スポンサードリンク

特に話題にもなっていませんでしたが、書店で見掛けた拍子に購入しました。一応、発明推進協会が発行元なのでそんなに酷いことはなかろうという思惑でした。

本書を全体的に貫いているのは「日本の特許明細書はわかり難い!」ということです。その一点について、著者が今まで特許業界で仕事をしてきた経験を交えながら問題を提起し、歴史的経緯や言語的もしくは国民性的な観点などから、なぜこのような現状に至ったのかを述べ、米国や中国の現状を紹介しながら、これがどのような不利益を日本企業に与えるのかを訴えています。

とにかくこの方は「ものづくりニッポン」にこだわっていて、日本経済の復活は製造業の復活と同義と考えているようです。金融業は虚業と言い放っていて、今どきこんな言説が恥ずかしげもなく流通していることに少なからずショックを受けました。金融の発達が20世紀以降の世界的な高度成長を支えたことくらい、現代社会の常識だと思ってたんですけれど、そうでもないんでしょうか。ちょっと可哀そうな人だなと思いました。

このようにところどころ、編著者の教養不足と捉えざるを得ない残念な言説はありますが、本筋の主張は若干くどいとは言え、個人的には的を射ていると思いました。とても歯切れのいい論調で面白く読めました。

この種の本にありがちなハッタリは見当たらず、本当に現場を生き抜いてきたオヤジの知恵みたいな雰囲気で、非常に好感度は高かったです。この人は文章を読むよりも講演などで話を聞く方がずっと面白い人なんじゃないかと感じました。私はそういうおっさんの話を聞くのがすごく好きなのです。

本書では、残念な日本の特許明細書にまつわる問題に対して、その解決策として「文明日本語」なるものを構築すべきだと主張しています。英語のように論理的に明確な文法を持つ日本語を構築し、技術文書は「文明日本語」で記すべきだということのようです。「文明日本語」は解釈の余地がなく一意に内容を記載できるものであるから、英語や中国などの論理的な構造を持つ外国語への翻訳も容易になり、自らの権利を主張する技術内容が正確に伝えることができるはずだと、こういうわけです。

しかしながら、この「文明日本語」とやらがいかなるものであるかがわかりません。どうも本書の主張はコンセプトに留まるようです。このような考え方の下、日夜取り組んでいるというご報告のようにも見えました。

発想としては私も同意なのですが、客観的に見てまったく説得力がないのが残念です。うまいことでき上がったら教えていただけますと幸いです。

全体的な雰囲気は、現場で生きて来たオヤジの愚痴、といったところです。あまりスマートな解決策も提示されてはいません。それでも日本が先進国へ発展する一端を担ってきたオヤジたちの、心からわが国の行く末を憂う気持ちは傾聴に値するものです。

本書から知識的に得るものはほとんどありませんでしたが、明日からがんばろう、という気持ちにはさせてくれる一冊でした。

LINEで送る
Pocket