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この本はタイトルよりも帯の言葉の方が内容をよく表している。
『Google, Apple, Facebook, Twitterはなぜアメリカで生まれたのか?』

現在のWebの状況にどのように進化してきたのかを、19世紀以降のアメリカの文化的な背景を振り返ることで確認し、最終的に今後のWebがどのように進化していくと考えられるかを予想する。現代のWebを主要なプレイヤーをAppleとGoogleとして、スティーブ・ジョブスとエリック・シュミットの思想の原点をWhole Earth Catalogのスチュアート・ブラントを中心としたカウンターカルチャーに求め、さらにカウンターカルチャーが生まれた源流を19世紀のアメリカンルネッサンスまで遡る。

著者の博識ぶりには驚かされるのだけれど、頭が良過ぎるのか紙幅の関係か、基礎的な事項に対する説明がだいぶ薄くて読むのに若干苦労する面は否めない。読んでる途中でひょっこり出てくる人の名前に、「あれ、この人誰だっけ」とページを遡ることが何度かあった。ある程度アメリカの近現代史について教養がある人であればそこまでの苦労なく読めるのかもしれないし、もっと面白く読めたのかもしれない。それでもアメリカの建国以来の彼ら独自の思想信条を根本として、インターネットの発祥から現在のWebの姿までの進化を読み解く流れはとても興味深く、十分面白く読み進めることができた。

一番心に残ったのは、ここで取り上げられた企業の創業者たちが長いスパンでのビジョンを皆持っていたということ。そして、アメリカのエリート層はほとんどが社会をより良くするために仕事をしているという指摘である。今の日本企業(特に経団連を構成するような大企業)のトップ層に30年先に社会が良くなっていることを目標として日々の決断をしている人がどれだけいるのだろうか?
例えば、ソニーの新CEOは就任に際して日経のインタビューで「テレビ事業を再建する」と語ったと伝えられている。言いたいことは、テレビを売れるようにする、売った分だけの利益が出るようにする、ということなのだろう。しかし、日本ではすでにテレビ普及率は99.5%、他の先進国でも同じくらいの状況だろう。以前は1インチ1万円だった液晶テレビは今1インチ1000円を切っている。この状況で、さらにテレビを売るなり、買い換えさせるなりして、どんな将来像を描いて語っているのだろうか。4半期ごとの決算にしか興味がないのは見え見えだ。
※追記
なんてことを書いていたら、エイプリルフールねたにされていた。残念な会社になっちゃったなぁ。
ソニー、家電事業からの完全撤退を表明

で、思い出したのがこの記事。
なぜ、夢を語れない企業は成長しないのか。 日本とアメリカの大企業の決定的な違いとは?|これからの日本について、自分のアタマで考えよう!|ダイヤモンド・オンライン
結局、日本の大企業がパッとしないのは社長を含めて経営層がみんなサラリーマンだからなんだろうな、と思う。その点で、青臭いように見える理想に対して先に成功した人たちが金を出してくれて起業の連鎖が続いていくアメリカのビジネス界が、特にITのように成長途上の業界をリードしていけるのは必然なんだろう。

話がだいぶ蛇行したけれど、本書は多くの示唆に富んだ良書だと思った。2011年3月、東日本大震災やスティーブジョブスの死去、エリック・シュミットの退任よりも前に書かれていて、若干違和感を感じる点があるのも確かだし、高度な基礎知識が要求されて最後まで読み進めるのは骨だけれど、一読しておいて損はない一冊だと思った。

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