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ふと書店で目に入った恐怖心を煽る帯書きが脳裏から離れなくなりました。38歳独身男性です。

独り暮らし高齢者は、2015年には約600万人。
「最期は家で独りで」の時代が始まる。

出典:本書帯書き

私は現在実家で母と二人暮らしですが、父を亡くしたときに私が実家に戻っていなければ、母は独り暮らしになっていました。母方の祖母も近所の叔父が毎晩世話をしているとは言え、祖父を亡くしてからは独り暮らしをしています。独り暮らし高齢者は極めて身近な問題です。

本書は、高齢者福祉の現場で働いた後に研究者となった著者が、自らの現場経験と研究での知見を元に孤独死の現状をレポートする書です。

本書の一番の見所は、孤独死があったときにどのようにそれが発見され、処理されていくのか、また、孤独死を防ぐためにどのようなプレイヤーがどのような役割を演じているのか、などの実情を綴っているところだと思います。私の身近な人はいずれも自宅で亡くなり、すぐに発見されていますので、このような情報に触れることはありませんでした。

特に圧巻は孤独死があった部屋の片付けについて遺品整理業者に聞いた内容です。

 特に、死後2週間から3週間経って発見されたケースでは、蛆虫がハエに成長しており、後片付けが非常に大変になる。
 このようなケースでは、もちろん遺体を警察が搬送した後で作業にとりかかるのだが、ハエは窓にむらがったままである。そのため、1日目は、殺虫剤などを焚いてハエを退治し、2日目から本格的な作業に取りかかるのだという。部屋の中でハエを退治せず、窓を開けて外に逃がしてしまうと、近所迷惑になるためだ。
 2日目の作業では、まず、濃度の高い消毒液を入れた噴霧器で部屋中を消毒する。これで一時的に異臭は消えるものの、次の日には、また悪臭がしてしまう。基本的に消臭は不可能なのだが、作業にあたって障害となるため、一時的にでも消臭するのだという。

(中略)

 床を張り替えるのは、次のような理由だ。
 作業において厄介なことのひとつに、遺体からにじみ出る脂の処理がある。この脂はいくら拭いても落ちることがなく、床にこびりついたままだ。へらを使っても削り取ることができず、床の表面を削らなくてはならない。結果的に、すべての床を張り替えることになってしまうのである。

出典:本書第一版83-84頁

孤独死の文脈では未婚者の急増が特に注目されていますけれど、離別死別による独り暮らしは従来からよくある話なわけで、未婚化や少子化よりも核家族化の影響の方が大きいと考えた方がよさそうです。

孤独死に近いものとして、高齢者や障害者などの要介護者と介護者の二人暮らしから、何らかの理由で介護者が急死してしまい、要介護者もなす術なく亡くなるケースも増えているようです。本書ではこれらを含めて、「孤独死」ではなく「孤立死」と呼ぶべきだと主張しています。

孤独死を防ぐためには自治会や民生委員など近所の見回りが必須と考えられていますが、そのような接触を嫌がる高齢者が特に男性に多く、問題を難しくしている面もあります。新聞や牛乳など配達サービスを見回りに活用している自治体もあるようです。

本書を読んでいて思ったのは、自らが孤独死しないためには周囲との小まめな接触が重要になるということです。私は基本的に人間嫌いですので、独りになったときに近所と良好な関係を保てる自信がありません。しかしながら、本書で描かれる孤独死の実態を知ると自ら積極的に孤独死を避けるためのアクションをしなければいけないと感じます。この先どのような環境に陥るかわかりませんが、まずは多くの事例に触れて備えを固めるしかないのだろうと思いました。

できるだけ他人に迷惑をかけないように生きていきたいと思っていて、それはなかなかうまくいかないものですが、死ぬときくらいは迷惑をかけずにきれいに死んでいきたいものです。

このあたりもおすすめ

『ルポ 介護独身』山村基毅(著)
『崩壊する介護現場』中村淳彦(著)
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