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読み終えたのはだいぶ前なんですが、どうにも自分の中で消化しきれなくてなかなか感想が書けませんでした。

本書は2010年に放送されて話題となったNHKスペシャルの取材内容を書籍にまとめ直したものです。そのタイトル「無縁社会」は新語流行語大賞にもノミネートされたので記憶にある人も多いと思います。

一言に「無縁社会」と言っても、その状況や原因は様々です。本書ではいろいろな「縁」が切れた人たちの事情を取材して章ごとにまとめています。目次を眺めればざっくり内容は見えてくるのではないでしょうか。

  • 第一章 追跡「行旅死亡人」--わずか数行にまとめられた人生
  • 第二章 薄れる家族の絆--「引き取り拒否」の遺体の行方
  • 第三章 単身化の時代--「生涯未婚」の急増
  • 第四章 社縁が切れた後に--疑似家族に頼る人々
  • 第五章 ”おひとりさま”の女性たち--疑似家族に頼る人々
  • 第六章 若い世代に広がる”無縁死”の恐怖--ツイッターでつぶやく将来の不安
  • 第七章 絆を取り戻すために--二度の人生を生きた男
  • 第八章 消えた老人たち--相次ぐ高齢者の所在不明
  • 第九章 無縁社会から血縁社会へ--新しい「つながり」を求めて

「行旅死亡人」とは「住所、居所、もしくは氏名が知れず、かつ引き取り者なき死亡人(行旅病人および行旅死亡人取扱法1条2項)」であり、行旅死亡人は自治体が火葬、埋葬した上で官報で公告することになっています。つまり、行旅死亡人は死亡時に何の縁も確認できなかった人であり、無縁社会の象徴ということです。この行旅死亡人の追跡取材が本書の根幹をなすテーマになっています。

最も印象に残ったのは、第七章に登場した「木下敬二」さんの話でした。木下さんは東京都足立区で一人暮らしのアパートで孤独死しました。長年にわたって隣の保育園で働き園長と家族ぐるみの付き合いがあったようです。しかし、木下さんは亡くなった後に身元不詳のため行旅死亡人として処理されたのでした。

自称・木下さんは、もともと京都で生まれ育ち家庭を持っていたようです。しかし、奥さんと折り合いが悪く離婚することになり、失意のまま仕事を捨てて上京し、自分の名前も捨てて再就職したようです。一旦すべての縁を捨てて無縁となったものの、近所の保育園の園長の娘たちとの交流をきっかけにして、園長家族と第二の家族ともいうような関係を築き、穏やかな余生を過ごしたとのことです。

本書では様々な形態の「無縁」が描かれていて、妻も子もない身分の私としても身につまされるところが多々あったのですが、一方で自称・木下さんのように、一旦「無縁」に陥っても新たな縁を結ぶことができるという事実は一つの希望になるように思えました。

私を含む団塊ジュニア世代は、氷河期世代とかロストジェネレーションとか言われています。社会に出てから非正規雇用で貧困から抜け出せない人も多いですし、そうした経済的な問題から結婚して家庭を築くことが難しい人も多いです。この世代は人数も多いですから、これから25年もして働けなくなった頃には無縁死が当たり前のようになっていることでしょう。

政策的にどのような対策が求められるのか、私にはよくわかりませんけれど、まずはこうしたことが世の中で起きていることを知ることが第一歩だと思います。できることであれば無縁に陥らないようにできる範囲で自衛手段を講じることが重要でしょう。結婚して子供をもうけるとか、老後に施設に入るための貯蓄を備えるとか、いろいろ考えられるわけですが、何もしないで政治や社会に不満を垂れ流すだけの中高年にだけはなりたくないなと改めて思いました(関連)。

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