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理化学研究所がSTAP細胞にかかる国際特許出願を各国移行したことを発表していました。

 理化学研究所などが国際出願していたSTAP細胞に関する特許について、理研が出願を取り下げず、特許取得に必要な「国内移行」という手続きを複数の国でしたことが24日、分かった。STAP細胞作製を報告した論文2本は既に撤回され、研究が白紙に戻ったにもかかわらず特許取得手続きを継続する理由について、理研は「(STAP細胞の真偽を確かめる)検証実験は継続中で、完全に否定されたとはとらえていない」と説明した。

出典:STAP特許:理研、手続き進める…「存在否定できぬ」 – 毎日新聞

件の国際特許出願は(WO2013163296) GENERATING PLURIPOTENT CELLS DE NOVOですね。さすがにまだNational Phaseタブにはデータが載っていません。

国内移行手続きを行わないと出願を取り下げたことと同様の効果が生じます。検証実験の結果STAP細胞が存在することがわかった場合には、再度の出願が必要になります。ところが、国際特許出願はすでに公開されているので、新たな出願はこの国際特許出願の公開を理由に新規性がないと判断される可能性が高いです。

また、特許の審査は書面のみですから明細書の記載に筋が通っていれば実際には不可能な手順であっても特許されることはあり得ます。その辺りを総合的に判断して国内移行手続きを行ったのであろうと思います。

科学者倫理としてどうなのかは置いておいて、ビジネス上の判断としては極めて真っ当な判断であろうと思います。もし私が理研の代理人だったら「とりあえず移行だけはしておいた方がいい」とアドバイスします。

とは言え、発表論文はすでに取り下げられ、明細書の記載に論文と同様の不備があることは指摘されており、何しろ理研自身の検証実験でさえ芳しくない状況で、この出願が特許される可能性は極めて低いでしょう。そこで、この出願がどのような理由で拒絶されるのか、パターン分けして考えてみました。

論文の記載された手順でSTAP細胞の存在が証明された場合

可能性は極めて低いとは思いますが、文句なく特許されるでしょう。

画像の捏造が指摘されていますが、特許審査では実験結果はあくまでも効果の主張を補足する程度の扱いにしかなりませんから、特に問題にはならないと思います。

そもそも図面における画像の修正などは特許実務では頻繁に行われています。主に特許庁の電子出願システムの問題できれいに取り込めない場合が多いのです。

論文の記載とは異なる手順でSTAP細胞の存在が証明された場合

理研としてはこの辺りを期待したいところだと思いますが、明細書の記載が正しくないわけですから実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)で拒絶されることになります。

4  前項第三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。
一  経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。

特許法第36条第4項第1号

一般的には明細書の記載が不十分な場合に、「確かに明細書には詳しく書いていないが、そんなことはこの分野の技術者なら誰でも知ってることだ」という主張をして反論します。

今回の場合は記載が誤っていることが明確なので反論するのは難しいと思います。ただし、誤記だと強弁して正しい手順に直せるレベルであれば特許されることもありそうです。

STAP細胞が存在しないという結論になった場合

最も可能性が高いのがこれでしょう。

一年間の検証実験の結果STAP細胞を実現することができなかった場合、発明自体が存在しなかったことになります。この場合も明細書の記載が正しくないわけですから実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)となる可能性がありますが、その他にも発明未完成(特許法第29条第1項柱書)として拒絶される可能性があります。

第二十九条  産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

特許法第29条第1項柱書

第二条  この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

特許法第2条第1項

出願した明細書に記載された発明が技術的に完成していないということは、出願人は「発明をした者」には当たらないため、特許を受けることもできない、というわけです。

実施可能要件違反と発明未完成の関係は微妙でして学説上も結論は出ていません。審査実務では、発明未完成で拒絶されると反論が非常に困難になるので、記載不備として反論の可能性を残すために実施可能要件違反で拒絶する場合が多いような話を聞いたことがあります。

STAP細胞の存在が確認できないが特許された場合

審査官なにやってんの、という話ですが。

特許査定が出た以上は正当に特許権は発生します。しかし明細書の記載が正しくないことに違いはないので実施可能要件違反(特許法第36条第4項第1号)もしくは発明未完成(特許法第29条第1項柱書)の無効理由が存在する不安定な状態となります。

理研が権利行使をしようとすれば相手は当然特許無効を主張してきますから何の役にも立たない権利です。もちろん検証実験がうまく行かなければさすがに理研も出願を取り下げるでしょうから、こうなる可能性はゼロに近いと思っています。

また、理研は間違いがあることを知って出願しているわけですから、詐欺の行為の罪(特許法第197条)で刑事罰を受ける可能性があります。

第百九十七条  詐欺の行為により特許、特許権の存続期間の延長登録又は審決を受けた者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。

特許法第197条第1項

詐欺行為の罪には両罰規定があるので、法人である理研には最大一億円の罰金が課せられる可能性があります。

第二百一条  法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して当該各号で定める罰金刑を、その人に対して各本条の罰金刑を科する。
一  第百九十六条、第百九十六条の二又は前条第一項 三億円以下の罰金刑
二  第百九十七条又は第百九十八条 一億円以下の罰金刑
特許法第201条第1項第2号

現在の状況を考えると、全般的に理研にとってはあまりメリットが大きくない判断だったと思いますが、国内移行をしないという判断をしたときに失うものが大き過ぎたということだと思います。どっちの罰ゲームの方が比較的ましか、みたいな状況なので、理研を責めるのも少し酷だとは思います。

検証実験の結果が出たら忘れずに特許出願の取り下げすることをお勧めします。

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