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デニーズの商標に似せたロゴを使った風俗店を経営した人が逮捕されたという記事を見ました。デリヘルのデリーズだそうです。ベタですね。

 長野県警は11日、ファミリーレストラン「デニーズ」をまねた商標を表示したなどとして、不正競争防止法違反の疑いで同県上田市住吉、デリヘル店経営白石清治容疑者(44)と従業員ら男計3人を逮捕した。
 逮捕容疑は昨年5月中旬~今年6月上旬、デリヘル店「デリーズ」の商標をデニーズに似せて制作し、インターネット上に表示した疑い。
 県警によると、白石容疑者は主に長野県内で同店を展開。デニーズ運営会社のセブン&アイ・フードシステムズが、佐久署に相談して発覚した。

「デニーズ」まねた疑いで逮捕 デリヘル経営者ら3人 – 47NEWS(よんななニュース)

問題の商標はこちらだそうです。私も息抜きしたいです。

DeLy's
『男の息抜きスポット DeLy’s デリーズ』

逮捕容疑は不正競争防止法違反ということで、おそらく不競法2条1項2号に該当するという判断だろうと思われます。

(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
二  自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

デニーズのロゴはちゃんと商標登録されていますので、本来は商標法違反で行きたいところです。しかし、残念ながらデリヘルに該当するような役務は指定していませんし、防護標章登録もしていませんでした。

ちなみに、デニーズのロゴの商標登録は第3007801号、第3017225号、第3017225号の3つがあるようですが、指定商品・役務は以下のようになっていました。

  • 35類:経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する情報の提供
  • 39類:駐車場の提供
  • 42類:定食を主とする飲食物の提供(一般食堂が提供するもの。)

デニーズとデリヘルではそもそも競争していないんじゃないか。何が不正競争なのだ。といった反応がいくつかありました。基本的にはその通りで、同じ商標であってもまったく別の指定商品・役務に使用するのであれば商標権の侵害にならないし、不正競争にもなりません。一定の場合を除いては。

一定の場合を除くというのは、商標法で言えば防護標章登録をしている場合、不正競争防止法で言えば著名な商品等表示である場合、です。いずれも著名な表示については業務の類似する範囲を超えて保護を拡大しようという趣旨です。

制度趣旨としては、フリーライド(ただ乗り)・ダイリューション(希薄化)・ポリューション(汚染)を防止するというものです。今回のケースで言えば、「デニーズ」のロゴに類似する商標「デリーズ」を性風俗で利用することは、「デニーズ」のブランドイメージを著しく損ねる可能性がある、つまりポリューションを防止するという意味合いが強いと考えられます。

このように不正競争の範囲を拡張したきっかけとなったのは有名な「スナックシャネル事件(最判H10.9.10)」です。この事件は名前を見ればわかるように、無断で「シャネル」と名付けたスナックが本家のブランド「シャネル」から使用差し止めを求めて訴えられた事件です。当時は不競法2条1項2号に相当する規定がありませんでしたが、広義の混同惹起行為があれば両者間に競争関係がなくても混同を生じると解されると判断されたのでした。

でも普通に考えて田舎(千葉県松戸市だったようです)の10坪ほどのスナックをあのシャネルと関係があるなんて思う人はいません。結論は妥当であったとしてもこのような解釈を定着させるのは妥当ではないという考えから現在の2条1項2号が立法化されたのでした。すなわち著名な商品等表示については混同を生じなくても不正競争に該当するという規定が追加されました。

すでに多くの人が指摘しているように、風俗業のお店にはこの手の有名なブランドをパロったものが多いです。どこまで厳しく取り締まるかは企業のブランド戦略の方針に依るところが大きいです。

以前タツノコプロの法務の人にお会いしたときに似たような話を聞きました。あるとき関西方面からタレコミがあって「ヤッターマン」というデリヘル店があることがわかったそうです。そのままじゃんか。

その方は、個人的にはそういうのに使われるのは知名度がある証拠だから放置したかったんだけど、店のホームページとかで大々的にロゴをパクっていたので、知っちゃった以上は職務上対応せざるを得なく、店に電話して店名を変えてもらったそうです。

この手のお店の名前なんて一発芸みたいなところがありますから、警告が来たらさっさと潰して別の名前でやり直すことが多いようなんですが、今回は警告なしにいきなり逮捕になったんでしょうか。警告を受けても強気に継続したんでしょうか。そっちの方が気になります。

話が長くなりましたが、要するに、有名なブランド名とかをパロった風俗店とかしょっちゅう見掛けますけれど、基本的には違法である可能性が高くて、普通に営業しているのは権利者がいちいち相手にする気力や体力がないだけ、ということです。

個人的には「デリーズ」はもう一捻り入れて担当者が脱力するようなネタを考えて欲しかったな、と思いました。

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