スポンサードリンク

これはすごい。絶対に読んでおくべき一冊。

本書はいわゆる桶川ストーカー殺人事件の事件発生からその後の顛末までを描いたノンフィクションです。

桶川ストーカー殺人事件(おけがわストーカーさつじんじけん)とは、1999年(平成10年)10月26日に埼玉県桶川市の東日本旅客鉄道(JR東日本)高崎線桶川駅前で、女子大生(当時21歳)が元交際相手(当時27歳)とその兄が雇った男によって殺害された事件である。

被害者がこれらのグループから監視・中傷・脅迫・プライバシーの侵害等のストーカー行為を受けていたために、「ストーカー殺人事件」と呼ばれることが多い。またこの事件がきっかけとなって、「ストーカー規制法」が制定された。
この事件は警察の怠慢な捜査も発覚した事件でもある。被害者とその家族は、幾度となく、管轄の埼玉県警上尾警察署(以下上尾署)に相談し告訴状を提出していた。しかし上尾署側は捜査をせずにこれを放置し、被害者の家族に告訴の取り下げを要求した。上尾署の不正は写真週刊誌・フォーカスが明らかにした。また、告訴状を改竄していたことは内部調査で明らかになった。最後に埼玉県警が不正捜査を認めて謝罪することとなったが、遺族が埼玉県警を相手に国家賠償請求訴訟を起こすことになった。

(桶川ストーカー殺人事件 – Wikipediaより引用)

埼玉県桶川市は埼玉県北部に位置しています。埼玉県は大きく、大宮や浦和を中心とする埼京線や京浜東北線などJR近距離路線の沿線からなる東部地区と、熊谷や上尾を中心とする東北線や高崎線などJR長距離路線の沿線からなる北部地区と、川越や所沢を中心として東武東上線や西武線など私鉄沿線からなる西部地区とに分かれます。多くの地域は東京のベッドタウンとして発展してきたため、これらの地区間では交通も不便であり交流がほとんどありません。私も埼玉県出身ですが西部地区で生まれ育ったので桶川市周辺には成人するまで足を踏み入れた記憶がありません。唯一記憶にあるのは運転免許を取得するために鴻巣の免許センターへ行ったことくらいです。あれだけ交通が不便なのにあんな不便な場所にしかないとか頭悪いとしか思えません。

そんな経緯で事件発生当初は同じ埼玉県とは言えあまり身近には感じませんでした。それでもマスコミの報道は激しくて、当時大学生でワイドショーとか見放題だった自分は結構鮮明に事件のことを記憶しています。

その後、仕事の関係で短期間ですが桶川に頻繁に通っていた時期があります。たぶん2002年か2003年頃。桶川あたりはもう車文化で駅周辺は食事する場所も少ないので、いつも駅前のショッピングセンターに入っている中華料理屋で昼食を取っていました。まさにそのショッピングセンターの駐輪場で事件は発生したのでした。

私が本書を読む前にこの事件に対して持っていたイメージはこんな感じでした。被害者は美人女子大生。ブランド物好きで派手目な女の子。白昼駅前でナイフで刺殺された。犯人は彼女に付きまとっていたストーカー。彼女はストーカー被害を警察に訴えていたが警察が放置していて殺人事件に発展した。

私が持っていた印象はこういうことです。何があったかはわからないし殺されてしまったのは気の毒ではあるけれど、派手に遊び回ってたみたいだしトラブっても仕方なかったんじゃないの?

本書を読んで今まで自分が持っていたこの事件へのイメージは実は大手マスコミによる印象操作で作り上げられたものであったことを知りました。いや、大手マスコミというより、大手マスコミにより組織された警察記者クラブを通じて、埼玉県警が作り上げたイメージという方が正確です。

埼玉県警はストーカー被害を訴え相談に日参する被害者を門前払いにし、名誉棄損でストーカーを告訴しても告訴状を被害届に改ざんし、いざ事件が発生すると遺族の元へ捜査員を張り付け不祥事の隠蔽工作を図ります。捜査は怠慢を極め実行犯は逮捕しても裏で指示したはずのストーカーへは捜査の手は至りません。ストーカーと被害者の接点を殺人とは切り離したいがためにです。

結局暴力団関係のツテを頼って北海道まで逃亡していたストーカーは謎の死を遂げます。自殺か他殺かはわかりませんが、事件の元凶であるストーカーの責任を追求し真相を解明したいという遺族や友人の願いは届きませんでした。

本書は写真週刊誌FOCUSの事件記者であった著者が事件発生から取材を続ける中で、警察に先んじて実行犯を捉え事件の真相を知り、警察の不祥事まで切り込む経緯を時系列に綴った書です。重大事件のノンフィクションは一つの出版ジャンルとして確立していて多くの著作が出版されています。私の知る限りでは、この分野のほとんどの著作は裁判記録などから明らかとなった事実に対して独自の取材を行い真相に迫る構成になっています。本書のように事件発生から終末までの経過を真っ只中で取材しながらまとめあげた著作は稀です。

写真週刊誌の事件記者による書ですから、文章自体はあまり格調のあるものではありません。悪く言えば品が無い。しかしあれだけ強引な取材手法や過激な見出しなど評判のよくなかった写真週刊誌の記者がこのような信念を持って取材をしていたということは初めて認識しました。少し見直しました。

本書は著者の自分語りも多いし文章もあまり品がありません。それでも初めから一気に読者を引き込む力がありました。ストーカー被害という15年近く経った今も後を絶たない現代社会を象徴する事件であること、警察に先だって犯人を追い詰める超展開にカタルシスを感じること、そして昨今の警察不信がまさにこの時期に続け様に明るみに出た不祥事に端を発していること。現在に至る現代社会の闇を鮮やかに写し取っていることが、その力を生み出しているのだろうと思います。

現代社会では日々重大な事件が発生しています。マスコミは事件発生当時はうんざりするくらいに過熱な報道合戦を繰り広げますが、他のセンセーショナルな事件が発生すれば急に前の事件についての情報が入らなくなります。だから、数年前に話題になった事件が結局どんな経緯をたどって収束したのか、意外と知らない場合が多いです。私も桶川の事件でストーカーが事件後すぐに亡くなっていたことは本書で初めて知りました。もしかしたら知っていたかもしれないけれど少なくとも本書でその記載を見るまでは記憶にありませんでした。

残念ながら私たち市民は発生する事件の大部分はマスコミの報道を通してしか知ることができません。私には埼玉県警の不祥事は、長らく警察発表を垂れ流すだけだった警察記者クラブの存在も原因の一つではないかと感じられます。警察が腐った組織であることは十分に明らかになっていますけれど、これを正すためにはマスコミ各位が正しいジャーナリズムを身につけて、警察組織に切り込むことで浄化を促すしかないような気がします。


警察がいかに腐っているかを知りたければこちらがおススメ

冤罪事件について知るために読んでおきたい5冊と観ておきたい1枚

LINEで送る
Pocket

  • ねい

    いつだったかテレビでやってましたよ。
    女性は知り合いのスナックで働いたから変な風に思われたけどけど短期間で報酬ももらってないとかね。

    テレビ番組で見た感想としては いい歳して男の恋愛不足が原因かと。

    初めての彼女で振られた事ないような感じの。

    女性がダメって言ったら絶対だからさっさと次に行かないとね、

    それにしても警察署はは無茶苦茶でしたが。

    • ねいさん、コメントありがとうございます。
      有名な事件なのでたびたびテレビでも取り上げられているみたいですね。
      去年あった逗子のストーカー事件でも警察の対応は酷かったし、何とかして欲しいものです。

  • Pingback: 『殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―』清水潔(著) | やめたいときは やめるといい。()