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3月20日(木)、相模鉄道と関東バスがストライキを断行しました。

 相鉄ホールディングス、相模鉄道、相鉄バスの3社(いずれも本社・横浜市西区)の労働組合(組合員1806人)は20日始発からストライキに入り、午前6時半、ストを解除した。電車とバスは午前7時から順次運行を開始した。約6万人が影響を受けた。

出典:相模鉄道と相鉄バスでストライキ 午前6時半に解除:朝日新聞デジタル

 関東バス(東京都中野区)の労働組合(組合員約850人)は、春闘の労使交渉で20日の始発から入っていた24時間ストを、同日午後4時に解除した。
 関東バスは全線で運転が再開されたが、東京都の中野区や杉並区、武蔵野市を中心に約6240本が運休し、約10万500人に影響した。

出典:関東バスがスト解除 6千本運休、10万人に影響:朝日新聞デジタル

日本国憲法には労働基本権として労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障すべきことが定められています。

第二十八条  勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

出典:日本国憲法

ストライキは団体行動権を行使した行動の一態様です。日本の法令上では「同盟罷業」という用語が使われています。ストライキは労働組合法で刑事的・民事的に免責されており、ストライキの合法性が保障されています。

(目的)
2  刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十五条 の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であつて前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする。但し、いかなる場合においても、暴力の行使は、労働組合の正当な行為と解釈されてはならない。

出典:労働組合法 第一条

(損害賠償)
第八条  使用者は、同盟罷業その他の争議行為であつて正当なものによつて損害を受けたことの故をもつて、労働組合又はその組合員に対し賠償を請求することができない。

出典:労働組合法 第八条

(正当行為)
第三十五条  法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

出典:刑法 第三十五条

正規の手続きに則っていれば、ストライキを実施することは法的には何ら問題ないわけです。

ところで、相鉄及び関東バスをご利用の地域住民の皆さまには大変ご苦労様でした。災難ですね、というしかございません。

参考:相鉄ストライキ決行でユーザーから悲鳴が上がる – Togetterまとめ

こうしたストによる不便を強いられる人々の生の声に対してネット世論の視線は冷たいものでした。

参考:はてなブックマーク – 相鉄ストライキ決行でユーザーから悲鳴が上がる – Togetterまとめ

「労働三権を知らんのか」「ストなんだから迷惑掛かって当然」「ストに文句言うのはブラック企業礼讃」「社蓄乙wwwwww」などなど。権利があるから何やってもいいとか、禁止されてないんだから何やってもいいとか、最近のネット世論は思考停止な極論が多いなと残念な気持ちになります。もっと本質を見ようよ。

そんなカスみたいなコメントの中に「ストが珍しくなってから日本の社会がおかしくなった」的なコメントを見ました。面白い視点だと感心しました。

そもそもなんでストが減ってきたんだろうか?そんなにみんな手放しで喜ぶものならジャンジャンやればいいじゃない。でも現実にはほとんどの企業は給料が上がらなくてもストという手段は取りません。なぜでしょうか?

理由を探してみたところ「なぜ日本ではストが激減したのか」という記事が見つかりました。著者は千葉大学法経学部の皆川宏之教授です。

全般的に非常にわかりやすく日本のストを取り巻く状況がまとめられていました。特に面白かったのが以下の視点です。

日本で主流の企業別組合の組合員の高学歴化が進み、学歴や経歴の面で企業の経営者層と近い者が組合幹部となることから、経営側と労組との間の意思疎通が容易となっているという事情もあるだろう。

出典:なぜ日本ではストが激減したのか | nippon.com

日本では、雇用される企業の規模や雇用形態の違いによって労働組合における組織の面で労働者の「分断」状況がみられ、そのことが労働者の連帯による団体行動を抑制する一因となっていると考えられるのである。

出典:なぜ日本ではストが激減したのか | nippon.com

私が思うに、ストライキというのはマルクス主義的な労働観の上に成り立っています。金持ちの資本家が貧乏な労働者を搾取する。労働者は立場が弱く反抗すれば首を切られて路頭に迷う。だから労働者が団結して資本家に対抗することができるようにすべき。それが争議行動です。まさに階級闘争であると言えます。

でも現代の日本では経営陣は多くの場合、会社から報酬をもらうサラリーマンです。株式会社の所有者は株主であり、多くの会社の大株主は機関投資家たちです。資本家は株主というバーチャルな存在に昇華して実態が掴めないものになっています。もはや労働者を搾取する資本家は一部のオーナー企業を除いて存在しません。経営者と労働者は同じ階級に属しているわけですから、そこに階級闘争など起こるわけがないのです。

一方で、現代社会には別の階級が生まれています。正規労働者と非正規労働者です。皆川教授はこれを「労働者の分断」と呼んでいました。企業別労働組合では、組合員はみんな正社員です。労使交渉は経営者側の正社員と労働者側の正社員が寄り添って馴れ合っている構図になってしまいました。実際に搾取されているのは非正規社員であるのに。

そう考えてみると、現代社会にストライキを行うことができる企業というのは、少なくとも労働者の大半が同じ階級に属している可能性が高いです。それはつまり旧来の日本的な雇用慣行を守ることができていることを意味するのではないでしょうか。

また、ストライキは機会損失の原因になるし、消費者の反発があれば代替事業者への乗り換えを誘発します。ストを実行したところで経営上の問題になることのない体力のある会社しかできません。潰れちゃったらベースアップもくそもないですからね。多少消費者が離れても経営上の影響が大きくない競争圧力の弱い寡占業界である必要もあるでしょう。

こうして考えれば、ストライキを実行できる企業は極めて恵まれた会社であることがわかります。成長力の鈍化した現代の日本社会ではストライキを実行できるのは非常に贅沢な嗜みなのです。

ストライキを起こした企業を批判するなら「そんな贅沢なことしてずるい」と言えばいいのです。


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