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『米国特許法逐条解説』で有名なヘンリー幸田先生の新著を読みました。

大まかな流れは、知的財産制度の歴史を世界史的な観点から振り返って、日米の知財制度の対比から日本の進むべき道を説くというものです。

本書の目次はこうなっています。

  • 第1章 知財の本質を探る
  • 第2章 世界を動かした特許の歴史を辿る
  • 第3章 米国特許法の変遷
  • 第4章 日本の知財制度を振り返る
  • 第5章 経済の価値基準をハードからソフトに転換させた米国新国家戦略
  • 第6章 米国に生まれた新しい知財ビジネスの実態
  • 第7章 日本の知財活動:過去から現在
  • 第8章 知財を活かすための日本の課題
  • 第9章 理想の知財戦略

知財制度の歴史って、この業界で食ってる人でも個人的な興味がないとまったく知らない場合が多いです。ざっくり言えば、ベネチアで特許制度が生まれてグーテンベルクの活版印刷を普及させ、英国専売条例がワットの蒸気機関を保護し、米国特許法がエジソンとGEを生んだくらいを把握しておけばよいでしょう。詳しくは本書で。

ざっくり知財制度をおさらいした後は、米国のレーガン政権に話が飛びます。この間は米国が圧倒的な経済力で世界を席巻していたので、知財を保護する必要性がなかったのです。しかし、80年代、日本製造業の台頭で米国の製造業は壊滅的な打撃を受け、これに対抗するためにプロパテント政策に舵を切ります。その切っ掛けとなったのが有名なヤングレポートでした。

1985年のヤングレポートから2004年のパルミサーノレポートを経て、米国はハードの製造業からソフト産業へ転換を行いました。旧来は知財保護は本業を優位に展開するためのツールだったところが、近年では知財時代がマネーを生み出す仕組みが生まれてきています。

それが第6章に集約されていて、パテントトロール、パテントアグリゲータ、知財取引仲介業などなど、最新の米国の知財ビジネスが紹介されています。この辺りが一冊の書籍にまとまっているのは他にはあまり見掛けませんので大変興味深かったです。

著者は米国弁護士なので米国の知財業界に若干肩入れしている感もあります。しかし、本書で提言する内容は決して米国の制度を諸手を上げて受け入れようというわけでもなく、日本の事情を十分に考慮しており、大変納得感のある内容でした。

本書は、知財制度の歴史的な流れから、現在知財保護で最先端を行く米国の知財ビジネス事情を知り、日本との違いを浮き彫りにします。日本ローカルで知財の仕事をしているとなかなか身に付けられない視点を与えてくれる良書だと思いました。

一点だけ難を言えば、このタイトルは酷すぎます。どうしても胡散臭さが拭い切れません。この手のビジネス書だとおそらく出版社が決めるんだと思いますが、もったいないくて仕方ありません。

知財制度の歴史については、『世界を変えた発明と特許』という新書も手軽に読めてよいです。著者は大阪工業大学の専門職大学院教授なんですね。

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