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税理士と公認会計士の職域争いに関する記事を読みました。

参考:税理士会と公認会計士協会が日経新聞の意見広告ミサイルで応酬 : 市況かぶ全力2階建

現在の税理士法では、公認会計士と弁護士には税理士となる資格が自動的に付与されることになっています(税理士法3条1項3号4号)。税理士会はこれを排除したいと考えており、公認会計士協会はこれを維持したいと考えているとのことです。

私はどちらの職業の方もお付き合いがありませんが、ちゃんと仕事してもらえるならどっちでもいいんじゃないの、と個人的には思っています。

私は仕事上弁理士さんとお付き合いすることが多いのですが、比較的ニッチな分野を専権業務とするためか、地味に他士業との職域争いをしている事情をご存じない方が多いようです。せっっかくなので、ここに簡単にまとめておきます。

弁護士との関係

弁護士は弁理士となる資格が自動的に付与されます(弁理士法7条2号)。というか弁護士は法律関係の国家資格すべてになる資格を持っています。弁護士の権限は広すぎるのではないかというのは度々言われることですが、ここではそういうものだということで受け止めたいと思います。国が税金から給料払ってまで育成している人材たちなのだから働いてもらわないと仕方ないでしょう。

一方で、弁理士であって特定侵害訴訟代理業務試験に合格して付記を受けた者は、同一の事件について弁護士とともに受任した場合に限り、訴訟代理人となることができます(弁理士法6条の2)。これは平成14年4月交付の改正弁理士法により実現した制度であり、民事訴訟法54条に定める弁護士代理の原則に対する例外の一つです。

今後に向けて弁理士会が職域拡大を図っている分野は、産業構造審議会の弁理士制度小委員会における配布資料などを見れば大体見えてきます。

産業構造審議会知的財産分科会第3回弁理士制度小委員会議事次第・配布資料一覧

一つは、すでに認められている不正競争防止法上の特定不正競争に関する裁判外紛争解決手続の業務(弁理士法4条2項2号)について、特定不正競争の範囲を拡大したいということです。特定不正競争というのは、不正競争防止法に規定される不正競争のうち技術的な内容に関するものですが、「特定」の文字を外したいということでしょう。

もう一つは、いわゆる秘匿特権を弁理士に認められるようにしたいということです。秘匿特権はコモンロー諸国の民事訴訟における証拠開示手続(ディスカバリー)において文書の開示を拒否できる特権です。これがないと特許権者が米国などで訴訟当事者となった際に弁理士に相談することが難しくなります。逆にこれが認められれば外国での訴訟に弁理士が関与できるようになりますから業務範囲の拡大に繋がります。

公式に動きがあるのはこの辺りのようです。基本的には従来弁護士の独占業務であった権利化後の紛争解決に積極的に切り込みたいというのが弁理士会の意向と考えて間違いないでしょう。

行政書士との関係

弁理士は行政書士となる資格を自動的に付与されます(行政書士法2条3号)。個人事務所で独立している方、特に地方で活動している方の中には行政書士登録している人もいるようですが、あまり多くはないようです。

古くから弁理士の専権業務である商標登録に関する業務について行政書士への開放を求める動きはあるようです。ちょっと違うけど商標権の更新登録について行政書士への開放を求めた事案はありました。

商標権存続期間更新登録手続の行政書士への開放について(反対意見)

特許のように技術的な素養がないと勤まらない業務は仕方ないとして、純粋な行政手続である商標業務ならできるだろうという判断は理解できなくもありません。ぶっちゃけ商標とか会社設立のときに取得する必要あるし、個人的には行政書士ができてもいいんじゃないの、と思ったりしなくもありません。

また、度々目にする行政書士会連合会の談話等に触れると、明らかに知的財産分野への職域拡大を強く意識していることが見て取れます。

商標権、特許権等の知的財産権のうち産業財産権に係る出願業務は弁理士(弁理士法第75条)と弁護士(弁護士法第3条第2項)にのみ認められたものです。一方、著作権や種苗法による新品種育成者権などの登録に係る手続きは、逆に弁理士がなし得ない行政書士固有の業務です。
(知的財産権関係業務の業際に関する留意についてより)

工業所有権の登録は弁理士の独占ですが、確定した権利を売買したり、使用許諾を得たりという契約や、著作権等の売買、譲渡、使用契約などに関する業務は民民間の契約書の作成で、行政書士法第1条の2(※)で定める権利義務の書類の作成にあたるので、著作権等の売買、譲渡、使用契約などに関する業務は行政書士の分野でもあるわけです。著作物には、音楽や絵画、写真といった文化系のものと、限りなく工業所有権に近いものがあります。後者は、弁理士の方々が中心の分野になってくると思いますが、前者については、行政書士も活躍できる分野です。
(行政書士の活動範囲の拡大に向けてより)

著作権登録も種苗登録も年間1000件に満たない制度ですから全国4万4千人の行政書士さんが食っていけるようなパイはありません。著作権は専門とする弁護士も多いので行政書士に相談するメリットはあまりないように感じます。種苗登録は植物の特性など極めて専門的な内容を理解しなければ申請書は書けません。頑張ってもその労力に見合う仕事量はないような感じがします。

ざっくり見た感じでは、行政書士側は何となしに知的財産分野への進出を窺っているけれど、弁理士側がその動きを察知するや全力で潰しに来るというのがパターンになっているようです。

人数的には行政書士の方が圧倒的に多いですが、弁理士側には元総理をはじめとして有力な政治家がいるのが大きいのでしょうか。知らないけど。

まとめ

私は基本的には規制緩和が正義だと思っています。ですから業務独占資格はもっと減らすべきだと思っています。もし専門サービスとして一定の質が担保されないと社会的な不利益がある分野があるということであれば、質を担保できる最低限の試験は課すとしてもジャンジャン合格させた上で自然淘汰に任せるのがよかろうと思っています。

なんてことを某士業の友人と話していたらもの凄く不機嫌そうになったので、こんなところにカキコしてみました。めんどくさい人たちだなぁ。


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