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橋下徹大阪市長が自身の主催する政治パーティーを非公開とすることを決めたそうです。当分選挙もないしあまり彼に注目しても詮無いことだと思っているのですが、その理由がちょっとおかしなロジックだったので注目を浴びていたようです。

 橋下氏は平成20年2月の大阪府知事就任後、毎年パーティーを開催しているが、非公開とするのは初めて。理由について「(報道の)カメラがない方が、もっと大胆に自分の思いを率直に伝えられる」と強調。「公開にしていた方が、ある意味例外ではないか。僕がしゃべる内容の著作権は僕にある」とも語った。
(「喋る内容は僕に著作権」橋下氏、パーティー非公開 「券購入なら取材可」 – MSN産経ニュースより)

ここでの論点は2つです。
・橋下徹大阪市長が自身の主催するパーティーで話す内容には著作権があるのか。
・著作権があることを根拠に報道陣を締め出すことは可能なのか。

喋る内容には著作権は発生しません

結論から言うと、橋下徹さんがパーティーの中で行うスピーチ(講演)には著作権が発生します。ただし、「スピーチの内容」には著作権は発生しません。より正確に言えば、著作権は「スピーチの中で用いた表現」を対象に発生します。

まず、著作権法で保護される著作物とは何か、見てみます。著作権法10条に法上の著作物が例示されています。その一号に言語の著作物の一つとして「講演」が例示されています。つまり、講演自体は著作物に該当します。

(著作物の例示)
第十条  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

それ以前に、著作権法では思想または感情の「表現」のみが保護の対象となります。表現された内容(思想や表現、事実など)自体は保護の対象とはなりません。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

「富士には月見草がよく似合う」と太宰治は『富嶽百景』に記しましたが、富士山を背景にした月見草の構図に著作権は発生しません。「富士には月見草がよく似合う」という文言のみを対象に太宰治へ著作権が発生するわけです。

したがって、橋下徹大阪市長がパーティーで講演した文言や語り口(表現)には著作権が発生しますが、「話した内容に著作権が発生する」ということはありません。

報道のための引用には著作権は及びません

講演自体には著作権が発生するので、著作権者の許諾なく、講演を録画してDVDに焼いて販売したり、YouTubeにアップしたり、Ustreamで生中継したりすれば形式的には著作権を侵害することになります。

しかし、一定の要件を満たせば報道目的で引用する利用行為には著作権が及ばなくなります。

(引用)
第三十二条  公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

ここで問題は「公表された著作物」である必要があることです。非公開のパーティーで行われた講演は「公表された」と言えるのか、ということです。

著作権法では「特定かつ少数」の人しかアクセスできなければ秘密の状態が維持されているとされます。つまり、特定の人のみがアクセス可能であっても多数の人がアクセスできれば公表されたことになります。一般に「多数」とは「50人以上」とされているようです(参考)。

具体的に橋下徹さんのパーティーに何人くらいが参加するのかはわかりませんが、日本維新の会の結成パーティーには4000人が集まったという話が公になっていますから(参考)、さすがに参加者が50人未満ということはないでしょう。

また、お金を払ってパーティー券を購入すれば誰でも参加できるようですから、そもそも「特定」ではなく「不特定」の人がアクセス可能と考えることもできます。

ということで橋下徹さんが自身のパーティーの中で行った講演を報道することは著作権的には問題ありません。著作権を理由に報道陣を締め出すのは論理的には正しくありません。

政治上の演説には該当しないか

ちなみに、著作権法には、政治上の演説は自由に理由できる旨の規定があります。

(政治上の演説等の利用)
第四十条  公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

政治資金パーティーが「政治上の演説」に該当するかは議論のあるところだと思います。教科書的には国会での答弁や選挙運動での演説が例示されます。

確かに政治活動上での講演ではあるのですが、この規定は権利制限規定であり、例外規定ですから、あまり規範的に拡張するのは妥当とは思えません。厳密に捉えるならば、「政治上の演説」には該当しないと考えた方が無難じゃないかと私は思います。

まとめ

橋下徹大阪市長が政治資金パーティーで行う講演には著作権が発生しますが、話した「内容」に著作権が発生するわけではありません。

大規模な政治資金パーティーで行う講演は公表された著作物ですからメディアが報道することを制限することはできません。

結論としては著作権を理由に報道陣に対して非公開とすることは妥当ではありません。もちろん異なる論拠で非公開とすることは何ら問題ないとは思います。それが妥当な内容であれば、ですが。

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