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知的所有権(著作権)登録商法というものを偶然目の当たりにしてしまいました。

その手の詐欺紛いの商法があるとは風の噂に聞いてはいましたが、本当に引っ掛かる人がいることに衝撃を受けました。被害自体は大きくなさそうですが、れっきとした違法行為です。

被害拡大を少しでも抑えられたらと思い、ここに記しておきます。

ことの発端

昨年の夏に奥日光へ遊びに行ったときのことです。

貧乏な私は日光湯元キャンプ場でテント泊していました。この街は古い温泉街ということもあって多くのホテルや旅館が日帰り湯を提供しています。せっかくなので、宿泊地に近い某高級ホテルの露天風呂をいただきました。

日光湯元はその名のとおり、日光界隈の源泉です。そのホテルも源泉掛け流しの露天風呂で、最高に気持ちのよい温泉でした。

いい気分で風呂を上がってホテルを後にしようと鼻歌交じりに廊下を歩いていますと、廊下の脇に水飲み場が設置してあることに気付きました。ちょっとこじゃれた感じの水飲み場でパネルなんかも貼ってあります。

「由緒正しい名水なんで、ぜひご賞味ください」というわけです。

風呂上がりに冷たい天然水をいただけるとは至れり尽くせりだなぁ、歴史のある温泉街はやはりスペックが高いなぁ、などと感心しながら、脇に貼ってあるパネルを眺めながら冷水を味わいながらいただきました。

?「知的財産権登録されています」

ところが、このパネルに不可解なことが書いてあることに気づきました。正確な文言は失念したのですが、だいたい以下のような内容でした。

「この『日光白根湧水』は、知的財産権(著作権)登録されています」

……。

著作権で保護されるには、著作物でなければいけません。著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの(著作権法2条1項1号)」と定義されています。

湧水自体は創作物のわけがないので、登録の対象は『日光白根湧水』という文言だと思われます。しかし、『日光白根湧水』という文言が「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当するとは到底思えません。

また、著作権登録制度はそれほど活発に利用されている制度ではありません。著作権は無登録主義なので、創作した時点から発生し、必ずしも登録しなければいけないものではないからです。

なので、『日光白根湧水』という名称が著作権登録されているというのは、あり得ないとは言い過ぎとしても、大変に違和感のある話でした。

知的財産権として登録されているなら商標権の間違いじゃないかしら、などとモヤモヤしながら帰ってきたのでした。

知的財産権(著作権)登録商法だった

それで改めてちゃんと調べてみたのですが、大変な事実が判明しました。

まず、『日光白根湧水』という言葉は、著作権も商標権も登録されていませんでした。ちなみに著作権登録は著作権登録状況検索システムで、商標権登録は特許電子図書館の商標検索で確認できます。

何か情報がないかと、そのホテルのWebサイトを眺めていたところ、お知らせ欄に以下の投稿が掲載されていました(出典)。

『著作権登録・安心・安全で美味しい水』は無料です!お好きなだけどうぞ!
●当ホテルでは長い年月を経て、今もこんこんと湧き出る本物の清水を地下60Mから汲み上げ、皆様にこの美味しい水『著作権登録の日光白根湧水・水汲み場』を提供しております。
どなた様も自由にご利用下さい。又、ポリタンクやペットボトルなどに入れてお好きなだけごお持ち帰り下さい。
(中略)
※著作権登録には元・JR日光駅長、現・日光地区観光協会事務局長の増淵正男氏と著作権協会・日光支部長の星野米子氏に多大のご協力をいただきました。

著作権関連の団体は著作物の対象によって設立されていることがほとんどです。「日本音楽著作権協会」とか、「コンピュータソフトウェア著作権協会」とか。「著作権協会」という名の団体は寡聞にして聞きません。

詳細は割愛しますが、いろいろと調べてみた結果、このホテルは、「知的所有権協会」なる団体が行っていた「知的所有権(著作権)登録制度」というサービスに『日光白根湧水』を登録したものと考えられます。ちなみに現在の名称は「日米コピーライト申請」です。

※当申請は特許庁への出願(特許・実用新案・意匠・商標)、また、文化庁への著作権登録申請ではございません。
※「日米コピーライト申請書」(旧称:知的所有権(著作権)登録制度)
       ~当会が実施する創作事実の立証業務の通称。以下「申請」と称す。

出典:日米コピーライト申請

知的所有権協会は発明学会の会長として名高い豊澤豊雄氏が設立した株式会社です。発明学会及び知的所有権協会は、日本弁理士会にたびたび刑事告発を受け、ことごとく敗訴しています。

知的所有権(著作権)登録制度についても、日本弁理士会から注意喚起のお知らせが出されています。

 最近、「知的所有権」という言葉を新聞やテレビ等でよく耳にします。また、テレビ等で、面白い発明品を紹介する番組が評判になったり、特許などの知的所有権に対する一般の方々の関心が高まっています。このような状況に乗じて、いくつかの悪質な民間業者が有料で「知的所有権(著作権)登録」を勧誘している状況が見受けられます。

(中略)

 仮に「知的所有権(著作権)登録」をしても、この「登録」を楯に企業への売り込みや製造販売の中止を請求する法的根拠にはなり得ません。

出典:民間業者の「知的所有権(著作権)登録」の勧誘にご注意! | 知的財産のご相談 | 日本弁理士会

日米コピーライト申請は1件あたり3,000円らしく、金銭的な被害は大きいものではありません。

逆に、知的所有権協会がどんなメリットを見出して、こんな詐欺紛いの商法を繰り返すのか、その動機がわかりません。金銭が目的であればこんな安価で裁判で負け続けてまでも事業を継続する理由がないはずなのです。

新興宗教に近い香りがして空恐ろしいものすら感じます。

ご注意くださいませ。


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