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キユーピー株式会社が「銃砲,銃砲弾,火薬,爆薬,火工品及びその補助器具,戦車」などを指定商品とする商標登録出願をしていることが判明し話題になっていました。

これに対し、twitterでキユーピーの公式を名乗るアカウント注)が、このような区分の商品にキューピーのイラストを勝手に使われることを阻止するための防衛的な出願であると説明していました。
注) 許諾なく公式を自称する偽物だそうです(参考)。

近年は中東やアフリカなどの過激派組織が民生品を軍事的に使用するケースが増えていて、企業のブランド管理における一つの関心事になっていると聞きます。

例えば、過激派組織IS=Islamic Stateがトヨタのトラックを使用している場面が報道され、トヨタは彼らと繋がっているのではないかと穿った見方をされたことがありました。

toyota
source: https://escshift.wordpress.com/tag/isis/

キユーピーとトヨタでは状況が異なりますけれど、このように著名なブランドがまったく無関係な場面で、かつ本業のイメージを損なう形で使用されてしまうことで、ブランド戦略に悪影響を与えることが実際に起こっているわけです。そのため他社による意図しない仕様をできるだけ防止するために本来使用する予定のない商品でも押さえておきたいというニーズは年々高まっています。

注意しないといけないのは、日本の商標制度は使用主義を前提にしており、原則として商標登録されても長期間使用しないと取消理由になります。そうした場合に備えて使用を前提としない防護標章登録制度というものも用意されています。

今回のキユーピーの商標登録出願も防護標章登録ではないかという説が実しやかに流れていましたが(参考)、私はいくつかの理由から違うのではないかと考えています。

第一に、防護標章登録出願をするには、同一の商標についてすでに登録されている必要があります。

(防護標章登録の要件)
第六十四条  商標権者は、商品に係る登録商標が自己の業務に係る指定商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている場合において、その登録商標に係る指定商品及びこれに類似する商品以外の商品又は指定商品に類似する役務以外の役務について他人が登録商標の使用をすることによりその商品又は役務と自己の業務に係る指定商品とが混同を生ずるおそれがあるときは、そのおそれがある商品又は役務について、その登録商標と同一の標章についての防護標章登録を受けることができる。

ざっとキユーピーの登録商標を眺めてみましたが、類似する商標は登録されているものの、同一の図柄で登録されている商標は存在しないようです。

第二に、すでにキユーピーは類似の図柄について同じ指定商品の登録商標を持っていることです。イラスト下の英文字が今回の出願では小文字の「kewpie」でしたが、大文字の「KEWPIE」で登録されています。

(111) 【登録番号】 第4275751号
(151) 【登録日】 平成11年(1999)5月21日
(210) 【出願番号】 商願平10-13703
(220) 【出願日】 平成10年(1998)2月20日
(732) 【権利者】
    【氏名又は名称】 キユーピー株式会社
(511) (512) 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
13 銃砲,銃砲弾,火薬,爆薬,火工品及びその補助器具,戦車

kewpie

これらを総合して考えると、従来からキユーピーは様々なバリエーションについて(銃砲等を含めて)広範囲の指定商品で積極的に商標登録を行っており、今回は英文字を小文字に変更したバージョンを従来と同様の指定商品について押さえに来ているのではないか、と推測できます。とするならば、従来は通常の商標で登録しているので今回も通常の商標で出願しているのであろうと考えられます。

不使用で取り消されるリスクがあるのに何で通常の商標登録出願にしたんだろうか、という疑問は残りますけれど、一番の理由は防護標章登録には登録商標の存在が要件となるためでしょう。

新しいデザインの商標について使用したい商品と使用しないけど押さえたい商品が両方ある場合、原則通りだと使用したい商品について通常の商標登録出願をし、登録されてから防護標章登録出願をしなければいけません。つまり使用したい商品について登録されるまで使用したい商品については出願できず保護することができません。一方、不使用取消は3年間の不使用期間が要件なので逆に言えば3年間は登録を維持できます。

また、不使用取消審判を起こす方も費用や時間がかかるのでよほど本気でなければ取消に来ないだろうし、そうなったときには商標登録は捨てて改めて防護標章登録出願しても遅くありません。といった観点で考えると防護標章ではなく通常の商標で出願することにも合理性があるように思えます。

キユーピーに知り合いはいませんが、機会があったら詳しく聞いてみたいです。

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