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吉田純子、堤美由紀、池上和子、石井ヒト美。福岡県に生まれ聖マリア看護専門学校で出会った4人の看護婦たちが、2人を殺害し、生命保険金含めて2億円あまりを詐取した事件を描いたドキュメンタリー作品です。

主犯格の吉田純子は、福岡県柳川市の決して裕福ではない家庭に生まれ育ちます。弟を溺愛する母によりぞんざいに扱われて育った純子は、学生時代から虚言癖のある娘に育ちました。学生時代にはニセ妊娠事件で同級生からカンパを詐取して高校を停学になったりします。

高校は衛生看護科に進み無事に卒業すれば看護婦免許が取れるはずでしたが、事件の影響で卒業間近で転校を余儀なくされ、結果、看護婦免許を取れませんでした。一度は大阪で働き始める純子ですが、再度聖マリア看護学校に入学します。そこで後に共犯関係となる堤美由紀、池上和子、石井ヒト美と出会います。ただし、堤美由紀は吉田純子の小中学校の同級生なので再会というのが正解です。

学生時代は特にトラブルもなく仲良く過ごし、学校卒業後はそれぞれに就職して行きます。美由紀を除き、それぞれ結婚し家庭を築いていきます。しかし、後に4人は純子の魔力によって再び結集することになるのです。

旦那との仲がうまくいかなかった純子は旦那に内緒で借金を重ねていきます。借金もあり旦那にも不満がある純子は小中学校の同級生であった美由紀に近付きます。美由紀の方は男運が悪く不倫と中絶を繰り返し途方に暮れていました。その弱みに付け込んだ純子は、美由紀を自宅に連れ込みます。後に純子と美由紀は同性愛関係になります。

純子は土地と金に異常な執着を持ち、借金を繰り返してはマンションなどの購入を繰り返します。恐ろしいことに住宅ローンは別居中の旦那が払っています。純子は同僚の看護婦などから詐欺を繰り返してその場をしのいでいきますが、最終的に立ち行かなくなり一線を踏み越えるのでした。保険金殺人です。

最初の犠牲者は、和子の旦那、平田栄治でした。一度はカリウム注射による殺害に失敗するも、数日後に空気注射により殺害に成功します。妻である和子の演技により司法解剖を回避し、4人は保険金を手にします。保険金は3450万円。そのほとんどは純子が一人占めします。

次の犠牲者は、ヒト美の旦那、久門剛でした。睡眠薬で昏睡状態にしてアルコール濃度の高いウィスキーを胃中に大量に流し込んで急性アルコール中毒により殺害します。保険金は3300万円。これも純子が一人占めします。

さらに、堤美由紀の母、ミサエの殺害も計画されます。しかしこの殺害計画は、実行犯に選ばれたヒト美のミスにより未遂に終わります。殺害失敗の報告を受けた純子は美由紀を現場に向かわせます(この時点では美由紀は殺害計画を聞いていません)。美由紀は現場の様子から何があったのかをすぐに理解します。母へ応急処置を施し、事件が明るみに出ることを阻止します。

事件は石井ヒト美が親族に奪還されたことで明るみに出ます。ヒト美は伯父に保護されて警察に出頭し、旦那の殺害を自白します。ヒト美が実家に帰ってから、彼女の下には残る三人からの脅迫状が再三にわたって届きます。しかし、洗脳が解けたヒト美は純子との縁を切ることを決意します。

そうして、平成14年4月17日、吉田純子は逮捕されます。

圧巻なのは逮捕後です。純子は配膳係の受刑囚を手なずけて、石井ヒト美の下へ虚偽の証言をするように命令を下す手紙を書きます。純子は美由紀にも手紙を書きますが、美由紀は受領を拒否し、弁護士に相談します。これにより検察は刑務所内を”家宅捜索”し、ヒト美が汚物入れに捨てた手紙を押収します。恐ろしいのは純子の執念です。ぞっとしました。

本書は地裁判決で終わり、文庫版あとがきで控訴棄却されたことが記されていました。その後を調べると以下で刑が確定しているようです。吉田純子は上告棄却により死刑確定、堤美由紀は上告せず無期懲役、石井ヒト美も上告せず懲役17年がそれぞれ確定。池上和子は一審判決前に子宮がんで死亡により公訴棄却されています。吉田純子の死刑はまだ執行されていないようです。

あとがきにもあるのですが、本書は読んでいる間、あまり現実の話という実感が持てませんでした。純子の語ることが虚言に満ちていて数々の実在しない人物が現れるものだから、何が実際の出来事で何が純子の妄言なのか、だんだんとごっちゃになってきます。

著者はもう少しうまく整理して書けなかったのだろうかと、読みながら思わなくもなかったですが、結果的にはそれこそがこの事件の本質だったのだろうと考えるに至りました。つまり、先天的にか後天的にかはわかりませんが息を吐くように嘘をつく女がそこにいて、偶然同級生になってしまったが故に人生を無駄にした3人の女性がいた、そんな悲劇の物語でした。

まさにこう言う人は「サイコパス」と呼ぶんだろうと思うのですが、九州のサイコパスと言えば忘れてはいけないのは松永太、北九州一家監禁殺人事件の主犯です。併せて読むとよいと思います。福岡県には怖くて近寄れません。


書評はこちら→『消された一家―北九州・連続監禁殺人事件』豊田正義(著)

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  • ねい

    ああ、この事件はなんとなく覚えてるなぁ。

    楽しいよ。俺の田舎の北九州市!!

    普通じゃない話がたくさんあるけど黙ってよう。

    • ねいさん、コメントありがとうございます
      北九州出身だったんですね
      私は行ったことないですが個性的な街のようで興味深いです