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戦隊ものドラマの衣装を無許諾で販売した業者が逮捕された記事を見ました。

cosplay
違法コスプレ販売容疑で社長逮捕 ネット販売3億円か – 47NEWS(よんななニュース)

3億円の売り上げって、戦隊ものってずいぶん人気なんだなぁと思ったんですが、逮捕容疑は3万2000円で、それとは別に4千種類のコスプレ衣装を販売した総額という話の模様です。すべてが違法かどうかはわからないけど、まぁ普通に考えたら怪しいでしょうね。

逮捕容疑は著作権法違反だそうです。ドラマで使用された衣装の著作権ってどうなんだろうなぁと思って考えてみました。

著作物性

著作権法上の著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの(2条1項1号)」と定義されています。該当するとしたら「美術の著作物」でしょうけれど、著作物を例示する10条を見ても、「四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」としか書いてありません。つまり、服飾が著作物に該当することは著作権法には明示されていません。

美術の著作物は、実用性がなくそれ自体を鑑賞を目的とする純粋美術と、実用品であっても美的鑑賞の対象となり得る応用美術とにわかれると言われています。純粋美術とは絵画とか彫刻とか、著作権法の例示する美術の著作物そのものです。応用美術は美術工芸品など。壺とか茶碗とか日本刀とかです。

服は当然実用品ですから著作物であるならば応用美術に該当するものです。そうすると、その服が美的鑑賞の対象となり得るかどうかが論点になります。つまり、服であっても著作権の保護対象になるけれど、優れたデザインなど芸術的なものでなければ保護されない、ということです。

今回の「ゴーカイジャー」の衣装が芸術的なものかどうかは最終的には裁判所が判断することですから、何とも言えません。

個人的には、そもそも市販するためにデザインされた服ではないので、意匠法等の産業財産権法に委ねるのは適切でないし、ドラマの人気にフリーライドしているのも間違いないわけだから、やはり著作権法で保護すべき案件なのだろうなぁと、思います。

複製権の侵害か、翻案権の侵害か

本題とは逸れますが、コスプレ衣装というカテゴリで考えると、著作権のうちどの権利を侵害しているのか、若干の論点があるように思います。

と言うのは、コスプレって元ネタがアニメやコミックなど二次元の場合と、実写ドラマや映画などの三次元の場合があると思うのです。

二次元の場合、絵に書かれた服を基にして三次元の服を作るのは複製には該当しません。複製とは有形的に再製することなので同じ物でなければいけないからです。
※建築の著作物だけは例外的に設計図に従って建築物を完成すると複製に該当します。(2条1項15号)

一方、三次元の場合、実際の服が存在しているので、これを基にして三次元の服を作れば複製に該当するでしょう。ただし、これはまったく同じものが作成された場合のお話であって、一部にアレンジを加えるなど、まったく同じではないものが作成された場合には、翻案とされる場合もあると思います。

意匠権は?

服のような実用品は意匠権じゃないのか、という意見もあろうかと思います。確かに、応用美術に該当しないような場合には工業製品は意匠権で保護することが基本ではあります。気持ちはわかるのですが、今回のケースではちょっと難しいと思います。

そもそもの問題として、意匠権は特許庁に出願して審査を経て原簿に登録されないと権利が発生しません(20条)。現在の実務では審査に1年くらいかかります。テレビドラマだと期間を限定して放送されるものだし、衣装のデザインとかそんなに前から決定しているとは思えないし、撮影の流れでデザイン変更とかも頻繁にありそうです。

それに、意匠法は登録要件として工業上利用性を求めますから、一品製作であるドラマの衣装について登録する動機がありません。キャラクターグッズとして販売する計画があれば別でしょうけれど、どれだけヒットするかわからない状況だとそれなりの費用がかかる意匠権の取得は考え難いでしょう。

もちろんちゃんと意匠権を取得していたら問題なく権利行使できるだろうとは思います。結局は費用対効果の問題で、この事案だと意匠権を取っていることを期待するのは難しいだろう、という話です。

一般人が趣味で作ったら

著作権法には私的使用のための複製は権利制限されていますから、一般人のファンが自分でコスプレするために作って着て楽しむ分には合法です。

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

しかし、例えば、コスプレ衣装を着て、何かを歌ってみて、それを録画して動画配信して、人気になってアフィリエイト収入なんかが発生した場合には、「私的使用」に該当するかは微妙な線だと思います。厳密に考えるならクロでしょう。

通常はアフィリエイトなんて大した金額にならないし、ファンが趣味でやっていることなので、わざわざファンが離れるようなことを著作権者がするとは思えませんが、看過できない売り上げになってきて権利行使されたらなかなか厳しいことになるんじゃないでしょうか。わからないけど。

まとめ

改めて考えてみましたが、無許諾のコスプレ衣装を製造販売した業者に対して著作権法違反で逮捕することについては、取り立てて違和感はありません。こういう不届きな輩はじゃんじゃん取り締まっていただきたい。

ただし、考えたいのは、本件が刑事事件になっていることです。著作権者はこの衣装を製造販売しているわけではありませんから、損害賠償請求しても権利者の損害が認められない可能性が高いです。その辺を考慮して刑事告訴に踏み切ったのではないでしょうか。

例えば、何か人気のキャラがあって、公式グッズが出ていないから自分で作ってみたりして、周りの評判がよかったんで一般に売り出してみたらものすごいヒットになって、最終的にかなりの売り上げが立ってしまった、なんてケースは可能性としてはあり得なくないと思います。

こういう場合、仮に本人はみんなで楽しく盛り上がりたかっただけだとしても、逮捕されて前科が付く可能性がある、ということになります。

基本的に同人業界と言うのは、ファンと権利者の信頼関係でグレーな状態が継続している面がありますから、白黒つけようという機運になると、現行の著作権法の規定ではファンの方が分が悪い状況だと思っています。

お金払って済むくらいならいいですけど、前科が付くとなると話が別です。そういう意味では意外とインパクトのある事件なのかもしれないな、と思わなくもありません。

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  • eharan

    私は実写戦隊モノのコスプレ販売行為を著作権法違反で逮捕すること自体に違和感を感じます。
    フリーライドに悪感情を持たれているようですが、そもそも著作権法で保護された著作物の範疇に入っていないように思えます。もちろんそれは本文で書かれている通りに、裁判所の裁定に委ねられるわけですが。
    本来、こういった案件は民事でやるべきものだと思います。

    • コメントありがとうございます。
      本文にも書きましたが、損害額の認定が難しいしライセンス相当料では裁判費用をペイしないので民事でやることは現実的には困難だと思います。
      と言って放っておいても粗悪品が流通したらTV局の信用にも関わるので看過するのもよろしくないでしょう。
      トラブらなければ他人のアイデアをパクッても問題ないというお考えですか?