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サントリーがアサヒビールのノンアルコールビール『ドライゼロ』が自社の持つ特許を侵害しているとして訴訟を提起したとのことです。

日本ではここ数年、即席生麺とか切り餅とか食品業界の特許紛争が多いように感じますが何が起きているんでしょうか。

 アサヒビールのノンアルコールビール「ドライゼロ」について、サントリーホールディングスが「特許権を侵害された」として製造や販売の差し止めを求める民事訴訟を東京地裁に起こしたことが分かった。アサヒは「サントリーの特許権は無効」としており、同地裁で10日午後から始まる裁判で争う構えだ。

 訴えでは、サントリーは「糖質やエキス分などを一定の範囲にしたノンアルコールビール」の特許権を2013年10月に取得した。この特許にかかわる技術は同社の「オールフリー」に使っているとみられる。

出典:「ノンアルビールで特許侵害」サントリーがアサヒを提訴:朝日新聞デジタル

問題の特許はどんなものなのかを調べてみました。サントリーの特許で2013年10月に登録されたものは3件のみで、ビール関連のものは1件でした。特許第5382754号、タイトルは「pHを調整した低エキス分のビールテイスト飲料」です。

請求項の数は全部で63です。請求項1はこのようになっています。

【請求項1】
エキス分の総量が0.5重量%以上2.0重量%以下であるビールテイスト飲料であって、pHが3.0以上4.5以下であり、糖質の含量が0.5g/100ml以下である、前記飲料。

出典:特許第5382754号

なお、2014年6月にには訂正審判を請求しています。

1.請求項1~21からなる一群の請求項に係る訂正
(1)訂正事項1
 請求項1及び4の「ビールテイスト飲料」を、「ノンアルコールのビールテイスト飲料」に訂正する。

出典:訂正2014-390090

食品分野は専門外なので相場観がわからないのですが、かなり権利範囲が広い記載になっているようで、むしろよくこれで登録されたなぁとすら思います。報道によればアサヒビール側は本件特許が無効と主張しているようですから、逆に言えば「ドライゼロ」が権利範囲に含まれることは認めているということでしょう。

訂正審判を経ている権利ですから、審査官だけでなく審判官の判断も経ており、通常よりも強い特許であると推定できます。どこまで無効になれば権利範囲から外れると考えているのかは不明ですが、すべて無効にするというのはかなり厳しいのではないかという印象を受けました。

サントリーとアサヒが揉めても一番得するのはキリンでしょうから、本件はあまり長期化せずに和解するのではないかと思わなくもありません。一方で、本業のビールの消費量が右肩下がりの状況で、ノンアルコールビールで先行するサントリーが、スーパードライという圧倒的なブランド力を誇るアサヒビールの追い上げに対して簡単に引くのだろうか、という疑念もあります。

おそらくアサヒビールは訴訟提起を受けてすぐに無効審判請求するでしょうし、サントリー特許の無効判断ですべてが決する流れになりますので、あまり時間を取らずに結論が出るだろうと思います。

特許庁がどのような判断をするのか注目してウォッチしていきたいと思います。

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  • marco

    判決文が公開されてますね。

    読んでみましたが、件の出願は特許査定こそ得られているものの、無効とされても仕方のない程度の発明(むしろ審査官の責任を問うべき?)ではないかと感じました。

    出願時のクレームには自社製品が明らかに含まれています。これは弁理士はともかく、当業者であるサントリーの知財担当者であれば普通なら気づくはずの欠陥です。思うに、出願前の社内(+特許事務所)の検討が不十分だった結果、見た目の権利範囲は広いけれど使い道のない特許になってしまっていたのではないでしょうか。

    • QJV97FCr

      marcoさん、コメントありがとうございます。
      お返事が遅くなって申し訳ありませんでした。

      判決文、私も確認してみました。
      素人目に見ても、判決文から窺われる従来製品や技術常識を考えると、無効にされるのは仕方ない感じがします。
      現在の審査実務だとこれくらいの差分があれば進歩性が認められるのはよくありますので、審査官個人のミスとまでは言えないかなとは思います。特許庁全体としての進歩性のハードルが低すぎるという問題はあるかもしれませんが。

      企業の知財担当の人はとにかく一つの特許で広い権利範囲を取りたがる傾向がありますね。権利化担当だとそれくらいしか実績を上げる指標がなさそうなので気持ちはわかるのですが、最近の特許訴訟ではとにかく無効の抗弁で特許権者敗訴が多くて、こういう無理に広いクレームを目指す風潮は改めた方がいいんじゃないかと思わなくもありません。

      サントリーは控訴したようですが、どんな戦略を考えているのか興味は尽きません。