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フリーライターの大宮冬洋さんが今を時めくユニクロの従業員にインタビューした本を読みました。

著者の大宮冬洋さん自身が新卒でファーストリテイリングに就職し、1年で退職した経験をお持ちだそうで、最初に配属されたユニクロ町田店のかつての同僚たちにインタビューしています。タイトルの「ユニクロ154番店」はユニクロの154番目の店舗だった町田店のことを指しています。

著者の大宮冬洋さんは私と同い年です。私は彼が日経ビジネスオンライン上で連載していた「ロスジェネ世代の叫び(バックナンバー)」をよく読んでいました。同世代のココロを見事に描く書き手だという印象を持っていました。

彼は2000年3月にファーストリテイリングに入社しています。私が社会人になったのは1年前の1999年4月です。フリースブームの前で知名度も低かったとは言え、意識の低い学生だった私はファーストリテイリングを選択肢として意識することはまったくありませんでした。あの時代に野心を持ってファーストリテイリングを就職先として選択した著者は先見の明がある人だなぁと感じます。冗談抜きで。

ちなみに私の実家の近くにも90年代後半にはユニクロがありました。昔の2人の人間がバンザイして手を繋いでいるロゴが付いていました。駅からも遠いし太い通りに面しているわけではなかったですが、圧倒的に安かったので貧乏な私は服が必要になればチャリンコを漕いでユニクロへ向かったのでした。

あの店はどうなったんだろうとGoogleストリートビューで見たら、昔の倉庫型店舗のまま自動車販売チェーンのオニキスになっていました。

uniqlo
▲倉庫型店舗だったユニクロ入間店跡

ユニクロ町田店は1997年から2001年まで存在していたとのことですから、同じような雰囲気だったんじゃないかなぁと想像します。

さて、本書は著者の大宮さんがかつての同僚を訪ね歩き、当時考えていたことや現在抱えている思いなどをインタビューする形式で進行します。根底にあるのはユニクロの過酷な労働環境、特に社長及び本部からの強烈な突き上げへの反感です。しかし、その中にあってユニクロ町田店には居心地の良さを感じていて、それを懐かしむ面もあったりして、著者の複雑な心境が読み取れます。

正社員(特に店長レベル)の労働環境は当時からすでにブラックと呼べるレベルにあったことに驚きます。私は何となくユニクロが今のようにブラック化したのは玉塚社長が更迭されて柳井社長が復帰した頃からかと思っていました。デフレが続く経済環境や短期業績を求める市場環境などの外部環境がユニクロをブラック化したという認識でした。

しかし、90年代後半に関東地方へ進出した時点ですでに上意下達の猛烈な社風があったのであれば、これは認識を改めなければいけないと感じました。つまり、ユニクロは生まれた時からブラックだったのです。

本書の中で現役社員の方の話が出てきます。非常に覇気のあるセリフを吐いていて、こういう人じゃないと持たないんだろうなぁ、と率直に感じました。逆に考えると、ユニクロの労働環境が如何に厳しくとも、そこにマッチできる人材は一定数存在するのだ、ということも言えると思います。猛烈に働いて上からの重圧に応えて見せ、上へ這い上がっていくことで自己の労働意欲を満たしていく、そんな働き方にカタルシスを感じる、常人から見ると鉄人のような存在です。

だから、そういう人材を事前に見極めて過不足なく採用できていれば、こんな社会問題にはならなかったのかも知れません。ユニクロを取り巻く不幸は、あまりにも急激に業態が拡大してしまったことかもしれません。人材を補充するためにはそうしたブラックな素顔を隠して詐欺紛いの求人活動を展開するしかなかったのかも知れません。

ところで、本書を読んでいて気づいたことがもう一つあります。確かに本書を読んでいても社員の労働環境は過酷としか言いようがないのですが、準社員(パート)やアルバイトの労働環境は思ったよりも酷くもないみたいです。

もちろん話の中心は2000年代初頭ですから現在もどうなのかわかりませんし、店舗によっても状況は違うかも知れません。でも、基本的に残業はないみたいだし、給料は低いわけではありません。ユニクロの勤務経験があると他のバイトでも心証がよく職歴としても高く評価されるようです。

期間を限定して仕事を覚えるつもりで働いてみるのは悪くないんじゃないかな、なんて思ったんですが、どうなんでしょうか。甘いでしょうか。


関連書籍

『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』今野晴貴(著)

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