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調剤薬局で本来は薬剤師資格がなければできない調剤行為を資格のない事務員に行わせることが横行しているという報道がありました。

 チェーン薬局で薬剤師資格のない事務員が患者の薬を作っていた実態が明らかになった。薬を処方される患者への背信行為ともいえる無資格調剤。発覚することはほとんどないが、この薬局にとどまることではないようだ。

出典:薬剤師「グレーだけど…」 無資格で調剤、事務員を説得:朝日新聞デジタル

薬剤師は「士」業とは言わないでしょうけれど、士業の有資格者が無資格者に名義を貸して独占業務を行わせる、いわゆる名義貸しが問題になる場合はよく耳にします。

私のいる特許業界でも他人事ではなく、弁理士が事務所員(一般に特許技術者と呼ばれる)に特許明細書等の作成等、弁理士のみが作成できると法定されている業務をさせることはごくごく通常に行われていることです。

ずいぶん前になりますが、この点について問題提起をして物議を醸したブログがありました。簡単に言うと、弁理士試験に合格して特許事務所に就職した人が短期間で解雇され、資格のない特許技術者が当然のように明細書作成を行ている業界慣行に納得がいかないと憤慨していたのでした。要するに、クビを切るなら資格のない人の方が先じゃないか、というわけです。

なぜ、全士業の中で弁理士業界だけ無資格者が明細書を作成して良いことになっているんだ???

確かに「自分の力を高めて無資格者に勝てば良いだけ。」という意見もあるでしょう。
しかし、それとこれとは話が別です。
自分の実力を高めるのは当たり前。
私が言いたいのは、
「無資格者が、弁護士のように法律相談したり司法書士のように登記手続きしてたら、世の中おかしくなりませんか?」
ということです。

弁理士法でも無資格者が明細書を作成してはいけないことになっている(弁理士法第75条)。
なのに、所長弁理士が名前を貸している状態で無資格者が明細書を作成した場合は法律違反でなく、
所長弁理士が名前を貸していない状態で無資格者が明細書を作成した場合は法律違反となる、特許業界の慣行はおかしいですよね?

出典:やはり特許業界の慣行「名義貸し」はおかしい – 弁理士未登録者の会

ブログ主の方の指摘のとおり、弁理士法75条には、弁理士資格のない人が他人のために特許庁に対する手続きに用いる書類の作成をしていはいけないことが規定されています。

(弁理士又は特許業務法人でない者の業務の制限)
第七十五条  弁理士又は特許業務法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続若しくは特許、実用新案、意匠若しくは商標に関する異議申立て若しくは裁定に関する経済産業大臣に対する手続についての代理(特許料の納付手続についての代理、特許原簿への登録の申請手続についての代理その他の政令で定めるものを除く。)又はこれらの手続に係る事項に関する鑑定若しくは政令で定める書類若しくは電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成を業とすることができない。

出典:弁理士法

一応業界的には、弁理士の管理監督の下、無資格者が書類を作成することは、弁理士業務の補助という名目で容認されると考えるのが通常のようです。要するに、無資格者は弁理士の手足として弁理士の指示に従って必要な書類の作成を行っているという建前になっているということです。

私も個人的にはこの考え方で問題ないと思っています。ちゃんと弁理士が特許技術者の仕事を管理して、問題が起きたときに責任をもって対処するのであれば、書類の作成にあたって実際に手を動かしたかどうかはあまり重要なことではないと思います。

冒頭の薬剤師の場合も同じで、薬剤師が事務員に適切に指示を出してその結果に対してしっかりチェックをするなど責任を取れる状況で行っているのであれば、特段問題にすることはないのではないかと思います。ただ、調剤行為は人体に影響を及ぼす可能性が高い(少なくとも書類の作成に較べたら)ことを思うと、実質的に確実に管理監督ができるのかどうか、というのは難しいところだと思います。監督官庁がある程度の指針を示すのが正しい在り方なのではないかと思います。

ただし、冒頭の記事でも薬剤師と事務員で同じような業務に従事しながら大きく賃金に差がある実態があることが示唆されていました。特許業界でも事務所の経営方針次第ですが、同じように仕事をしながら有資格者と無資格者で賃金に差があることは往々にしてあるようです。同一労働同一賃金の考え方からは好ましい状況ではないと思うので、その辺は改善されることを願っています。

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