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元弁理士の上田育弘さんが手当たり次第に尋常でない数の商標登録出願をしていて気になってしょうがないことを以前書きました(下記リンク参照)。

2014年商標出願数トップの上田育弘さんが気になってしょうがない | やめたいときは やめるといい。

その後も順調に、というか加速的に出願を重ねておるようでして、6月22日時点で2140件となっていました。

ikuhiro2014
出典:2014年商標出願人ランキング|知財ラボ

商標登録出願は1件当たり最低12,000円かかりますので、出願手数料は少なくとも2568万円になる計算です。ほとんどの出願では区分を複数指定しているようですので、概算で5000万円以上になっていると推測できます。

ちなみに平成25年度の日本国全体の商標登録出願件数は118,570件となっています。ここ数年商標登録出願件数は横ばいですので、今年後半もこのままのペースで出願を続けるとざっくり全国シェアは3.6%ほどになるわけです。すごい。

率直に申し上げてほとんどの出願は特許庁の審査で拒絶されることが明白な内容ですから、国民への影響はあまり大きくないと思います。

特許庁の審査負担が増大するのではないかという懸念はありますが、商標登録出願の件数は年度によって数千件単位でぶれますし、特許出願などはここ数年で数万件単位で激減していますので、上田育弘さんが高々3000件の不備のある出願をしたところでわれらが日本国特許庁には屁でもない規模だと思います。

また、現在の商標制度では、出願時に手数料を払わなくても出願自体は受理されて、そのまま出願公開までされます(参考)から、そもそも手数料払ってないんじゃないかという疑惑もあります。であれば実質審査は開始しないので特許庁の負荷もそれほど大きくないでしょう。

というわけで上田育弘さんの出願行動による実害はほとんどないと思われるのですけれど、われわれ商標ウォッチャーとしてはかなり酷いノイズになっているのは確かなわけです。業務として競合企業の商標出願を監視している人も世の中にはいるわけですから。

それでは、このような無謀な商標登録出願を濫発することを規制する方法はないのだろうか、ということを考えてみました。

まず、基本的には出願自体を禁止することはできません。商標登録出願をすることは国民の権利であり、それを認めるか否かを審査するのが特許庁の仕事です。審査に通るかどうかは最終的には特許庁が決めることで、審査に通らないから出願できないと国民の側で判断することは本末転倒な話です。

では、手数料が納付されない限り出願を受理しないようにしてはどうでしょうか。出願が有効にならないので出願公開されることもありません。しかし、現状ではこれも難しそうです。商標法5条の2という規定があって、一定の条件を満たす出願は出願日を認定しなければいけないことが法定されているからです。ここには手数料の納付は列挙されていません。

(出願の日の認定等)
第五条の二  特許庁長官は、商標登録出願が次の各号の一に該当する場合を除き、商標登録出願に係る願書を提出した日を商標登録出願の日として認定しなければならない
一  商標登録を受けようとする旨の表示が明確でないと認められるとき。
二  商標登録出願人の氏名若しくは名称の記載がなく、又はその記載が商標登録出願人を特定できる程度に明確でないと認められるとき。
三  願書に商標登録を受けようとする商標の記載がないとき。
四  指定商品又は指定役務の記載がないとき。

これだけなら五条の二を改正すりゃいいんじゃないかという感じもしてきますけれど(それでも大変な話ではありますが)、さにあらず。この出願日の認定要件は商標法条約の要請によるものなのです。

一応、商標法条約5条(2)(a)では料金が支払われるまで出願日を認定しないように定めることができるとされていますが、5条(2)(b)では条約加盟時にそう定めておかなければならないとされています。

5条 出願日
(2)[許容される追加的な要件]
(a) 締約国は,必要な料金が支払われるまで出願日の認定を行わない旨を定めることができる。
(b) 締約国は,この条約の締約国となる時に(a)に定める要件を適用する場合に限り,当該要件を適用することができる。

つまり、手数料が納付されない限り出願公開されないようにするためには、商標法の改正が必要であり、そのためには商標法条約の改正もしくは脱退まで必要になってしまいます。事実上これはあり得ないことでしょう。

ここまで見てきたように、現在起きている問題を法的に規制するのはなかなか容易ではないようです。それで思い付いたのがこれです。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条  虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

偽計業務妨害罪。

前提として、最初から手数料を払わずに出願公開させることを意図して大量の出願をしているとします。この場合、商標登録を受ける意思があるかのように特許庁に錯誤させており、大量の出願により公務を滞留させることで業務を妨害していると捉えることができそうです。

公務に対して業務妨害罪を適用できるかは大きい論点のようなのでよくわからないんですが、この辺りで規制をかけていくしかないのかなぁ、などと思いました。

何かよいアイデアがある方、ご意見募集しております。

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