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父が他界してから仏教に興味を持って少しずつ関連書を読んでいます。今までは主に浄土信仰周辺を漁ってきたのですが、やはり原点は重要であろうと思い至り、手にしたのが本書でした。

著者は著名な仏教研究家である中村元氏です。本書は中村氏がNHKのテレビ・ラジオ等で担当した講義をまとめて再編したものです。当初は7冊組のシリーズで刊行されましたが、そのうち1,2巻をまとめて文庫化したものだそうです。

本書の構成は、数々ある原始仏典の中から重要なエピソードを取り上げて、「釈尊の生涯」と「人生の指針」とに組み立てるというものになっています。原始仏典としては『スッタニパータ』『サンユッタ・ニカーヤ』『大パリニッバーナ経』『テーラガーター』『テーリーガーター』『ダンマパダ』『シンガーラへの教え』『岩石詔勅』『ミリンダ王の問い』が挙がっています。

「釈尊の生涯」は文字通り、ブッタ=ゴータマ・シッダッタ(本書の記載)の人生を追うものです。私はかつて手塚治虫『ブッダ』を読んだことがありますので、大まかな流れは把握していましたが、当時のインドの社会制度など説明がされていてマンガからは読み取れない部分で理解が深まった気がします。とは言えどうしても古典の抜粋なので全体の流れをこれだけで理解するのは難しい感じもしました。手塚『ブッタ』を始め他の伝記で予習してから読んだ方が無難かもしれません。

「人生の指針」では様々な原始仏典の中から仏教の教えの根幹となる部分を抜き出して紹介しています。いろいろなエピソードが紹介されてはいますが、当時のインドの風習や社会情勢などの背景を承知した上でないと言っている意味が正しく理解できない点が多いように感じました。本書ではかなり丁寧にそのあたりを解説してくれてはいるし、そこを読んでいる限りには納得できるのですが、全体に通底する教えが何かを会得するには一読しただけでは足りないように感じました。

新約聖書もそうだし、たぶんコーランもそうなんでしょうけれど、聖典というのは繰り返し読む中で少しづつ理解を進めていくものだと思います。手元に置いて気になる箇所を繰り返し読むにはコンパクトにまとまっていて使い勝手はいいかもしれません。

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