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京都大学の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞したことで一気に有名になったiPS細胞ですが、早速iPS細胞に関する特許詐欺で被害が広がっていることが報道されていました。

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iPS細胞:特許詐欺 全国で12件5200万円の被害- 毎日jp(毎日新聞)より

確か注意情報をどこかで見たなーと思って調べてみると、11月2日付で消費者庁から注意喚起情報が出されていました。詳細な被害の状況が書かれていて、なかなか興味深いです。

iPS細胞作製に係る特許権の「知的財産分与譲渡権」勧誘に関する注意喚起

以下、注意喚起情報中に記載されていたパンフレットの内容(抜粋)です。

「事業内容」
 当社が開発した遺伝子DNA解析機により患者の遺伝子設計図を作製することに成功しました。この設計図を元から出来た人工遺伝子で iSP細胞を作ります
 当社が発明、開発した、さまざまな組織や細胞に成長する能力がある iPS細胞の作製に関する技術を日本、アメリカをはじめ世界50ヶ国で知的財産特許権を取得いたしました。医療や創薬の分野で研究開発を行う企業とのライセンス契約をし、これまでに約90の特許を管理・運用しております。
 また、世界最大手、アメリカの製薬会社「※実在の製薬会社」社と、関連技術の使用を認める非独占的なライセンス契約を2012年1月締結しました。
 取得した知的財産特許権を社会に還元するため、この度「知的財産分与譲渡権」の販売にふみきり、一般の投資家の皆様に、もっと再生医療について知っていただくとともに、利益還元を行なっていく考えであります。

「商品比較」
 今回、当社でご提供いたします「知的財産分与譲渡権」は株式投資やFX投資のように元本割れのリスクは、ほとんどありません。
 なぜなら、当社の知的財産特許権の契約は、20年以上の契約となっており、半永久的に特許使用料の収入が見込まれています
 投資商品というよりも安心してできる高利回りの定期預金と考えられています。

①事業内容がうさんくさい

いいですね、「遺伝子DNA解析機」「遺伝子設計図」。

私の理解では、「遺伝子」は遺伝情報という情報の種類を示す概念的な言葉であり、「DNA」はデオキシリボ核酸という物質の名前です。新聞に例えてみると、遺伝子はニュース記事で、DNAは紙みたいなもの。新聞紙に印刷されたニュースはWebに掲載されてもニュースだし、新聞紙はニュースが印刷されてなくても紙です。

「遺伝子解析」なら遺伝情報がどんなものかを調べることだし、「DNA解析」ならDNAという物質がどのような構造になっているかを調べること。「遺伝子DNA解析機」という言葉では何を解析するのか判然としません。いかにも不自然です。

「遺伝子設計図」というのもどうでしょう。遺伝子が「生物の設計図みたいなものだ」とか言われることから思い付いたんでしょうか。「生物の設計図」だったら、設計図とはつまり「遺伝子」そのもののことでしょう。「頭痛が痛い」くらいの重複表現です。

②商品比較がうさんくさい

特許権は出願日から20年で消滅します(特許法67条)。通常は出願から登録されるまで4~5年かかります(早くする制度もあるし長くかかる場合もあります)。出願から登録まで何年掛かったとしても、特許権は出願日から20年で消滅します。特許権が消滅すれば通常実施権も消滅するので、特許権消滅後にライセンス料をもらえる道理がありません。「半永久的に特許使用料の収入が見込まれる」ということはあり得ません。

覚えておくとよいこと

よくわからないけど凄そうな技術について、出資するとライセンス料を原資に配当が出るという投資詐欺は古典的な手法のようです。説明されても中身がよくわからないし、特許を取ってると儲かりそうという先入観があるんでしょうか。わかってる人なら「あり得んだろ(ワラ)」と一蹴する話でも現実に引っ掛かってしまう人が一定量出て来ます。

このような特許関係の投資案件が出てきたら、まず特許が存在するか、誰がその特許権を持っているのかを確認しましょう。日本で登録されている特許はすべて特許庁の提供する「IPDL特許電子図書館」で確認できます。

出資募集元に、対象特許の「特許番号」だけ聞けばよいです。ちなみに特許番号は最大7桁の数字です。

特許電子図書館のトップページから「特許・実用新案検索」>「1.特許・実用新案公報DB」を開き、文献種別=B、文献番号=<確認した特許番号>、と入力して検索しましょう。検索結果がなければその特許は存在しません。

検索結果が存在したら特許公報を見て、権利者名とか、会社所在地とか、募集内容と矛盾する点など怪しいところがないか確認しましょう。

理解できないものには投資するな

オマハの賢人と呼ばれる投資家のウォーレン・バフェットは、ITバブルの頃に「事業内容がよくわからない」としてネット関連企業には見向きもしなかったそうです。大きく儲けることはできませんでしたが、ITバブル崩壊による被害は受けずに済みました。

自分の大事な資産を投資するのであれば、自分に理解できるものだけに託しましょう。何かよくわからないけど凄そうだとか、利回りがすごいとか、外見だけで投資するのは愚かなことです。

少しでも身を守るためには、怪しいものを怪しいと感じ取れるだけの教養を少しずつ身に付けていくのが結局は近道なんだろうな、と思います。


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