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ハイスコアガールという漫画の中で描かれたゲームのキャラクターの著作権について漫画の出版元とゲームの開発元が争っている事件に関して、知財関係の学者・実務家の偉い人たちが共同で声明を出しておりました。

 月刊ビッグガンガンに掲載された漫画作品「ハイスコアガール」内でのゲームのキャラクターの利用について、著作権法違反を理由とする刑事告訴が行われ、家宅捜索や出版社の担当者・役員、漫画の著作者についての書類送検が行われている。
 出版社は、家宅捜索後「ハイスコアガール」の回収・販売停止・一時休載の措置をとるとともに、著作権侵害の事実がないことの確認を求め債務不存在確認の民事訴訟が提起されている状況にある。

 以下の理由から、本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、刑事手続が進められることに反対する。

(中略)

 しかし本件のように著作権侵害の成否が明らかではない事案について、強制捜査や公訴の提起等の刑事手続が進められることは、今後の漫画・アニメ・ゲーム・小説・映画等あらゆる表現活動に対して重大な委縮効果をもたらし、憲法の保障する表現の自由に抵触し、著作権法の目的である文化の発展を阻害することとなりかねない。従って、著作権侵害に係る刑事手続の運用、刑事罰の適用に対しては謙抑的、慎重であることが強く求められる。

出典:「ハイスコアガール」事件について ―著作権と刑事手続に関する声明―

私は件の「ハイスコアガール」という漫画を読んだことがないので侵害の成否については判断のしようもなく、また人並み以上にゲームに思い入れがあるわけでもありません。そのため、著作権事件は興味の範囲ではありますが、なんとなく報道される事実を眺めていただけでした。

どうやらスクエアエニックス側がライセンス交渉において杜撰な対応を行った末の紛争というのは事実のようですが、だからと言って民事訴訟を提起する手段がある中で、いきなり刑事告訴に踏み切ったSNKプレイモアの意図するところはよくわからないし、地雷みたいな会社だなという印象は持っていました。

今回の声明については、妙に高尚な理由付けなど引っ掛かる部分はありますが、著作権者には民事と刑事と両方の救済手段が与えられている中で、可能な限り民事で決着する方がよいだろうという点で個人的には賛同します。

詳しい事情はわかりませんが、どうも漫画で描かれているのは古いゲームのキャラクターばかりのようで、それが出版されたところでゲームの売り上げが落ちるわけでもないし、実質的な被害ってあんまりないんじゃないかという気がします。せいぜい取れるはずだったライセンス料が取れないというくらいで、それこそ民事で損害賠償請求すればよい話のように思います。

漫画の中ではいろんなメーカーの多くのゲームが描かれているようですから、一社当たりの取り分なんて大した額にはならないのでしょう。たぶんSNKプレイモアもそれを承知の上で報復的に刑事告訴という手段を選んだということなんだと思います。

そもそも刑事告訴が認められている趣旨は、民事訴訟では十分な権利行使ができない状況における最終的な救済手段ということなんだと思います。民事上の責任を負わない者に対してまで刑事罰が科されるのは避けるべきで、民事と刑事が並行した場合に民事を優先した方が経済的にも好ましいと言えると思います。

もちろん権利者にはどのような救済を求めるか自己が決定できる権利がありますから、著作権法により与えられた権利を行使して刑事告訴したこと自体は非難されることではないでしょう。また、刑事告訴された以上は警察が書類送検するのは致し方のないことでしょう。

結局、何となく今の状況は放置しておくと悪い未来しか見えないな、という思いがありながら、一方で現行の法制度では食い止めることができないのはわかっているので、考え得る最大限のやり方として名のある学者・実務家が連名で声明を打ってみた、ということなんだろうと思います。とても苦しいところです。

率直に言えば、今回の声明で何かが変わることはないだろうと感じています。しかし、こういうときに反響が見えること自体がよりよい制度を築く礎になるはずだと考えますので、ここに個人的な意見を記しておくものであります。

ご静聴ありがとうございました。

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