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手塚治虫の初期の代表作『ロストワールド』を読みました。

本作は大きく地球編と宇宙編に分かれています。

前半の地球編は、生物が住むと言われるママンゴ星からの隕石を偶然入手した敷島博士が、これを奪取しようとする悪党と繰り広げる冒険を描きます。名探偵ヒゲオヤジや新聞記者のアセチレン・ランプなど、その後の手塚作品にも頻繁に登場する名物キャラもからんでめまぐるしく物語が展開します。

後半の宇宙編は、敷島博士が不思議な力を持つママンゴ星の石を地球の発展に役立てるべく、地球へ500万年ぶりに最接近したママンゴ星へ乗りつけて探索するお話です。ママンゴ星は実際には恐竜の支配する地球よりも遅れた星であることがわかるのですが、メンバー間の確執から敷島博士は植物人間(植物を改造して人間化した生物)とともにママンゴ星に取り残されることになってしまいます。

傑作と名高い本作ですが、現代から見るとやはり稚拙な印象は持ってしまいます。ストーリー展開も雑なところが目立つし、キャラのデッサンはお世辞にも優れているとは言えません。このようなテクニック的なものについては、当時の他のマンガとの比較の中で論じるべきものでしょうし、同時代の作品を目にする機会はほとんどありませんので、現代に残って読み継がれていること自体が驚異的なことなのだろうと思います。

タイトルとなった「ロストワールド」とは恐竜が支配するママンゴ星のことを指しています。これは本作の結末に初めて作中で言及され、また本作の結末を示唆に富んだものにする一因となっています。

本作の結末は、ママンゴ星の観測をしていた天文台のジュピター博士がママンゴ星に関しての観測結果を世間に発表するシーンです。観測の結果、ママンゴ星は地球の過去の姿(前世紀、ロストワールド)そのものであったことがわかったこと、そして初期の人間の姿が認められたことが発表されます。しかしその人間はロケットでママンゴ星へ渡り取り残された敷島博士らのことだったのです。

この結末はどう捉えるべきか、悩みます。敷島博士らは当初の目的を達せず、2度と地球に戻れない状況に陥りました。しかし、敷島博士らはママンゴ星のアダムとイブとして繁栄の礎になることが示唆されています。これは悲劇のようでありながら、ハッピーエンドのようでもあります。

また、敷島博士らの冒険を傍観していた人たちが外から見た結果だけで、事実とはまったく異なる自論を自分の手柄のように話す姿は何かの風刺でもあるように見えます。

一部には雑な展開もあり制作テクニックも発展途上でありながら、最終的に伏線をうまく回収し、味わい深いエンディングに持って行く力量は、さすがだなぁと感嘆しました。

ところで、本作で一番読んでて辛かったのは、敷島博士の同僚でママンゴ星にも同行しながら仲違いする豚藻博士の扱いでした。

アラフォー独身男子としては胸に響くものがありました。

『ロストワールド』は、『メトロポリス』『来るべき世界』と並んでSF長編三部作と呼ばれているそうです。他の二作もいずれ読んでみようと思います。

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