スポンサードリンク

書店の新刊コーナーでタイトルだけ見て買いました。

著者は80歳を超える現役の生理学者の方だそうです。私はこの分野にはまったく縁がないので存じ上げないのですが有名な方なのでしょうか。

本書はSTAP細胞に関する論文捏造問題の根底にはわが国の科学行政の歪みがあるという認識の下、科学技術研究にまつわる環境の問題点を指摘しています。

ネイチャーやサイエンスなどの学術誌が商業主義で運営されていて流行の分野の論文が優先的に掲載されること、研究者の業績評価に掲載誌のインパクトファクターが強く影響するため、流行の分野に科研費が集中し易い状況にあること、大学の独立行政法人化以降研究費の配分が偏りが生じていること、など、これらの環境が研究者がデータを捏造してでも業績を作ろうとする背景にあると喝破しています。

さすがに長年国際的な研究の第一線を張ってきたという現役の研究者ですから、科学行政や周辺の事情については現場の目線で非常によくわかりました。学術誌の現代事情などは実体験をふんだんに交えられており興味深いところでした。

また、理研の成り立ちや過去の大きな捏造事件、日本の過去の偉大な科学者の逸話などもまとまっていて本論とはあまり関係ない感じもありますが、話としては面白かったです。特に野口英世の捏造疑惑については断片的にしか聞いたことがなかったので非常に興味深いところでした。

全般的に興味深い内容ではあったのですが、個人的には非常に読むのがつらい本でもありました。本書の多くの箇所で著者自身の負の感情が端々に表れていて、あまり愉快な気持ちでは読めません。怨念と言ってもいいかもしれません。

何しろ文章が断定的で独善的なものの見方で支配されていて、一言で言えば「The 老害」という印象です。遠くから話を聞いている分には面白いけれど、少人数の場では近付きたくないタイプのご老人なんだろうな、という感じ。特に理研の野依理事長に対してほとばしる悪感情には辟易としました。

そう言えば最近この手の負の感情が溢れ出る本を読んで不愉快な思いをしたことがあったな、と思い出しました。その他個人的な体験も含めて言いますが、アカデミアの世界はもう少し人間性の教育に力を入れた方がいいような気がしますね。
『高学歴女子の貧困』大理奈穂子(著), 栗田隆子(著), 大野左紀子(著), 水月昭道(監修)
栗田隆子さんからご批判をいただいたのでお返事を

それはそれとして、アクの強い文体に拒否反応が出なければ、内容としては十分に面白い本だと思います。読んで損はしないのではないでしょうか。

LINEで送る
Pocket