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衆議院総選挙が公示された12月4日、総務省が選挙人名簿の登録者数を発表しました。これを受けて一票の格差は最大で2.428倍であることが報道されています。

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(衆院選:「1票の格差」2.428倍に拡大- 毎日jp(毎日新聞)より引用)

このブログでもいわゆる「0増5減」法案が成立した頃に、是正前と是正後の状況について確認した内容を記事にしました。

参考:0増5減で一票の格差はどうなったのか

報道を見たときには、人口の増減が思ったより大きかったのかな、くらいにしか思いませんでした。調べたときには平成23年9月2日現在の登録者数しか見つからなかったためです。

しかし毎日新聞の記事では0増5減法案についても触れていて、以下のように記載されています。

 これに基づき、福井、山梨、徳島、高知、佐賀5県の小選挙区を1ずつ減らせば、最大格差は2倍未満に収まる。衆院選挙区画定審議会は新たな区割り作業に着手しているが、有権者への周知などの手続きに時間がかかるため、今回の衆院選には間に合わなかった。

どうやら新たな区割りを決めるのは「衆院選挙区画定審議会」らしく、今回の総選挙には準備が間に合わないから従来通りの区割りで実施することにしたとのこと。

私はてっきり総選挙のために現状できる範囲で一票の格差を是正するのが、いわゆる0増5減法案の目的だったと思っていました。確か野田総理が解散を明言した安倍自民党総裁との党首討論で「まず0増5減をやって来年の通常国会で本格的に手当てをする」って言ってたと思うのですが、何だったんでしょうか、あれは。選挙戦に突入するために何らかの実績を上げておきたいだけの方便だったとしか考えられません。

一般の国民からしたら当然行政側で実行できる見通しがあるから法案を通すものだと思うし、それを実行させるのが政治家の役割だと思うんですよね。結局、民主党の言う「政治主導」というのは行政とのすり合わせを無視した「政治家の暴走」でしかありませんでした。野田首相は最後の最後で評価できるいい仕事をしたと感じていたので非常に残念でなりません。

さて、もう一点記事で気になる部分がありました。「5県の小選挙区を1ずつ減らせば、最大格差は2倍未満に収まる」の部分です。私が以前計算した範囲ですが、一票の格差は2.39倍から2.35倍に是正されるだけだったはずです。どんな計算をしたら2倍未満になるんでしょうか。

元ネタを探したのですが選挙人名簿登録者数のデータはまだネット上には公開されていないようです。一方で衆院選挙区画定審議会の議事録が見つかりました。この中で資料5に是正後の一票の格差を概算した表が添付されています。

総務省|衆議院議員選挙区画定審議会|第7回衆議院議員選挙区画定審議会
資料5 衆議院小選挙区都道府県別人口、定数、較差(緊急是正法による改正後)

この資料では、是正前は東京都と高知県の較差が2.066であり、是正後は東京都と鳥取県の較差が1.788となっています。この資料では都道府県ごとの人口を選挙区数で割った値が最大となる都道府県と最少となる都道府県の較差が「一票の格差」として捉えているようです。

一票の格差という問題は、1人の国民が持つ選挙権について1人の国会議員を当選させる影響力が住んでいる地域間で差があることを言うはずです(正確な定義ではありません)。現在の衆議院選挙は小選挙区制ですから選挙区毎の有権者の人数にバラつきが大きいことが問題なのであって、都道府県単位の人口は目安にはなったとしてもこれを見て議論できる数値ではありません。

各都道府県内の選挙区がすべて均等に区割りできるのであれば構いませんが、市区町村単位で選挙実務が実施される以上それは不可能なことです。また、選挙権を持たない未成年者と選挙権を持つ成人の人口比がすべての都道府県で同一であるわけもありません。人口ではなく選挙名簿登録者数で議論しなければ意味がありません。

もう一点、衆議院議員選挙区画定審議会の資料で疑問に思ったことがあります。資料1 緊急是正法関係資料の一節です。

2 審議会の行う今次の改定案の作成は、次に掲げる基準によって行わなければならない。
①各選挙区の人口は、人口の最も少ない都道府県の区域内における人口の最も少ない小選挙区の人口以上であって、かつ、当該人口の2倍未満であること。
②小選挙区の改定案の作成は、次に掲げる小選挙区についてのみ行うこと。この場合において、当該都道府県の区域内の各小選挙区の人口の均衡を図り(イの小選挙区の改定案の作成の場合に限る。)、行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこと。
イ ①の都道府県の区域内の小選挙区
ロ 小選挙区の数が減少することとなる都道府県の区域内の小選挙区
ハ ①の基準に適合しない小選挙区
ニ ハの小選挙区を①の基準に適合させるために必要な範囲で行う改定に伴い改定すべきこととなる小選挙区

自分が平成23年9月2日現在の登録者数から計算した0増5減後の一票の格差では、最も登録者数の少ない選挙区は長崎3区になりました。長崎県は「人口の最も少ない都道府県」ではないので、②のイには該当しません。0増5減で議席が減るのは福井県・山梨県・徳島県・高知県・佐賀県なのでロにも該当しません。長崎3区の是正前の格差は1.09倍なのでハにも該当しません。ニの規定ぶりが曖昧なんですが、長崎県内の選挙区はいずれも是正前の格差が2.00倍未満なので該当しないような気がします。

こうやって見てみると従来われわれが問題と考えている一票の格差と総務省が考える一票の格差には乖離があるように見えます。これは正しい方向性で検討が進められるのだろうか、この後に根本的な選挙制度改革が行われるはずなのに、本当に実行されるのだろうか、非常に疑問に感じています。

そして、毎日新聞は、こんな素人がちょっと調べればわかる穴だらけの情報を元にして「5県の小選挙区を1ずつ減らせば、最大格差は2倍未満に収まる」なんていい加減なことを安易に報道しないでいただきたい。この報道ではあたかも2.428倍ある一票の格差が0増5減の区割りを正しく行えば2倍未満に是正されるかのように読めます。

※以前計算したシートを公開しています。参考までにどうぞ。
一票の格差

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