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オレオレ詐欺の帝王と呼ばれた男性を中心にシステム詐欺の裏側を取材した一冊です。なかなか面白かったです。

著者は反社会勢力取材を得意とするノンフィクション作家、溝口敦氏。本書は溝口氏がかつて「オレオレ詐欺の帝王」と呼ばれた本藤彰(仮名)にした取材内容を中心に、近年のシステム詐欺の手口を明らかにしています。

本藤は30代後半なので私と同年代です。大学時代にはイベントサークルで荒稼ぎをし、裏社会との繋がりを持ちます。彼は普通に大手広告代理店へ就職しますが、その後に発生したスーフリ事件で関与を疑われ関連会社へ左遷されます。結局、本藤は失意のうちに退職し、ヤミ金業を始めます。

本藤は組長が逮捕され弱体化していた暴力団のヤミ金組織を吸収し、急激に組織を大きくしていきます。この組織では出世するほど右肩上がりで給料が上がって行ったので、メンバーは売上を捻りだすために、振り込め詐欺に手を染めます。

本書で描かれた給料相場には目をみはります。

 給与月額は新入でヒラの「店員」になると、四〇万円からスタートした。
 店員の上が「番頭」で、役回りは店長補佐。月給は二〇〇万~三〇〇万円になる。
 「店長」の月給は七〇〇万~八〇〇万円。
 その上が「統括」といい、月給一〇〇〇万円が基本で、それに統括する店舗数で割り増しがついた。
 その上が「総括」で月給が五〇〇〇万円。
 さらに上が「社長」になり、この月給が一億五〇〇〇万円~二億円。
 その上が三人から成る側近の「幹部」で、月給二憶~三億円。
 その上が本藤本人で、月収が最低でも二憶~三億だった。

出典:本書『第四章 ヤミ金からシステム詐欺に』

自分の今の給料だと新入レベルなんですね。まじめに働くのがアホらしくなってきます。

このような巨額を荒稼ぎしても、詐欺で儲けた金なので土地や株などの足が付くものは買えないし、税務署の目もあるので銀行に預けることもできず、闇カジノやキャバクラなど夜の町で豪遊するくらいしか使い道がありません。

また、揉め事や闇討ちなどで身の危険が迫ることがあっても、まともな病院や警察に頼ることもできず、自力で解決するしかありません。結局、本藤はトラブルから銃撃されて入退院を繰り返し、潮時を感じて詐欺業界から身を引きます。

個人的にはオレオレ詐欺の細かい手口がどのように発生して進歩してきたのかなどに興味の中心があったのですが、本書ではヤミ金の現場で自然発生的に始まったこととして、あまり詳しい記述はありませんでした。また、この本藤という男性がどのようにして巨大な組織を作り上げていったのかも、タイミングよく弱体化していた巨大組織を吸収できたことくらいしか読み取れませんでした。その辺は少し残念でした。

ところで、本藤彰(仮名)はネット上では工藤明生という名前で通っていて、架空の人物であると実しやかに囁かれているようです。

「イベントサークル主催者あがりの闇金融・振り込め詐欺の帝王」として某巨大匿名掲示板や各種SNSを中心にその名が吹聴されてきた架空の人物。1976年(昭和51年)生、九州出身、明治大学卒業、電通中途退社、指定暴力団山口組系山健組の下部団体「健國会」の企業舎弟、“歌舞伎町五人衆”の一員で一条葵のパトロン、通称“あっくん”、というのが基本設定とされているものの、場合に応じた別のパターンも散見される。

出典:工藤明生とは – はてなキーワード

なんだか色々と情報が錯綜しているみたいですが、さすがに何もないところから本一冊書くような話をでっち上げるのも大変でしょうから、これに近い人物が実際に存在しているということは間違いないのだろうと思います。

本書ではシステム詐欺は格差社会が進展することで必然的に生まれたし、今後も増加していくだろうと述べられています。確かに学歴がなく何の経験がなくてもこれだけの収入が得られるのであれば、流れてしまう若者も多そうです。

でも、本書で描かれる詐欺師たちも結局誰も幸せにはなっていないように見えます。大金を手にしてもドブに流すように夜の町で豪遊するくらいしか使えないのでは当然です。正直いうと途中で少し心魅かれるものはあったのですが、薄給であってもやはり地道にコツコツ働くのが最善なのだと再認識しました。

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  • TN

    工藤明生は実在してますよ。
    繁華街にすら出たことがないネットオタクと言われてしまいますよw
    何度も何度も言われては架空人物と連呼してる連中は近づきもできないからです。

    • admin

      最後の文が何を言いたいのかよくわからないのですが、歌舞伎町にはよく行くので今度聞いてみます。

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