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横山光輝の『項羽と劉邦』を読了しました。

横山『三国志』は子どもの頃から好きで、通しで片手で余るくらいは読んでると思うのですが、『項羽と劉邦』は今まで未読でした。

歴史的な位置付けで言うと、秦の始皇帝没後に秦が滅亡するところから楚と漢が覇を競った楚漢戦争が漢の勝利により終結するところまでを描いています。項羽は楚王、劉邦は漢王です。秦は始皇帝により中国全土統一を果たしますが、始皇帝没後に二世皇帝は高官に牛耳られて暴政を布きます。これに対して楚を中心とする秦討伐軍が起こり、項羽の活躍により秦は滅亡します。項羽はこのときは楚の臣下の一人でしたが、楚王を殺害して自ら西楚の覇王を名乗ります。劉邦は秦討伐軍に参加し項羽より先に漢中を落とすなど軍功をあげますが、項羽により蜀の僻地に追いやられます。

項羽は秦の敗残兵20万を生き埋めにしたり、始皇帝の墳墓を暴くなど残虐の限りを尽くしますが、圧倒的な武力をもって勢力を広げます。一方、項羽は軍師張良の奔走により大元帥韓信を得、軍備を整えて再び中央へ進出します。その後は漢と楚は一進一退の攻防を繰り広げますが、一族のみを厚遇し周囲の助言も聞かない項羽に優秀な人材は離れていき、逆に部下の提言は素直に聞き入れ惜しみなく功に報いる劉邦の下には人材が集まり、最終的には漢に追い詰められて楚は滅亡します。

三国志の英雄たち(曹操や劉備)なんかと比較すると、項羽も劉邦も意識が低くてとても人間臭く描かれています。一方で戦場の描写を見ると項羽や韓信の強さは圧倒的でちょっと現実味がありません。2200年前の故事なのでどこまで事実かというのはたぶん考えても仕方のないことでありまして、むしろ当時の人間たちが現代の私たちと大して違わない人間であるということが感じられるくらいに生き生きと描き切った横山光輝先生の力量に感嘆するばかりでした。

ところで本作ではこの時代の故事についても多く触れられています。私は教養がないもので知らないことだらけだったのですが、例えば、「馬鹿」とか「国士無双」とか「背水の陣」なんていうのは、この時代の故事だったようです。さすがに「四面楚歌」くらいは知ってたのですが、意味合いは少し違って覚えていたもので少しだけ賢くなった気がします。(私は、項羽が漢軍に囲まれたときに、本当に漢に降った楚の兵士が楚国の歌を歌っているのを聞いて、人心が離れてしまったことに初めて気づいて後悔する、そんな話かと思っていました。)

《楚の項羽が漢の高祖に敗れて、垓下(がいか)で包囲されたとき、夜更けに四面の漢軍が盛んに楚の歌をうたうのを聞き、楚の民がすでに漢に降伏したと思い絶望したという、「史記」項羽本紀の故事から》敵に囲まれて孤立し、助けがないこと。周囲の者が反対者ばかりであること。

出典:四面楚歌(シメンソカ)とは – コトバンク

そんな感じで取りとめもない感じになってしまいましたが、結局何が言いたかったかというと、話の流れはわかりやすく登場人物たちも人間臭くて非常に面白かったと言うことです。全編通すとそれなりの分量がありますが、一度は読んでおいて損はないと思いました。

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