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何かそんなスレタイのまとめが流行ってたな、くらいには覚えていたんですが、実際には読んでいなかったので勢いで購入してしまいました。

2chで話題になったスレッドが書籍化された事例は、単行本から映画化、テレビドラマ化と社会現象にもなった「電車男」が有名です。主人公が女性経験の乏しいオタク男子で、偶然出会った女性と純愛を繰り広げる点ではテイストは似ていますが、逆に共通点はそうした雰囲気だけとも言えます。

「電車男」では主人公の電車男が偶然出会った女性との関係をスレッド上の住民に相談し、アドバイスを受けながらその女性をモノにするというリアルタイムに話が進行する形式であったのに対して、「風俗行ったら(略)」ではすでに主人公の身に起きたことを後からまとめて少しづつスレッドに投下していく形式になります。なので、本作の主人公もいろいろなアドバイスを受けつつ話が進行するのですが、アドバイスをする側の人(本作では、晋作とあおい)もまた本作の登場人物の一人という形になっています。

「電車男」のヒロイン・エルメスは、映画やドラマでかなり脚色されていましたが、単行本の段階ではかなり「謎の女性」として描かれていました。あまり多くを語らず、それがゆえに電車男は彼女の言葉をどう解釈してどう動くべきか葛藤する様が描かれました。本作のヒロイン・かよさんは一人の女性としてキャラが確立しています。

この違いは両者の構成上の違いにあるのでしょう。「電車男」は一人の男性が一人の女性を落とすためにネット上の匿名のアドバイスを求めるだけの単純な構成です。基本的に2人の間には通常の男女が出会ってくっつくまでの恋愛にまつわる問題しか存在しません。一方本作は一人の女性が抱える多くのトラブルを一人の男性が解決していく過程で心が通じていく構成になります。いずれも事実をベースとした物語と捉えると、本作「風俗行ったら(略)」の方が起伏があってストーリーとしては面白いですが、2chという媒体である意味合いはかなり薄いと感じました。

実際に「電車男」では主人公以外の書き込みが半分以上を占めていたように記憶していますが、本作では分量としてはおそらく10分の1程度、せいぜいひな壇のガヤ芸人程度の役割しか担っていません。

「電車男」の世界はそれまでアングラな存在だった2chという匿名掲示板の世界を一気にメジャーにしたし、そのための仕掛けに満ちていたように思えます。本作「風俗行ったら(略)」は確かに話として多くの示唆に富んでいて面白いとは思うのですが、それ以上の意味はあまり感じられませんでした。現時点でもネット上に多くのまとめが残っていますから、わざわざ書籍を購入して読むまでのことはないように思えます。

あとがきに著者が当時の心境を語っているのだけはとても興味深い内容でした。ブログなどで記事が注目を浴びたとしても、(炎上したのでない限り)書いた人にできることは評価を甘んじて受けることだけです。評価がダイレクトに表れる掲示板の中で続きを一つ一つ投下していく作業はやはり相当なストレスなのだろうことに気付かされました。最初のうちは結構面白いスレッドだったのに尻切れとんぼになって消滅していく事例が多いのはこういうことなのかもしれません。

自分の感覚では「電車男」の再来ということにはなり得ないと思います。これを大手出版社がし掛けていることに昨今の出版不況が垣間見える気がします。

実は一番重要なのは、このタイトルでこの内容の書籍を小学館が出版したことなのかもしれません。

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