気が付けばもう9月も終わりに近づき、アルプスの山小屋では小屋じまいの準備に取り掛かっているところも多いようです。
今年は8月の天候不良もありあまり多くは山行へ出れませんでしたが、念願の槍ヶ岳と剱岳へ行くことができました。これで北アルプスの百名山は制覇したことになります。
話は変わりますが、最近、山岳フェスというのが増えつつあるようです。私の知る限りでは、山と渓谷社が2008年に始めた「涸沢フェスティバル」が最初だと思います。
インプレスグループで山岳・自然分野のメディア事業を手がける山と溪谷社(本社:東京都港区、代表取締役:粟津彰治)は、2008年8月24日(日)~26日(火)の3日間、日本初の山岳フェスティバル「涸沢フェスティバル」を開催します。
私は今年はじめて知ったのですが、「立山黒部アルペンフェスティバル」というのもあるようです。最初に開催されたのは2011年なのかな。こちらはICI石井スポーツグループ他が主催。
ICI石井スポーツグループ、立山黒部アルペンルート、富山県が主催で、「立山黒部アルペンフェスティバル2014」が、9月5日(金)〜9月7日(日)の3日間、立山黒部アルペンルート内の室堂、弥陀ヶ原、雷鳥沢周辺で開催されます。
出典:雲上のアウトドアイベント「立山黒部アルペンフェスティバル2014」が、2014年9月5日(金)から9月7日(日)までの3日間開催!
イベントのコンテンツは大きく三種類くらいに分類できそうです。
一つ目は体験型。ツアー組んでピークを目指したり、レアなアクティビティに挑戦したりです。登山学校みたいな雰囲気です。
二つ目は販売会。スポンサー企業が自社製品を展示して販売したりします。メーカーの販売員が来る場合が多いのできめ細かい対応が期待できそうです。
三つ目はエンタメ型。あまり登山やアウトドアとは関係ないアクティビティをやります。例えば、野外ライブとか映画鑑賞とかしたりします。ヨガなんかもあったりするみたい。
基本的には、ありだと思うんですよ。山好きな人たちが集って新しい出会いを模索するというのはあまり機会はありません。普段とは違う山との接し方をすることでマンネリ化した山との関わり方をリフレッシュする効果もありそうだし、普段はちょっと躊躇してたようなことにチャレンジすることで一歩を踏み出すきっかけになるかもしれません。
でも、それは置いておいて、モヤモヤするものもあります。
例えば、天候のこと。涸沢フェスティバルなんかは山と渓谷社の雑誌の中で頻繁に広告が入っているんですけれど、かなり早い段階で日程が決定しています。私は基本的に山に関して日程をガチガチに決めてしまうのは危険なことだと思っています。ツアー登山とかもそうなんですけれど、スケジュールを守らなければいけない状況になると、人間は無理をしてしまいがちになります。また、人数が多いと撤退の判断はしづらいものです。
数年前に、北海道のトムラウシ山で大量遭難事件がありましたけど、あれもツアー登山で日程が詰まっている中で翌日には下山しなければいけない状況があって、悪天候に関わらずガイドが当日の日程を強行してしまったのが大きな原因となりました。
フェスみたいに大量の客が殺到するところで荒天に見舞われたとき、運営サイドでどこまで安全を管理できるのか、もし不幸なことが起きてしまったときにどこまで責任を負えるのか、非常に懸念しています。
例えば、荒天でフェス自体は延期または中止となったとしても、折角登山口まで来たのだからと強行する登山者が出るかもしれません。本人たちは自己責任と覚悟していたとしても、家族たちには理解できないかもしれません。残された家族たちから主催者が訴えられるケースもないとは言い切れないでしょう。
実際、立山黒部アルペンフェスティバルの様子を調べてみると、悪天候でいくつかのアクティビティが当日に中止されていたりするようです。前者は2013年、後者は2014年ですから、あまり天候に恵まれていないようです。
立フェス事務局からお知らせです。
雷鳥沢キャンプ場でのアクティビティですが、雨のため、【テント宿泊体験】以外、中止となりました。
【テント宿泊体験】は予定通り、実施いたします。ご予約いただいているお客さま、雷鳥沢にて、お待ちしております!
— 立山黒部アルペンフェスティバル (@tatefes) 2013, 9月 7
立フェス事務局です。
悪天候のため、屋上のテーマブースを本日は終了しました。
明日は8時30分〜開始します。
明日も宜しくお願いします。
— 立山黒部アルペンフェスティバル (@tatefes) 2014, 9月 5
涸沢フェスティバルも立山フェスティバルも例年8月末から9月初めに開催されているようです。夏山登山では高山植物の最盛期が7月の梅雨明けからお盆まで、紅葉が9月後半くらいから10月前半くらい、という感じで、8月末から9月前半というのは全体的に客足の遠のく時期です。だからこの時期に開催すれば周辺の山小屋や行政の理解も得やすいという事情もあるのだろうと推察します。
でも一方でこの時期の日本列島は台風も多く接近します。また、急激に日が短くなる時期なので日中の気温差も大きく天気が崩れやすい時期でもあります。イベント事を開催するのに必ずしも適した時期とは思えません。
山岳フェスのようなイベントは、山に対する新たな接し方を提示してくれて、同じ趣味を持つ人々が集って交流をするというものですから、その趣旨には賛同します。しかし、現在のあり方は非常に商業的な意味合いが強く、あまり最適な形態での運営にはなっていないように思えます。
どうあるべきかというのは正直言って考えがまとまっていませんが、酷い問題が起こる前にちょっと考え直した方がいいんじゃないかな、と思っています。