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はじめに

元モーニング娘で元ミニモニの加護亜依さんが芸能活動の再開を発表したものの、以前に所属していた事務所が「加護亜依」を商標登録しているため困難に直面しているという報道がありました。

 元モーニング娘。の加護亜依(25)の活動再開について、前所属事務所側が20日、「加護亜依」の名前を既に商標登録しており、その名前で活動した場合、道義的責任を追及する考えがあることを明らかにした。
〈速報〉「加護亜依」商標登録済みで本名使えず!? – 日刊スポーツ芸能速報 – 朝日新聞デジタル&M

ピークを過ぎたとは言え、さすがは国民的アイドルグループの黄金期を支えたメンバーです。日本の誇る大新聞が速報するくらいに現在も注目されているようです。私はテレビなどあまりを観ないので知りませんでした。

完全に話題に乗り遅れまして、多くの人が既に論評しているのを拝見しましたが、見なかったことにしてめげずに何か書いてみようと思います。

氏名と商標の関係

まずは、簡単に人の氏名と商標の関係についておさらいしてみます。

現在の商標法では、基本的に他人の氏名は商標登録できません(4条1項8号)。ただし、本人の承諾を得た場合にはその限りではありません(かっこ書き)。

(商標登録を受けることができない商標)
第四条  次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
八  他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。

ちなみに、商標の登録要件は、通常は査定・審決時を基準に判断されます。しかし、この他人の承諾については査定・審決時までに得ていればよいという有名な判例があります(カムホート事件(最判平16.6.8))。

仮に、自分の氏名が商標登録されていても、通常の使用であれば商標権の効力は及びません。つまり、自由に使っても構いません(26条1項)。

(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条  商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一  自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

ただし、その使用が不正競争の目的で行われたのであれば、原則通り商標権の効力が及びます(26条2項)。

2  前項第一号の規定は、商標権の設定の登録があつた後、不正競争の目的で、自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を用いた場合は、適用しない

最後のところはちょっとわかり難いかもしれません。例えば、「マツモトキヨシ」という商標があるとします(実際にありますが)。ここに創業者と同姓同名の松本清(マツモトキヨシ)さんがいたとします。この松本清さんが「マツモトキヨシ」の存在を知らずに自分の名前を店名にして商売を始めた場合、26条1項により「マツモトキヨシ」の商標権の効力は及びません。

一方、「マツモトキヨシ」が人気のドラッグストアであることを知って、誰か間違って入ってくれるかもしれないなーなんて期待して、紛らわしい業態(コンビニとか?)を自分の名前を店名にして商売を始めた場合、26条2項により「マツモトキヨシ」の商標権を侵害することになります。

実際の登録状況

調べてみると、「加護亜依」の商標は前の所属事務所メインストリームが商標権者で2009年2月17日に出願、2009年12月11日に登録、存続期間は10年間で2019年12月11日までとなっています。

(111) 【登録番号】 第5287159号
(151) 【登録日】 平成21年(2009)12月11日
(210) 【出願番号】 商願2009-10775
(220) 【出願日】 平成21年(2009)2月17日
(180) 【存続期間満了日】 平成31年(2019)12月11日
    【商標(検索用)】 加護亜依
(541) 【標準文字商標】 加護亜依
(561) 【称呼(参考情報)】 カゴアイ
(732) 【権利者】
    【氏名又は名称】 株式会社メインストリーム

Wikipediaによれば加護亜依さんがメインストリームに所属したのは2008年4月以降であり、復帰後の初シングル発売が2009年6月ですから、時期的にも妥当な感じがします。これから本格的に芸能界へ復帰するために知的財産権を押さえておこうというのは真っ当な考え方だと思います。

特許電子図書館の情報では細かい事情がわかりませんが、経過情報を見ると審査の中で拒絶理由が通知され手続補足書の提出を行っています。

拒絶理由通知書 : 起案日(平21.7.27) 発送日(平21.8.4) 拒絶理由条文コード(40 第4条1項各号(第4条1項11号~13号除く)) 作成日(平21.7.30)
意見書 : 差出日(平21.9.14) 受付日(平21.9.14) 作成日(平21.9.15)
手続補足書 : 差出日(平21.9.16) 受付日(平21.9.17) 作成日(平21.10.8)

いい加減なことは書けないのですが、4条1項8号の拒絶理由が出た上で承諾書を提出している可能性がないわけではないと思います。特許庁で審査書類を閲覧すればわかるんですが、有料だし平日に特許庁へ行く用事もありません。誰か暇な人いたら調べて来てください。

どういうことかと言うと、加護亜依さんに無断で事務所が商標を取っていたのであれば、この商標登録は無効にすることができるかもしれないのですが、加護亜依さんが承諾書を出していたらそれも難しいね、ということです。

やはり加護亜依名義での芸能活動は難しそう

さて、商標だけに関して言うと、加護亜依さんが現状のまま芸能界復帰して通常の芸能活動をするのは極めて困難なように思えます。

自分の名前が前の事務所で商標登録をされていることを知っているのは明らかですから、その上で自分の名前で芸能活動をすれば不正競争の目的が認定される可能性は極めて高いと思います。

もちろん芸能活動にもいろいろありますからタレントとしてテレビに出てテロップに名前が出る程度であれば商標としての使用ではないという言い分もありかと思います。しかし、彼女は堕ちたとは言えオリコンで何度もトップを取り紅白にも出た歌手です。当然歌手活動は外せないでしょう。CDを発売したり、コンサート開いたり、グッズ販売したり、そこに「加護亜依」と表示されていればもはや商標的使用であると判断せざるを得ないでしょう。

通常の感覚で言えば、他人に本名で商標を握られている状況で、本名で芸能活動することは商標法的にアウトであると言わざるを得ないと思います。事ここに至っては加護亜依さんの側としてはメインストリームの登録商標を無効にするか、商標権の譲渡を受けるかしないと思う存分芸能活動を行うことは困難だろうと、私は思います。

もし自ら承諾書を出しているのであればその他の無効理由はあまり思い浮かばないし、長く芸能活動をお休みしていた彼女に、強硬な姿勢に出ている事務所から商標権を買い取る資力があるとも思えません。はっきり言って手詰まりだと思います。

加護亜依さんはどうしたらよかったんだろう

さて、こうなる前に加護亜依さんはどうすればよかったんでしょうか。芸能界のしきたりなどはさっぱりわからないので、とりあえず商標的な問題だけ考えてみたいと思います。

今回の件を見れば明らかなように、とにかく自分の名前を他人に商標登録させるというのは非常に危険です。もちろん両者の関係が良好であれば問題ありませんが、一旦こじれると自分の活動がすべて相手に握られてしまいます。本当なら話はこれでおしまいで、商標登録しなければよかった、という結論になります。

一方で2009年当時の彼女の状況を考えると、喫煙と不倫で前の事務所を解雇された状況から拾ってくれた事務所に対してなかなか自分の権利を主張するのは難しいところでしょう。事務所が「加護亜依」の商標を取るという方針を決めたら従わざるを得ないと思います。

先に示した通り、他人の氏名について商標を登録するにはその他人の承諾が必要になります。つまり加護亜依さんが承諾をしなければメインストリームは商標登録ができませんでした。でも、彼女にとって承諾しないという選択肢はなかったのだろうと思います。芸能界へ復帰できる瀬戸際ですから。

私が当時の彼女にアドバイスできるとしたら、そこで自分が商標権者になって事務所に対して無償の使用権を設定することを勧めたいです。何なら専用使用権を設定してもよいでしょう。ただしその場合は1年更新くらいの有期の契約にします。

こうしておけば事務所を離れて独立しようと思ったときには、ライセンス契約を打ち切るだけで事務所とは縁を切ることができます。話がこじれても契約期間が満了すればもはや自由です。

そんな交渉すらできないような関係であったなら、もうしょうがないですね。奴隷として骨までしゃぶられるしかないんじゃないでしょうか。残念なことですが。

おわりに

なんてことを考えながらミニモニの動画をYouTubeで観てたんですが、改めて考えると2人は不倫で芸能界から脱落し、1人はママタレになってました。自分も年取るわけだなぁと死にたくなりました。

この頃は超絶可愛かったのになぁ、加護ちゃん。

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