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2014年9月27日の木曽御嶽山の噴火を受けて、28日夜、火山噴火予知連絡会の記者会見がありました。NHKでは放送予定を変更して生中継がありましたので、私も偶然ですが視聴することができました。

御嶽山の噴火について、火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長は記者会見で「マグマ噴火と比べて今回のような水蒸気噴火を予知することは本来、非常に難しい。突発的に起こることが多く、事前に明確に把握することは困難で現在の学問の限界だ」と述べました。

出典:予知連 藤井会長「現在の学問の限界」 NHKニュース

全般的に納得度の高いお話だったと思います。水蒸気噴火のメカニズムを思えばマグマ噴火と違って突発的に起きるだろうことは想像に難くないし、その前兆を把握して完全に予知しろというのは無茶な話です。

「起こりやすい状態にあるか」を予知することと、「起こらないことが確かな状態であるか」を確認することはまったく別物であるし、後者はいわゆる悪魔の証明に近い話です。しかも将来の話であるだけ、噴火予知の方が難易度は高いでしょう。

問題は、絶対に安全が確約できない状態で、われわれはどう山と向き合っていかなければならないか、という話なんだと思います。

山に登れば数々の危険があります。火山であれば噴火することもあるだろうし、噴火せずとも有毒ガスがいつの間にか発生することもあります。火山以外でも強烈な寒気に襲われて低体温で遭難することもあります。足場が不安定で滑落することだってあります。冬山なら雪崩もあれば吹雪でホワイトアウトすることもあります。一番の危険は実は道迷いだったりします。道迷いは遭難原因の不動の一位であり、季節や山の状態によらずに発生するものです。

だから登山者は出来る限りの対処をします。夏山でもダウンなどの防寒着や手袋は必ず持参します。日帰りでもヘッドランプを持参します。食料は1-2日分は多めに準備します。どんな山でもヘルメットを持って行く人だっています。山岳保険も忘れてはいけません。自然と対峙する以上、絶対に安全なんてありません。ならば想定できる危険を可能な範囲で備えるしかないでしょう。私は登山の経験年数が増えるごとに、新たな危険を認識するせいで、持って行く荷物が増えて行きます。

御嶽山などはさらに特殊な事情のある山です。この山は古くから山岳信仰の対象となっていて御嶽講の中心地です。この山は10を超える山小屋を擁しており、一つの山における収容人数で言うと3000mを超える高山では随一です。御嶽山は登山コースとしてはさほど魅力のある山ではありません。かなり高いところまで車両で入ることができ、簡単に日帰り登山ができます。独立峰なので縦走もできないし、テント泊もできる場所はありません。誤解を恐れずに言えば、初心者がお手軽に楽しむ入門編です。それでも宿泊施設が完備されているのは、御嶽講の集団登山を受け入れるためです。

そもそもなぜ御嶽山が山岳信仰の対象となったかと言えば、根本には「火山だったから」というのがあります。日本の山岳信仰は噴火や鳴動に対する恐れが主因と解説されることが多いです。日本三霊山というのがあって、富士山、立山、白山なんですが、いずれも古い火山です。

御嶽山は、火山であるがために信仰を集め、修験者や信者の集団登山を引き寄せてきた山です。これに対して100%の安全が確約できないからと国家権力が入山を規制するのは非常に違和感があります。ややもすれば憲法の保障する信教の自由にも反することで人権問題にも繋がりかねません。規制をするにしても最低限の緊急時に制限すべきです。

私が政治や行政に期待するのは、事前規制は最低限にして、その代わり最大限の情報開示をしてもらうことです。誤解の元になる噴火警戒レベルのような表現は廃止した方がよいと思います。現在山中で何が起きているのかを提示し、山に入る人間は自己責任で入るべき。不幸にして山中で遭難することがあったら遺体の回収費用は自分で払うべき。そのために各種山岳保険が用意されているのだから。

それが受け入れられない人は山に近付かなければいいのです。山に登らなくたって死にはしません。より安全な山は他にもいくらでもあるのです。

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