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歴史人口学という学問があることを最近知りました。その分野の第一人者である鬼頭宏教授(上智大学経済学部)の著書を読んでみました。

『人口から読む日本の歴史』の方が有名なようだったのですが、Kindle化されていたのでこちらにしました。

本書全体を大雑把に概観すると、2100年には人口が1/3になるこの国でこれから必要な政策はなんであるか、現在の議論と著者の主張を述べるという書物です。すでに2年前の出版ということもあり、また最近特に少子化対策の政策議論が進んでいるため、今となっては見聞きしたことのあるような内容が多いとは思います。

本書の概略

第1章は「100年後、日本人口は4000万人になる」。将来の人口推計と過去の日本の人口増減の歴史について紹介し、現代との違いについて論じます。2055年には日本の人口は8993万人、2105年には4459万人まで減少するそうです。ちなみに8900万人だったのは昭和30年頃、4400万人だったのは明治34年頃とのこと。近年の少子高齢化の鍵になるのは1959年の『人口白書』という指摘がされており、個人的には本書の白眉はこの記述です。これについては後述します。

第2章は「人口4000万人の暮らしと経済」。人口が減った将来の日本社会で現在の経済規模を維持するために考えられる施策を挙げています。まず1つは労働生産性の向上です。現在の日本は労働生産性が低く、まだまだ向上の余地があることを指摘しています。また、減少する労働力をどう補うかについて、高齢者、女性、移民外国人の活用を挙げています。現状でも高齢者の労働率はすでに高いし移民については不透明な点が多いので女性労働力の活用が本命と考えられます。

第3章は「人口4000万人の都市と地方」。人口減少社会における国内の人口配置について触れます。平たく言えば都市と地方の関係についてです。このような社会では社会資本の効率化のために人口が徐々に都市に密集する傾向にあるとの指摘をしています。つまり国全体としては人口が減少しながら、都市の人口集中度は高まることが予想されているということです。その結果として2050年までに全国で22%の地域が「無居住化地点」となるという衝撃的な推計が紹介されています。

第4章は「人口4000万人の人間関係」。人口減少社会における家族構成について論じます。人口減少と言うよりは高齢化が主たる原因となって単身世帯がさらに増加することを予想しています。そのような社会で重要になるのは血縁よりは地縁、つまり地域コミュニティになるだろうと主張しています。

第5章は「外国人5000万人の未来」。経済力を維持するために移民による外国人労働力の活用を図った結果として生じる社会とはどのようなものかを予想しています。2050年までに減少する労働力をすべて移民で補うと、人口の1/3が外国人という状況になるようです。当然まんべんなく全国に散らばるわけでもないので、東京の新大久保や群馬の大泉町のように外国人が大半を占める地域も出てくることが予想されています。

第6章は「人口100億人の世界」。日本国内の人口減少とは裏腹に世界の人口は急増していきます。しかしすでに、地球の資源と環境は限界に達しつつあり、生存可能な世界人口の最大値も予想がされています。現在の人口は70億人と言われています。2004年に国連が発表した「超長期推計」では、2050年には89億人、2100年に91億人でピークを迎えるとされています。その後は、2300年まで90億人近辺で推移するとされています。

本書の結論として、世界に先んじて人口減少社会に突入した日本は、世界に対してそのロールモデルを提示する必要があり、そのためにも日本人は積極的に世界に出て新たな文明のあり方を創造していかなければいけないと説いています。

少子化は国策だった

私にとって本書で一番の衝撃は、少子化は国策だったということでした。1959年に発表された『人口白書』に記載された人口推定では1985年の1億486万人をピークとして2015年には8986万人まで減少すると記載されています。そのように人口が減少することが予想されていながら、この『人口白書』では労働力過剰による失業率の上昇を避けるために出生を抑制する必要があると結論付けています。

1974年6月に発表された『人口白書』では「静止人口」を目指して出生抑制をいっそう強化すべきことが提言され、この発表を受けた翌月の「日本人口会議」では「子どもは二人まで」とする大会宣言を採択しています。これ以降、合計特殊出生率は低下を続け、現在の1.2程度という少子化社会に至っているわけです。

本書を手にする前には、少子化は先進国として必然の流れであって、日本の現在の状況は、その対策が後手に回った結果なのだと、私は認識していました。

しかし現在の少子高齢化が先人たちによって作られたものだと考えると話は別です。またお前らの尻拭いか、と。失業者を出さずにみんなが食っていくために子供は最小限にしようぜ、って言っておいて、本当に減り出したら思ったより急激に減りだして、こりゃまずい、と。やっぱりみんなもっと将来のこと考えて子供産もうぜ、と。

バカか。

当時の日本中枢にいたバカタレどもには目先の自分たちの利益だけを追及した結果が現代だということを理解していただきたい。そんなバカタレどものために懲罰的ともいえる厚生年金を毎月天引きされている私たちの状況を理解していただきたい。

単純計算で行くと、2050年に現役で働く人たちは、私たちの倍の年金を納付しないといけない状況になります。具体的には1990年代から2030年頃までに産まれた人たち。その状況はもはや搾取とすら言える金額になるでしょう。すでにその社会を担う半分の人たちは産まれてきてしまいました。

基本的な対策は本書の中で触れられていると思います。私の感覚としてはいささか楽観的に過ぎる感もありましたけれど、本書全体で提示される事実の暗さとバランスを取るためには多少楽観的に論を進めないと救いがありません。

一点だけ、本書で触れられていない論点があるとすれば、尊厳死の是非だろうと思います。無理に生きる必要がない人は安らかに亡くなることができる制度は今後の日本社会にとってなくてはならない制度になると思うんですよね。

この辺は人権問題が絡んでくるので政治家の方から打ち出すのはなかなかセンシティブな状況だろうとは思います。国民の側からそういう世論を醸成していかないと難しいんだろうなと思っています。


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