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米アップル社に関する面白い記事を読みました。

 米国の調査会社Statistaが公開資料を基にまとめたところによると、Appleは、米国への特許出願件数ではトップ10の常連だったが、2015年は、10位にわずか18件及ばず11位に沈んだ(図)。

出典:松村太郎の生搾りアップル情報 – 2015年は特許出願件数でトップ10に入らなかったApple

おや、おかしいな、と思いました。アップルは新しい技術を生み出して他者と差別化するよりも、こなれた技術を組み合わせて高いレベルで製品を完成させることを得意とする企業で、数の面で積極的に特許を取っているイメージはなかったからです。実際、アップル対サムスンの訴訟でもアップル側がサムスンを訴える際に用いた権利はデザイン特許(意匠)ばかりでした。

記事の元ネタをよく読むと、特許出願数ではなく特許取得数であることがわかりました。特許査定率は企業によって大きな差が出るわけではないので、出願数と取得数の違いが大勢に影響することはないと思いますが、筆者の知識レベルには疑問を感じなくもありません。

ということで、アップルの米国における特許取得数と企業別の順位を、遡れる範囲で調べてみました。結果は以下の通りになります。

Rank Grants
FY2015 11 1938
FY2014 11 2003
FY2013 13 1775
FY2012 22 1136
FY2011 39 676
FY2010 46 563

※2009年以前は50位圏外

グラフにするとこんな感じになります。

rank

ついでに件数の推移も出しておきますね。

grants

ランクを見ると2010年から2013年にかけてジャンプアップしていて、2013年から2015年まではトップ10目前で横ばいとなっています。件数では2010年には600件弱だったのが2014年には2000件を超えて3倍以上の伸びです。少なくとも過去6年間の中でアップルが米国の企業別特許取得数でトップ10にランクインした事実はありません。一方で特許取得意欲が減退していると言えるものでもありません。

何をどう調べたら「トップ10の常連だった」とか「11位に沈んだ」という記事ができあがるのか、まったく意味がわかりません。

私が考えるアップルの本当のすごさは、先進的な技術を持たなくてもイノベーションを起こすことができることを実証したことです。汎用技術の組み合わせでも優れたデザインや細部の徹底した作りこみで消費者の心を掴むことができたのです。これは、ある意味で特許制度へのアンチテーゼです。

アップルが先進的な製品を数多く出してきた企業だから知的財産の代表的な指標である特許関連統計でも抜きんでているという短絡的な思い込みで、数分あれば確認できる事実を調べもせずにいい加減な記事を書く人がジャーナリストを名乗るのはいかがなものかと思いました。

参考

IFI CLAIMS® 2015 Top 50 US Patent Assignees
IFI CLAIMS® 2014 Top 50 US Patent Assignees
IFI CLAIMS® 2013 Top 50 US Patent Assignees
IFI CLAIMS® 2012 Top 50 US Patent Assignees
IFI CLAIMS® 2011 Top 50 US Patent Assignees
2010 Patent Grants At All-Time High – Up 31 Percent Over 2009
American Companies Capture Less than Majority of 2009 U.S. Patent Pool

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