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普段大量に文章を書く仕事をしているもので、この手の文章術みたいなものには結構興味を持っています。ちょっと前にも古典的名著と言われる一冊を読んで大変感銘を受けました。その時の書評はこちら→『悪文 第3版』岩淵悦太郎(編著)

『悪文』は悪い文例を批判しながらいい文章はどういうものかを掘り下げていく形で書かれていたのですが、本書『理科系の作文技術』は文章を書く前の下準備から書き終えて校正するところまで、順を追って注意点を列挙していく、いわば作文のライフサイクルを舐めるような構成です。そういう構成なのでタイトルにもある通り、理科系の仕事の文章、例えば研究論文とかレポートとか、マニュアルなんかも含まれるんでしょうか、研究職・開発職の人が職務上典型的に書く文章にテーマを絞って書き方を指導していく体裁になっています。

目次を挙げておくと

1 序章
2 準備作業(立案)
3 文章の組立て
4 パラグラフ
5 文の構造と文章の流れ
6 はっきり言い切る姿勢
7 事実と意見
8 わかりやすく簡潔な表現
9 執筆メモ
10 手紙・説明書・原著論文
11 学会講演の要領

本書はタイトルが『理科系の~』になっていますけれど、理科系に限らず仕事で書く文章全般に通用する内容になっています。3章~8章が純粋な文章術になっていて、この部分は分野に限らず心得ておくべきところだと思います。特に、4章と8章はとても重要。お金がないならこの章だけでも立ち読みしておけ、と言いたい。

『悪文』で言われていたような内容はだいたい8章にまとまっています。逆に8章を掘り下げたのが『悪文』と言った方がよいかもしれません。そういう意味だと本書『理科系の作文技術』→『悪文』の順で読んだ方が実用的だったかもしれません。

一応他の部分にも触れておくと、2章は大雑把にまとめると、文章を書きだす前に内容をちゃんと練っておけよ、って話です。9章~11章はさらに文章の種類に応じた具体的な作業手順になります。この辺りは理科系の仕事を念頭においた記述なので研究職以外の人にはあまり参考にならないでしょう。

自分の学生時代のことを思い返してみると、学校教育の国語って基本的に読解力の向上が中心になっていた気がします。作文の授業はあったし、一部の試験では小論文形式の場合もありました。でもこれらは書いた文章に対する添削によって学んでいく感じで、言うなればOJT(on the job training)みたいなものでした。座学に対応するような、文章の書き方を体系的に学ぶ授業ってあまり記憶にありません。

私は子供の頃から比較的本を読む子だったんで、ちゃんとした文章が書けずに困ったことはそんなにないですが、社会に出てから周囲を見回すと、結構な有名大学を卒業しておいても意味不明な文章を書く人が少なからずいて驚愕しました。世代論はあまりしたくないですが、特にここ3年くらいで社会に出て来た人は極端に文章を書けない人間が多いです。

言語能力って、基本的に大量の良書を読むことで研ぎ澄まされていくもので、それが王道だとは思うのですけれど、家庭環境とかその他の理由であまり本を読まずに大人になってしまった人もいて、そういう人はとてもじゃないですが追い付かないわけです。まともな言語能力を習得した頃には窓際に行っているか、習得する前に肩を叩かれているかもしれません。

若い時分に文章を読む経験が乏しくて、大人になってから手っ取り早く穴埋めしたい人には是非お勧めしたい一冊です。

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