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「アホ男子母死亡かるた」とやらが話題となっていると聞いて見てみました。

  1. 2012年10月頃、twitter上で、玲奈さんが「#WM死亡かるた」「#WM幸せかるた」というハッシュタグを作成。これが流行る。
    (WMとは、Working Motherのことらしい)
  2. 2012年10月頃、これを見てイシゲスズコさんが「#アホ男子母死亡かるた」というハッシュタグを作成。これも流行る。
  3. 時は流れて2013年12月頃、「アホ男子かるた」という本が出版されることが発表される
  4. 出版社のWebサイトでは「#アホ男子かるた」「#ahodanshi」でネタの募集をしている
  5. 優れた作品は「アホ男子かるた」のネタとして漫画になります。
    twitterではハッシュタグ「#アホ男子かるた」または「#ahodanshi」と入れてつぶやいてください。

    出典:【株式会社ユーメイド】ファッション > 立ち読み:アホ男子かるた

  6. 出版社のWebサイトには本書のサンプルとしてイシゲスズコさんが最初に投稿したものと酷似するフレーズが掲載されている
  7. あ

ここまでの経緯は、以下の資料を参考にしました。

*1「アホ男子母死亡かるた」界隈で何やら焦臭いようですが大丈夫でしょうか(山本 一郎) – 個人 – Yahoo!ニュース
*2「アホ男子かるた」出版の件 – スズコ、考える。
*3【株式会社ユーメイド】ファッション > 立ち読み:アホ男子かるた
*4【パクリ?】#アホ男子かるた「ツイート無断使用」書籍発売騒動まとめ【未解決】 – NAVER まとめ
*5#アホ男子母死亡かるた まとめ – Togetterまとめ
*6アホ男子かるた – Togetterまとめ
*7「アホ男子かるた」編集者と著者のツイートまとめ – Togetterまとめ

状況がよくみえないところもあり、いろいろと論点を含んでいる難しい問題だと思いますが、ここでは以下の点について考えてみたいと思います。

twitterに投稿されたツイートを引用、または翻案して商業的に利用することは著作権的に問題ないのか?

細かい説明は省略しますが、twitterに投稿したツイートはユーザに著作権が生じます。もちろん投稿の内容にもよります。このような短い文言であれば、例えば、キャッチフレーズやスローガンなどには著作権はないとの説もあります。一方、俳句や短歌には当然のように著作権はあります。いろいろ面倒なのでここでは著作権がある前提としますが、その著作権はツイートをしたユーザに帰属します。

twitterの利用規約では、ユーザがtwitterに投稿した文言及び写真は、そのコンテンツを利用する無償のライセンスをtwitter社に許諾することになります。利用には、複製、改変が含まれています。

ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介して、自ら送信、投稿、または表示するあらゆるコンテンツに対する権利を留保するものとします。ユーザーは、本サービス上にまたは本サービスを介してコンテンツを送信、投稿、表示することをもって、媒体または配布方法(既知のまたは今後開発されるもの)を問わず、かかるコンテンツを使用、コピー、複製、処理、改変、修正、公表、送信、表示および配布するための、世界的な非排他的ライセンスを(サブライセンスを許諾する権利と共に)当社に対して無償で許諾するものとします。
ヒント:このライセンスによって、ユーザーは、当社や他の利用者に対し、ご自身のツイートを世界中で閲覧できるようにすることを認めたことになります。

出典:Twitter / サービス利用規約

一方でツイートの利用をするにはTwitter APIを使用しなければいけないことになっています。

コンテンツまたは本サービスの複製、修正、これに基づいた二次的著作物の作成、配布、販売、移転、公表、実演、送信、または他の形での使用を望む場合には、本サービス、本規約またはdev.twitter.comの定めにより認められる場合を除いて、Twitter APIを使用しなければなりません。
ヒント:当社では、コンテンツの幅広い再使用を奨励および容認しており、Twitter APIはこのために提供しています。

出典:Twitter / サービス利用規約

ツイートを書籍にする過程でどの程度のTwitter APIの利用が求められるのかは明確ではありません。Twitter APIで可能な範囲(例えば、ツイートの埋め込みコードの生成とか、ツイートのURLへのリンク、とか)でしか利用してはいけないのか、Twitter APIを利用してツイートを抜き出せばそこから先は自由にやっていいのか、などなど。

ただし、利用規約上改変も含めて利用できる権利をTwitter社に許諾しているわけですから、ツイートを無断で利用されても文句は言いにくい面はあろうかと思います。どうやってツイートを利用したかなんて内部の人にしかわかりませんからね。

もう一つ検討すべきは同一性保持権についてでしょう。同一性保持権は著作者人格権ですから、翻案権を許諾していたとしても同一性保持権は依然として著作者が保持します。

翻案権を許諾した上で同一性保持権を行使することが可能かという問題には諸説あるようですが、いずれにしても翻案を許諾しておいて同一性保持権の侵害を主張できる範囲は狭く解釈するべきと考えられているようです。

商業的に利用するのはどうなの?って話はあると思います。誰しも自分のアイデアで他人が勝手に金儲けしてたら気分悪いですね。でも、書籍化はよくて、広告を貼り付けたTogetterやNaverまとめへの転載はいいのか、とか、原稿料が出る記事にツイートを引用するのはいいのか、とか、現在のWebの状況では線引きも難しそうです。

現状のTwitterの利用規約を見る限り、ツイートを第三者に無断で利用されても著作権侵害にはならないし、それが商業的な利用であっても結論は同じであろう、と私は思います。

前掲の山本一郎さんの記事*1で「やや特殊な例」と前置きして紹介しているハイチ地震の写真の事例は、無断転載した写真がかなりニュースバリューのあるものだったようです。これをもってツイートの転載がすべて著作権侵害だし、裁判やったら勝てる話かというとそれはないだろうと思います。そもそも損害額の算定ができないし、仮にがんばって算出しても弁護士費用にもならないでしょう。山本さんが言う通り、”かなり”「特殊な事例」と考えるべきです。

ちなみに、Twitter上の著作権の問題は、米国カリフォルニア州法を準拠法とすることになっていますから、厳密に日本の著作権法で考えても意味がない面もあると思います。

本規約およびそれに関連して行われる法的行為は、米国カリフォルニア州法の抵触法に関する規定またはご自身の居住している州もしくは国にかかわらず、米国カリフォルニア州の法に準拠するものとします。本サービスに関連する一切の請求、法的手続または訴訟は、米国カリフォルニア州サンフランシスコ郡の連邦裁判所または州裁判所においてのみ提起されるものとし、ユーザーはこれらの裁判所の管轄権に同意し、不便宜法廷地に関する一切の異議を放棄するものとします。

出典:Twitter / サービス利用規約

さらに言えば、紛争になったときに日本の裁判所が果たして裁判管轄を認めるのかも怪しいし、下手したら日本人同士がカリフォルニアの裁判所で訴訟を行うなんて場面も起こり得るかもしれません。それこそとんでもない裁判費用がかかることになります。

この辺の話は、利用規約や著作権法の原則的なところを考えているだけで、当事者間で特約があればクリアできる問題でもあります。前掲のイシゲスズコさんの記事*2によれば、著者の甘井ネコさんはtwitter社から許諾を受けてやっているとの見解であるようです。

著者の方に直接、

「あのかるたのツイートは私のものだと思うのだけど、出版社側も含めどういう経緯で流用してるのですか?」

と伺いました。

著者の方からは「自分は一主婦でよくわからないがtwiiter社の許可等法的なものはクリアされていると編集から言われた」とのお返事をくださいました。

出典:「アホ男子かるた」出版の件 – スズコ、考える。

書籍を出版してビジネスをしている以上「一主婦」はなかろうと思いますが、著者自身に権利処理の責任を負わせるのは酷であるとは思います。出版社がどのような見解で法的なものをクリアしたと主張するのかは大変興味のあるところです。

利用規約はともかくとして、出版社が最初から「#アホ男子母死亡かるた」界隈のユーザさんに告知した上で新たにネタを募集した範囲で企画していれば、おそらく何の問題もなかったはずです。

とは言ってもすべての人にそうした慎重な対応を求めるのも酷な話で、膨大なユーザを抱えるに至ったTwitterにとって商業利用も含めて無断利用し放題と解釈され得る利用規約で運営することはあまり得策でもないような気がします。権利上どうかはともかく、勝手に自分のアイデアをパクられて改変されるのは気分のいいものでないのは理解できます。

そんなわけで、この件についての私の感想は、こうです。

追記(2014.1.30)

出版元のユーメイドから『アホ男子かるた』の販売を無期限延期とすることが発表されました。

enki

発表文によると出版元がTwitter社の公開するガイドラインから無断利用も問題なしと判断したとのことです。

ブロードキャストには以下を含みますが、この限りではありません。メディアが提供する(全ての形態のテレビ、ラジオ、衛星放送、インターネットプロトコル、ビデオ、専用の無線ネットワーク、インターネット販売など)全てのツイートの展示、配布、放送、複製(再生)、公共パフォーマンス、その他一般に公開されるものです。これは既存のもの、現在開発中のものを問いません。当ガイドラインの条件に沿っているか不明確な場合は下記よりお問い合わせください。

出典:ブロードキャストでのツイート利用に関するガイドライン

すべきこと

  • ツイートが番組内に表示されている間は、ツイートのすぐそばにTwitter bird www.twitter.com/about/logosを表示させる。
  • 各ツイートにユーザーの名前と、ユーザー名(@ユーザー名)を表示する。
  • ツイートの全文を使用する。改変は技術的な問題部分のみとする(例:リンクを外す)
  • Twitter birdのアイコンのサイズは内容に合わせた適切なサイズであること。一行の文字列よりも少し大きいくらいが適当です。

してはいけないこと

  • ユーザーの正体を削除、ユーザーを特定する情報を削除、改ざんしたり、不明瞭にしたりすること。ユーザーの安全性が懸念されるような場合を除き、ツイートを匿名のまま掲載すること。

出典:ブロードキャストでのツイート利用に関するガイドライン

そんなわけで、発表文に触れた私の感想は、こうです。


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