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2018年2月27日、不正競争防止法を中心とする知的財産関連法の改正案が閣議決定されました。政府は今通常国会での成立を目指すとのことです。

 政府は27日、不正競争防止法などの改正案を閣議決定した。昨年から相次ぐ製造業の品質不正問題を踏まえ、JIS(日本工業規格)の認証マークを不正に表示した企業への罰金の上限を従来の100万円から1億円に引き上げることが柱。政府は今国会に提出し、早期の成立を目指す。(2018/02/27-15:46)

不正競争防止法案を閣議決定=JIS違反の罰則強化:時事ドットコム

改正の詳細については経済産業省が公表しています。全体としては不正競争防止法と工業標準化法(JIS法)の改正が主ですが、密かに特許法等の改正も含まれています。

(3)特許法等の一部改正
中小企業が知財を戦略的に活用しやすい環境を整備するため、全ての中小企業を対象に特許料等を半減する制度を導入します。
裁判所が書類提出命令を出すに際して、非公開で書類の必要性を判断できるようにするとともに、特許庁における判定制度の関係書類に営業秘密が記載されている場合にその書類の閲覧を制限できるようにするなど、知財紛争の処理に関する手続を充実させます。
特許出願等における新規性喪失の例外期間の延長、特許料等のクレジットカード納付制度の導入、意匠の優先権書類のオンライン交換制度の導入、商標出願手続の適正化を措置します。

「不正競争防止法等の一部を改正する法律案」が閣議決定されました(METI/経済産業省)

さりげなく「商標出願手続の適正化」なる文言が入っていまして、この改正がいわゆる「一部の出願人」対策ではないかと話題になっています。(「一部の出願人」については下記リンク先参照。)

(参考)自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意) | 経済産業省 特許庁

改正されるのは商標法第十条第一項の分割の規定です。下線を引いた部分が変更になる文言です。

(商標登録出願の分割)
第十条 商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合であつて、かつ、当該商標登録出願について第七十六条第二項の規定により納付すべき手数料を納付している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

ちなみに現行の商標法第十条第一項は以下のような規定になっています。

(商標登録出願の分割)
第十条 商標登録出願人は、商標登録出願が審査、審判若しくは再審に係属している場合又は商標登録出願についての拒絶をすべき旨の審決に対する訴えが裁判所に係属している場合に限り、二以上の商品又は役務を指定商品又は指定役務とする商標登録出願の一部を一又は二以上の新たな商標登録出願とすることができる。

つまり、現行法では元の出願が特許庁に係属していれば分割出願をできるのですが、改正後には元の出願で出願手数料を納付していなければ分割出願ができないことになるわけです。

これがなぜ「一部の出願人」対策になるかは、「一部の出願人」の出願行動をおさらいするとわかります。「一部の出願人」は他人の使用している商標や流行語、それらに類似した言葉などを片っ端から商標登録出願しています。この際に出願手数料は納付していません。手数料未納は方式不備になりますので、特許庁はその出願を却下するのですが、却下するまでには一定のタイムラグが発生します。「一部の出願人」はこのタイムラグを利用して、却下が確定する前に指定商品・役務を微妙に変更した分割出願をしています。こうして分割を繰り返すことで先取り商標が特許庁に係属している状態を一銭も払わずに半永久的に維持できるわけです。

無事に改正されると分割出願ができなくなりますので、最初の出願が却下されれば、その先取り商標については出願を維持しておくことができなくなります。「一部の出願人」による先取り商標出願を完全に防止することはできませんが、一回分のサイクルで終わりにできます。これによって、本来の権利者が商標登録を受けるまでの期間を大幅に短縮することに繋がるでしょう。

通常の出願でも手数料未納は受け付けないようにするという考えもありましょうが、「一部の出願人」以外が本当に料金を計算間違いしたとか予納口座の残高不足とかのミスで出願が受け付けられない場合を想定すると難しいと思います。商標の審査は先願主義ですから、一日でも早い出願日を確保するのは重要なのです。

その手があったか、という感じで目から鱗がこぼれる思いでした。一日も早く施行されることを祈念いたします。

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