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フリーがマネーフォワードを特許権侵害で訴えた件の判決が出まして、大方の予想通り請求棄却でマネーフォワードの勝訴となりました。

 フリー株式会社(以下「フリー」)が株式会社マネーフォワード(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:辻庸介、以下「当社」)を被告として提訴した特許侵害訴訟について、本日、東京地方裁判所は、フリーの請求を棄却する当社勝訴の判決を言い渡しましたので、以下のとおりお知らせいたします。

 フリーは、平成28年10月21日、当社の提供するクラウド型会計ソフト「MFクラウド会計」の自動仕訳技術が、フリーの保有する特許第5503795号の特許権を侵害するとして、東京地方裁判所に差止請求を求める訴訟(平成28年(ワ)第35763号)を提起しました。これまで約9か月にわたって審理が続けられてまいりましたが、本日、東京地方裁判所民事第47部(裁判長:沖中康人判事)は、当社の主張を全面的に認め、フリーの請求を棄却する判決を言い渡しました。

出典:フリーからの特許侵害訴訟で勝訴 ~東京地裁平成29年7月27日判決~ | 株式会社マネーフォワード

このブログでも提訴時に該当の特許を見て考察してみました。フリーはかなり不利だろうという結論になりましたが、予想通りの展開でホッとしています。

マネーフォワードの技術がどのようなものかは「機械学習」の一言でブラックボックス化されているので判断は難しいですが、普通に考えると明細データを特徴量化して識別器にかけるんでしょうから、freeeの特許の文言だと侵害していない可能性が高いんじゃないかな、という感じがします。

また、特許第5503795号は出願日が2013年10月17日になっています。弥生の出願でキーワードと勘定科目の対応テーブルに基づいて自動仕訳することは公知になっている状態で、複数のキーワードがあるときにルールに従って優先するキーワードを決めることが2013年の時点でそんなに難しいことだろうか、という疑問もあります。要するに、freeeの特許は無効と判断される可能性が高いのではないか、ということです。

こうして見てみると、freeeの方が分が悪いように思えます(個人の感想です)。

出典:freeeがマネーフォワードを訴えた特許 | やめたいときは やめるといい。

CNETがマネーフォワード側の代理人弁護士に取材をした内容を報道しています。通常の特許権侵害訴訟では理解しがたい流れで大変違和感があったとのことです。

 また、「実務経験からして非常に違和感を持った」という。2016年9月下旬に、出願公開中の特許を含む複数件の特許番号とともに、特許がマネーフォワードに侵害されているという内容証明郵便が届いている。郵便では、どのサービスでどの特許が侵害されているか書かれておらず、詳細に検討できないことから、その部分を提示するようfreee側に求めていた。ただし、その1週間後には訴状が届いたという。「普通なら訴状の準備に1カ月程度かかるが、1週間で届いた。郵便を送付した段階ですでに訴状が作成されていたのでは」と、上山弁護士は語る。

出典:マネーフォワードがfreeeに勝訴–会計ソフト機能の特許訴訟で – CNET Japan

具体的な根拠を示さずに特許番号のみを示して警告を送る、という手法は米国のパテントトロールのやり方そのものです。彼らは裁判で勝つことが目的ではなく、面倒くさがって和解金を払わせることが目的ですから、いちいち相手の製品が特許権を侵害しているかどうかを分析する手間など掛けたくないからです。

判決文を見ると知財分野では著名な特許法律事務所を使っているようなのですが、提訴段階では専門家等に相談せずに突っ走ってしまったんでしょうか。謎です。

TechCrunchが入手した判決文へのリンクを公開していたので読みました。
参考:【速報】自動仕訳で特許侵害なし、マネーフォワードがfreeeに勝訴 | TechCrunch Japan

興味深かったのは、フリーが均等侵害について主張をしていて、対応テーブルを用いる処理を機械学習を用いた処理に置き換えることが容易に想到できた(第3要件)と主張していることです。

フリーは今回の特許より後に出願した特許第5936284号を保有しています。この特許は「各取引の取引内容の記載をキーワードに分節し、各キーワードに対応づけられた1又は複数の勘定科目の出現頻度を参照して」などと、機械学習を用いる技術であることを特徴としています。

均等侵害の第3要件は対象製品の製造時が基準になります。判決文によるとマネーフォワードの対象サービスは平成28年(2016年)8月20日にリリースされたとのことです。特許第5936284号は2014年7月14日が出願日となっています。2016年8月20日の時点で機械学習に置き換えることが当業者にとって容易であったのであれば、2年前の2014年7月14日の時点でも機械学習に置き換えることが容易だった可能性も出てくるわけです。ちょっと不用意な主張なのではないかという印象を受けました。

フリーの方もプレスリリースを出していて控訴する気まんまんな雰囲気を醸しているんですが、こんな主張するのなら傷が広がらないうちに矛を収めた方がお互いのためにいいんじゃないかと思います。

■ 今後の見通し及びプロダクトへの影響
当社としては、判決内容を吟味し、控訴等の必要な対応を今後検討してまいります。
なお、当社は原告であり、本判決において当社が保有する特許の有効性も否定されていないため、本判決による「クラウド会計ソフト freee」をはじめとした当社プロダクトへの影響はございません。

出典:株式会社マネーフォワードに対する特許権侵害訴訟の判決について | プレスリリース | freee株式会社

そう言えばフリーの特許第5503795号は無効の可能性も高そうだと考えていたんですが、マネーフォワードは無効審判の請求をしてないみたいですね。潰すまでもなく非侵害と判断したのでしょうか。

それに具体的な根拠も示さずに訴訟提起をしてメディアで大々的に発表する行為は不正競争防止法第2条第1項第15号の「競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」にも当たり得る行為です。実際、マネーフォワードの方ではビジネス上の影響が少なからずあったこともCNETの記事には載っています。

 ビジネス面でも影響はあったという。辻氏は、銀行などとの連携に際し「基本的にはサポートしていただいたが、金融機関はレピュテーションリスクに敏感であり、今回の訴訟の結果が出るまで行内も動きづらいということはあった。今回、結果が出たので、さまざまな連携が動き出すのではないかと思っている」としている。

出典:マネーフォワードがfreeeに勝訴–会計ソフト機能の特許訴訟で – CNET Japan

マネーフォワードの方は淡々と非侵害だけを勝ち取ればよいという対応をしていて、個人的にはもっと攻撃的な対応は取りようがあったと思うのですが、とても優しい会社だなと思いました。

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