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平成24年も残り僅かになりました。今年もいろいろな出来事がありましたが、自分にとっての重大事件の一つが著作権法の改正でした。

元々著作権法についてはあまり詳しかったわけでもなく、ざっくりとどんな制度なのかとか現状どんな問題点があるのかとかは把握していたつもりでも、なぜこんな制度になっているのかなぜこんな問題点があるのかなど、深いところはまったく把握していなかったように思います。

今年著作権法の改正がありそうという話を聞き、その内容に衝撃を受け、さらにとんでもない立法過程を目の当たりにして、この国はとんでもないことになっているということを強く印象付けられました。

ぶっちゃけて言ってしまえば、著作権法の改正内容自体は直ちに自分の生活に大きく影響するものではありません。それでも自分にとって著作権法の改正が重大な事件だったと感じるのは、日々流れていく時事問題を漫然と追っていくだけでは、問題の本質を見抜くことはできないということを思い知らせてくれた、端的に言えば目を醒まされた一件だったからです。

さて、前置きが長くなりました。本書は2011年9月に刊行された著作権法に関する問題点を取り上げた本です。

第一章では、著作権とはどのような権利なのか、近年著作権法にどのような改正が行われてきたのかなどを概観します。第二章では、著作権に関連する紛争が如何に複雑化しているかを事例を挙げながら説明します。第三章では、著作権法関連の立法過程がどのようになっているかを概説します。第四章では、平成21年に施行された不正ダウンロードの違法化がどのようになされたのかを追います。第五章では、海外の海賊版事情を紹介します。第六章は最終章で、今後予想される問題などを指摘し、総括をします。

本書の読みどころは何と言っても、第四章「ダウンロード違法化はどのようにして決まったのか」です。平成21年著作権改正で盛り込まれた、違法にアップロードされた著作物を故意にダウンロードすることを違法とする改正でした。平成24年著作権改正で盛り込まれた、いわゆる違法ダウンロードの刑事罰化は、この違法ダウンロードに対して刑事罰を課すようにした改正です。

ダウンロード違法化の議論は当初からそれを目的としたものではありませんでした。本来はアナログ機器を前提として時代遅れになっていた私的録音録画補償金制度の見直しの議論の中で副産物として導入された規定だったのです。本書では文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会の議事録を読み解きながら、どのような議論の変遷を経てダウンロード違法化が立法されたのかが生き生きと描き出されています。

日本の法律がどのように作られていくのかがよくわかるし、どのような人たちが著作権保護による既得権を持っているのかも見えてきます。対立構造が見え易くてドキュメンタリーとしても読み応えがあります。この一章のために定価2,400円を払っても惜しくありません。

本書全体を通して、著者は近年の著作権の保護強化の流れに対して批判的な立場です。そういう意味では著作権に関する事情をフラットに論じた書ではありません。本来著作権は何らかの創作を行う人にしか関係のない法律のはずであったのが、近年の改正でコンテンツの消費者である一般の国民にも強く影響する法律になっています。おそらく技術進歩が進むにつれて、また大きく著作権の姿も変わっていくと思います。

ある日突然犯罪者になっているようなことがないように、これからも注意深く監視をし、不当な改正がされるようであれば声を上げていきたいと思います。


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