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Amazon.co.jpが音楽クラウドサービスAmazon Cloud PlayerとクラウドストレージサービスAmazon Cloud Driveをリリースしました。

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それぞれどんなサービスかはAmazonのヘルプサイトから引用します。


Amazon Cloud DriveはAmazonが提供するクラウド上に、お客様のファイルを保存できるサービスです。Cloud Driveには、ビデオ、写真、ドキュメントなどのファイルを安全に保存することができます。Cloud Driveに音楽ファイルを保存することもできますが、再生はできません。

Amazon Cloud Playerは音楽に特化したクラウドサービスです。Amazon Cloud Playerにはパソコン版、Android版、iOS版の3種類があります。パソコン版Amazon Cloud Playerを使用すると、MP3ストアで購入した楽曲が自動的に保存され、パソコンのブラウザを使って楽曲を再生できます。
(ヘルプ > Amazon MP3 ストアとパソコン版Amazon Cloud Playerより)

米国Amazonが世界に先駆けてAmazon Cloud Playerのサービスを開始した時、日本では著作権法の関係でリリースすることは無理だろう、という見解が多く見られました。地裁レベルですが、すでに同様のサービスで著作権が問題となった事案があったからです。MYUTA事件(東京地判H19.5.25)です。

事件の概要については以下の記事に詳しく載っていました。
MYUTA事件とiCloud(花水木法律事務所) – BLOGOS(ブロゴス)


MYUTAとは、au WIN端末向けストレージサービスである。ユーザーは、MYUTAからダウンロードしたソフトウェアを使って、手持ちのCDの音楽データを携帯電話用ファイルに変換し、パソコンに取り込んだ上、MYUTAの管理運営するサーバーにアップロードする。そして、携帯電話からサーバーにアクセスして、音楽をダウンロードする。

このサービス提供会社が、①音楽著作権者の有する複製権(著作権法21条)を侵害するか否か、②送信可能化権(23条1項)を侵害するか否かが、争われた。

で、MYUTA事件においては実際の操作はユーザが行なっているとしても、そのためのツールはサービス提供事業者が提供しているから、複製の主体はサービス提供事業者であり、サービス提供事業者は著作権者の複製権を侵害している。複製を行う一連の過程の中で送信可能化されるので、送信可能化の主体もサービス提供事業者である。そして、このサービスは誰でも申し込めば利用できるのであるから公衆に対して送信可能化しており、送信可能化権を侵害する。という判断がされました。

この考え方をAmazonのサービスに当てはめてみましょう。Amazon MP3のサービスで購入した音楽ファイルが個々のユーザに割り当てられたAmazonのクラウドストレージ上のスペースに保存されます。この場合、音楽ファイルを複製し送信可能化しているのはAmazonになります。そもそも楽曲を販売しているのはAmazonですからこのようなサービスで提供する以上著作権はクリアした上で販売しているはずです。つまりAmazonが合法に音楽ファイルを販売している限り、著作権侵害の問題は発生しないだろうと考えられます。

あくまで個人的な見解ですが、ユーザからアップロードが行われずAmazon MP3で購入した楽曲のみが利用できる限りにおいては著作権的な問題はないのかな、という気がします。

では何で米国でサービスを開始した時に著作権の問題が懸念されたのかって話になるんですけど、今回日本でサービスを開始したAmazon Cloud PlayerはUSのAmazon Cloud Playerのフル機能は提供されていないんですね。

Amazon.comのAmazon Cloud Playerのヘルプには以下の項目があります。
Amazon.com Help: Importing Music into Cloud Player

The Amazon Music Importer allows you to import music from your computer to Amazon Cloud Player, where your music can be played and downloaded from any PC or Mac computer, or compatible device.

米国Amazonが展開しているサービスのように、ユーザが手持ちのファイルをAmazon Cloud Playerにアップロードできるようにした場合には、MYUTA事件とほぼ同じ構図になりますから、現状では著作権侵害と判断される可能性が高いと考えられます。
※個人的には、誰でも利用できるサービスだから公衆送信にあたるというのは論理的に無理がある判断で、結論ありきで論理構成しているんじゃないかという気がしています。同様の批判が多く出されているようです。

というわけで、今回リリースされたサービスの範囲であれば、Amazon Cloud Playerは著作権的な問題はなさそうです。というかその落とし所をすり合わせていてサービスリリースがこれだけ遅れたんじゃないかな、なんてことも思います。

せっかく技術進歩によって便利なサービスが実現できているのに、整備の遅れる法律に足を引っ張られるのは弊害が大きいことです。機能が制限されているとは言え、先進的なサービスを日本でも安心して享受できるようになったことは素直に喜んでおきたいと思います。


オススメの本

『「ネットの自由」vs.著作権: TPPは、終わりの始まりなのか』福井健策(著)

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