付して転売したケースです。現状裁判所HPからは検索できないようですが、ウェブ検索ではいくつか解説がヒットします。

【要旨】
 登録商標が付された商品を購入し、これを小分けし、詰め替え包装し直したものに対して、商標権者の許諾なく当該登録商標と類似する標章を付して販売する行為は、商標権の侵害に当たる。

【コメント】
 どんな事案かというと、大袋に入った肥料(登録商標つき)を、適当に小分けして包装し直し、登録商標に似た感じの標章を“手書き”して販売しちゃったらしいです。

 こういう行為は、元々の大袋に付されていた登録商標の出所表示機能、品質保証機能を害することになりますので商標権の侵害となります。

 実質的にみても、小分けにする段階で肥料の品質に変化を来すおそれがあり、異物が混入する可能性もあるので、このような行為が許されるとすれば、商標権者の業務上の信用を害し、また需要者の利益を害するおそれも生じます。ここでも大事なのは、実際に品質が変化していたかどうかが問題なのではなく、その“おそれ”があるという点です。

出典:判例紹介(マグアンプK事件): 弁理士試験 判例道場

「nintendo事件(東京地裁H4.5.27)」というのもあります。ファミコンを改造して任天堂のロゴを付けて再販売したケースです。こちらの方が今回の事案に近いかもしれません。

【要旨】
 登録商標が付された商品に改造を加えて当該商品とは同一性のない商品とした上で、このような商品を当該登録商標を付したまま、更に自己の商標を付して販売した場合、当該販売行為は、当該登録商標に係る商標権の侵害となる。

【ひとこと解説】
 上述したように、昔懐かしい往年の名ゲーム機「ファミコン」に連射機能などを付加する改造を施し、市場に出回らせた第三者の行為が侵害とされました。

 その理由ですが、改造後の商品は改造前の商品と同一性がないので、登録商標「Nintendo」が付されたままでその改造品が販売されると、登録商標の出所表示機能、品質保証機能が害されるから、ということです。

 すなわち、裁判所は、「・・・改造後の商品がX(注:商標権者)によって販売されたとの誤認を生じるおそれがあり、これによって、Xの本件登録商標の持つ出所表示機能が害されるおそれがあると認められる。さらに、改造後の商品については、Xがその品質につき責任を負うことができないところ、それにもかかわらずこれにXの本件登録商標が付されていると、当該商標の持つ品質保証機能が害されるおそれがあるとも認められる。したがって、Y(侵害者)が、X商品を改造した後も本件登録商標を付したままにしてY商品を販売する行為は、Xの本件商標権を侵害するものというべきである」と判示しました。

出典:判例紹介(nintendo事件): 弁理士試験 判例道場

マグアンプK事件は品質が劣化するおそれが問題にされましたが、nintendo事件を見るように、改造によって機能が向上したとしても結論は変わりません。消費者は「iPhone」であればこのような機能を備えている商品のはずだという期待を持って商品を購入しているので、そこから逸脱する商品となるように改造していれば、消費者の信用は裏切られてしまうからです。

なお、改造がされてない真正商品のままであれば、転売する際に「iPhone」のロゴを付しても商標権の侵害にはなりません。最初に販売した際に商標権は消尽するからです。「消尽」とは知的財産権で使われる用語で、権利が使い尽くされてそれ以降権利行使ができない状態となることです。一旦メーカーから流通に出た商品に対してどこまでもメーカーが権利を主張できるとしたら面倒ですからね。

簡単にまとめますと、ポイントは以下のようになります。

  • 改造商品を元の商品名で販売すると商標権侵害になる
  • 理由は商標に裏打ちされた品質に対する信用を棄損するから
  • 真正商品を元の商品名で転売しても商標権侵害にはならない

販売のときに改造前の商品名を出さなかったらどうなんだとか、改造内容について詳しく説明して販売したらどうなんだとか、疑問は尽きないのですが、そういうケースが事件にならないとよくわからん、というのが正直なところです。

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