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英科学雑誌『ネイチャー』が特別号で日本の科学研究が失速していることを指摘しているという報道が話題になっていました。

世界のハイレベルな科学雑誌に占める日本の研究論文の割合がこの5年間で低くなり、世界のさまざまな科学雑誌に投稿される論文の総数も日本は世界全体の伸びを大幅に下回ることが、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」のまとめでわかりました。

「ネイチャー」は、「日本の科学研究が失速し、科学界のエリートとしての地位が脅かされている」と指摘しています。イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は、日本時間の23日未明に発行した別冊の特別版で日本の科学研究の現状について特集しています。

それによりますと、世界のハイレベルな68の科学雑誌に掲載された日本の論文の数は、2012年が5212本だったのに対し、2016年には4779本と、5年間で433本減少しています。

また、世界のハイレベルな68の科学雑誌に掲載された日本の論文の割合は、2012年の9.2%から2016年には8.6%に低下しています。

出典:英科学雑誌 日本の科学研究の失速を指摘 | NHKニュース

ネイチャーの記事は科学雑誌の論文掲載数ですが、特許出願数でも同じことが言えます。日本の特許出願数が長期にわたって減少を続けていることは広く知られつつあると思いますが、改めて最新の統計情報から確認しておこうと思います。

データはWIPO(世界知的所有権機関)の提供する統計データベース(IP Statistics Data Center)から取ってきました。件数はTotal Patent Applications、すなわち国内出願と国際特許出願から国内移行した件数との合計です。

WIPO Intellectual Property Statistics Data Center

図1は出願数の多い五大特許庁(日、米、欧、中、韓)それぞれの出願件数を2001年から2015年までグラフにしたものです。CNは中国、EPは欧州、JPは日本、KRは韓国、USは米国です。

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▲図1:出願件数の推移・特許庁別(2001~2015)

日本は2001年には44万件超で世界で最も特許出願の多い国でしたが、2006年に米国に抜かれ、2010年には中国にも抜かれ、2015年時点で大差を付けられての3位となっています。気が付けば上の米国との差よりも下の韓国との差の方が小さいくらいまで追い上げられています。

日本はこの15年間で12万件以上、率にして27.5%、特許出願数が減少しました。グラフを見てわかる通り、出願数が減少しているのは日本だけです。中国は国策的に出願を増やしているので異常な伸びですが、15年間で出願数が17.5倍になりました。2001年の時点で世界2位の特許大国であった米国でさえ、15年間で1.8倍に増えています。

図2は世界全体の出願件数における各国の出願が占める割合を2001年から2015年までグラフにしたものです。特許分野における各国の存在感がよりわかりやすくなると思います。

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▲図2:世界全体における割合の推移・特許庁別(2001~2015)

日本は2001年には世界の特許出願の3割超を占めていました。2015年には1割程度まで低下しています。存在感という意味では15年間で3分の1になりました。

現在圧倒的な存在感を示しているのはやはり中国です。今や世界の特許出願の4割弱が中国への出願です。米国も中国の急激な伸びに押されつつも世界全体の2割程度を維持していて存在感を示し続けています。欧州や韓国も世界全体の伸びと同程度に伸びているので全体における割合は大きく変化していません。

日本だけが急激に世界の特許分野での存在感を失っているのが現状なのです。

図1~2は特許庁別の件数なので、例えば米国人が中国特許庁に出願した特許は中国の件数にカウントされています。WIPOの統計では出願人の国籍別でもデータが取れるので、同じようにグラフにしてみました。欧州でまとめたデータがないので代表国としてドイツ(DE)を入れました。

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▲図3:出願件数の推移・出願人国籍別(2001~2015)

日本の出願人(多くは日本企業)は2001年には世界全体で50万件超の出願をしていましたが、2015年には45.5万件ほどとなっており、約1割低下しました。減少はしているものの日本特許庁への出願件数の低下具合と比べるとまだ緩やかな下げとなっています。米国との差もまだ数万件程度で、がんばれば挽回可能な雰囲気はあります。

とは言ってもここに挙げた5カ国の中で件数が減少しているのはやはり日本だけですから、安心できるような状況ではありません。

日本特許庁の出願件数は大きく減少しながら日本企業の出願件数は緩やかな減少に留まっている要因は二つ考えられます。一つは、外国人が日本で特許を取ろうとしなくなったことです。もう一つは、日本人が外国で積極的に特許を取るようになったことです。

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▲図4:世界全体における割合の推移・出願人国籍別(2001~2015)

世界全体における割合を見ると、2001年には35%弱だったのが2015年には15.8%まで低下しています。低下幅は大きいものの、まだ米国人と僅差の3位です。

全体的な傾向としては、日本企業を含めて日本で特許を取るモチベーションは大きく低下していて、これは日本のマーケットに対する期待感の著しい低下(いわゆるジャパンパッシング)がはっきり表れているものと言えます。日本企業はまだそれなりの開発成果を挙げているものの、世界全体の趨勢と比べるとその勢いの低下ははっきりしています。

手元にデータはないですが企業の研究開発投資額と特許出願数というのは強めの正の相関がありますので、特に出願件数を稼いでいた電機業界が不振にあえぐ姿を見せられると当然の結果と言えなくもないでしょう。

何十年後の未来の話はともかくとして、自分が現役を退くまでの25~30年くらいは何とかもって欲しいと思う今日この頃です。

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