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安保関連法案の衆院通過に関して、ちょっと不思議なテキストを目にしました。

国民から支持を受ける「革命」に対し、国民を置き去りにした状態で法秩序の連続性を破壊する行為を、法学的には「クーデター」と呼ぶのだと、石川氏は言う。

出典:VIDEO NEWSあれは安倍政権によるクーデターだった »

石川氏は東京大学法学部教授だそうです。

石川健治いしかわ けんじ
東京大学法学部教授
1962年福島県生まれ。85年東京大学法学部卒業。東京都立大学法学部助教授、同教授などを経て2003年より現職。著書に『自由と特権の距離・カール・シュミット「制度体保障」論・再考』、共編著に『学問/政治/憲法・連環と緊張』など。

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クーデターが「国民を置き去りにした状態で法秩序の連続性を破壊する行為」という定義は初耳でしたので、そのような定義が少なくとも法学分野で使われているという事実があるのか、確認してみました。

だいぶ古い版ですが、うちに転がっていた『法律学小辞典』を引いてみました。

クーデター
政治権力の保持者又は権力階級に属する者が,自らの支配を強化するためあるいは権力奪取のために,非合法的な武力の行使を行うこと。体制の基本的な原理が覆される革命と区別される。

出典:法律学小辞典、有斐閣、新版第1刷、234頁

石川氏の定義とはだいぶ異なるようです。どちらかと言うと権力階級が武力行使により入れ替わることであって、法秩序はむしろ連続性を維持しているものと理解できます。

手元には他にクーデターの定義を記してある本はなかったので、国語辞典も確認してみました。

既存の支配勢力の一部が非合法的な武力行使によって政権を奪うこと。支配階級内部での権力移動であり、体制そのものの変革を目的とする革命と区別する。

出典:デジタル大辞泉

既存の政治体制を構成する一部の勢力が,権力の全面的掌握または権力の拡大のために,非合法的に武力を行使すること。国家権力が一つの階級から他の階級に移行する革命とは区別される。

出典:大辞林第三版

やはり支配層が武力行使により入れ替わることを示していて、法秩序としては変化がないものと理解できます。まして国民の支持などはこの際まったく関係ないようです。国民が置き去りであろうが、熱狂的に支持していようが、武力行使により支配階層が交代すれば、それはクーデターと呼ばれるようです。

結論から言って、クーデターを石川氏の言う定義とする根拠は見つかりませんでした。

私は今回の安保関連法案の審議過程はあまりにも問題が多かったと思っています。国会で召集した有識者が違憲で見解を一つにする法案であり、直近の選挙の争点にもなっていなかったものですから。世論調査で国民の8割が説明不足と考える法案を今国会で強引に成立させる意義は大きくないと思います。

しかしながら、だからと言って、用語本来の定義をねじまげてまで(自分たちにとって)聞こえのいいレッテルを貼って批判する手法はそれ以上に下劣な行為だと思います。しかもそれがわが国の最高学府の教授が恥ずかしげもなく行っている事実に愕然とします。

私はいつも思うのですが、物事の批判は正しいやり方で行わなければ力を持ちません。明らかな嘘をついて国民を扇動したり、個人的な感情を前面に出していては、本人の自己満足で終わってしまいます。このような言説は率直に言って逆効果です。家にこもってチラシの裏にでも書いてればいいのに。そう思いました。

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