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職務発明に関する特許を受ける権利を原始的に企業に帰属させる法改正に関して、朝日新聞が報じた記事が話題になっていたようです。

 政府は、社員が仕事で発明した特許をすべて「社員のもの」とするいまの制度を改め、条件付きで「会社のもの」と認める方針を固めた。社員に十分な報償金を支払う仕組みがある企業に限って認める方向だ。労働団体などは発明者の意欲をそぐと批判しており、報償金の水準などが今後の焦点になりそうだ。

 18日の特許庁の特許制度小委員会で政府案として示す。具体案を固めて、来年の通常国会に特許法改正案を出すことをめざす。

 いまの特許法では、企業の研究者らが仕事で発明した特許は「社員のもの」とされ、企業は発明者に対価を払って特許をゆずり受ける必要がある。今回の改正ではこの原則は残しつつ、一定の条件を満たした企業に限り、「会社のもの」にできる特例をもうける。発明に見合った十分な報償金を支払う仕組みがあることを条件にする見込みだ。

出典:社員の特許「会社のもの」に 報償金条件、来年法改正へ:朝日新聞デジタル

この件は2013年の知財戦略ビジョンにも明記されているものです。率直に言って、何をいまさら騒いでんだと。

それにしても朝日新聞の記事は全般的に内容が不正確で読んでてイライラするので書き直してみました。

 政府は、社員が仕事でした発明した特許に関する特許を受ける権利をすべて「社員のもの」とするいまの制度を改め、条件付きで「会社のもの」と認める方針を固めた。社員に十分な報償金を支払う仕組みがある企業に限って認める方向だ。労働団体などは発明者の意欲をそぐと批判しており、報償金の水準などが今後の焦点になりそうだ。

 18日の特許庁の特許制度小委員会で政府案として示す。具体案を固めて、来年の通常国会に特許法改正案を出すことをめざす。

 いまの特許法では、企業の研究者らが仕事でした発明した特許に関する特許を受ける権利は「社員のもの」とされ、企業は発明者に相当の対価を払って特許を受ける権利をゆずり受ける必要がある。今回の改正ではこの原則は残しつつ、一定の条件を満たした企業に限り、最初から「会社のもの」にできる特例をもうける。発明に見合った十分な報償金を支払う仕組みがあることを条件にする見込みだ。

意図的にか無知ゆえかわかりませんが、重要な点が全然書かれていなくて、書き直すだけでは問題を理解できない気がします。

この問題に関しては昨年知財戦略ビジョンに載ったときに書いているので引用しておきます。私はこの改正があっても大して現状と変わらないという立場です。

 現行の特許法で従業員に原始的に帰属するのは「特許を受ける権利」です。これは発明が完成してから特許出願を経て登録か拒絶かの結果が出るまでの間だけ観念される権利で、審査を経て登録により発生する「特許権」とは明確に異なります。誤解を恐れずに一面だけ捉えて言ってしまうと「発明を特許出願できる権利」なんです。

 継続的に特許出願するような中堅から大手のほとんどの企業では「職務発明規定」を置いていて、特許を受ける権利が会社に自動的に承継されるようになっています。これにより、企業内部で完成される職務発明は、ほぼすべて企業が特許出願しています。特許権は出願人に与えられるものですから、現在でも特許権を保有しているのは企業である場合がほとんどです。

出典:勘違いしないで欲しい、職務発明のこと | やめたいときは やめるといい。

一番の問題は、職務発明に関する特許法35条は平成16年に改正されていて、これに伴って企業側の職務発明規定もきっちり整備されているということです。しかも、改正法は施行日以降の職務発明にしか適用されないので、改正法下の対価請求訴訟がまだほとんど起きておらず、実運用上の評価がなされていないのです(参考:職務発明制度の平成16年法改正後の運用について)。

一部のよくわかってない人たちが古い判例とか引っ張り出してきて批判しているのをみると残念な気持ちになります。

hanafusam
現状の「相当の対価=発明の価値に応じた額」を「報奨金=会社と社員との間の契約により定める額」に変更しようとしている。アスパルテーム事件の場合、報奨金1000万円、相当の対価2億円。原則が変わるって話。

paulownia 労働
日亜化学が中村修二に対して十分な報酬って言って支払ったのいくらだったかなー

日亜化学事件も味の素事件(アスパルテーム事件)も平成16年改正前の旧法が適用されるので、その報奨金の額を持ち出しても何の意味もありません。言ってるのが現役の弁理士というのがなおさら残念。

朝日新聞も、これに乗っかって批判している人たちも、あまり現状を理解しないで、単に政権と会社の経営層に難癖付けたいだけのように見えました。

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