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濱口桂一郎さんの『働く女子の運命』を読みました。

『hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)』の記事がたまに話題になるのでお名前は存じ上げていましたが、著書を拝読するのは初めてでした。

近年安倍内閣が女性の活躍とか一億総活躍とか旗印に掲げていて女性の労働環境が以前にも増して議論の俎上に上ることが多くなりました。私は男兄弟で育ち男子校に学び女性の少ない職場で働き結婚もしていませんので、男女格差を実感する機会はあまり多くありませんでした。

世の中の女性差別反対論者には男性を一方的に敵視する人も多く、私のように実情を知らないと無関心であること自体が罪とばかりに責め立てる威勢のいい人もいます。私もちょくちょくネット上などで罵倒されて嫌な気分にさせられることも多いのですが、と言って知らないことには反論もできないわけで、この辺で触りだけでも押さえておこうかな、という気分になったのでした。

紹介文や書評も見ずにタイトルだけで買ったものですからイメージしていた内容とは少し違いました。女性の労働環境の現状とか将来展望とかを論じたものかと思っていたのですが、どちらかというとそれらは既知の前提として、なぜそのような状況に陥ってしまったのかを過去の経緯から丁寧に読み解くというものでした。

私の勝手な想像とは違いましたが、女性労働に留まらず年功序列や終身雇用など、いわゆる日本型雇用形態の成立過程も浮き彫りにされていて大変興味深い内容でした。私の理解した範囲では、日本型雇用のコアには「生活給」という概念があって一家を支える男性には職務が生み出す付加価値に関わらず一家を支えるだけの報酬をあげましょう、代わりにその責務を負わず出産等で離職する可能性の高い女性の賃金は低く抑えましょう、という考え方が根底にあり、これに手を付けずに男女雇用機会均等法などで男女区別なく同じ仕事をこなすようになってしまった結果、その歪みが生じているということなのだと思います。

私は扶養する家族もいないので、生活給という概念があると収入が低く抑えられる立場にありつつも、正直言って今のような給料をもらっていても使い道もないし、必要な人に割り振ってもらっても全然かまわないと思っていますが、そういう分配は税金で再分配する形で調整するべきだろうも思います。平等という観点では生活給という考え方は好ましくないと思いますが、人口が減少して国民全員の生活を賄うほどの富を生み出せなくなった社会で生活給という建前なしに満足な生活ができる賃金が果たして支払われるのだろうか、という危惧もあります。

そんな感じでなんか結局何をどうしたらいいのかよくわかんないな、というのが率直な感想でもあります。それは私がこの分野に関する十分な知識を持ち合わせていないことにも起因していますので、今後も機会があれば勉強したいと思います。

本書は、筆者の他著『日本の雇用と中高年』『若者と労働』と併せて三部作になっているとのことです。現代の労働環境を若者、中高年、女性という異なる弱者の側面からそれぞれ分析することで全体像が浮き彫りになるという試みかと思います。それ自体は結構だと思いますけれど、本文中で「これについては~~で説明した」といった箇所が多々あるので、私のようにいきなり本書から入ると消化不良な面もありました。

すべてを盛り込むと紙幅も足りないし収拾がつかなくなるのもわかりますが、それぞれ出版社も違うわけだし読む順番を想定しているなら何とかできなかったものかという感じはします。

ちなみに、奥付で初めて顔を拝見しましたが、意外に若くてびっくりしました。名前の感じとかブログの文体からもっと年配の方かと思っていました(失礼)。

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  • メタリカ学習帳

    男女の本来の役割を無視して雇用の平等ばかり訴え、それに依って生じる育児問題を解決しない行為は、言葉は悪いですが自国の将来を壊す女性の我儘の様に見えます。
    妊娠出産は女性にしか出来ませんし、子の成長過程に於いてなるべく母親が側にいてあげるのも子供の精神衛生含め、理想だと思います。
    その理想を壊さずに仕事や社会進出に女性の自我を求めて男性同様の平等を願うなら、託児所保育所を増やすのも良いですが、なるべく本人や子供の周りの人間、知っている人間にサポートして貰える様な環境が望ましく思います。
    例えば核家族ではなく昔ながらの拡大家族に戻り、祖父母に面倒を見て貰うとか、それには雇用企業の地方分権化をもっと図るとか、色々な着想があると思います。
    特に拡大家族は、独り身で子育てしている人の助けにもなりそうですし、老人介護の解決にも繋がりそう、孫の面倒を見るお年寄りの痴呆を防ぐ助けにもなりそうで色々利点がありそうです。
    無知な自分がパッと思い付くのはこんな程度しかありませんが、フェミニストを名乗る知識や視野の広い女性の方々が、地盤を作るきっかけを提案してくれれば、とても素晴らしい事です。
    子を育て家庭を守る事自体、大局的に見れば(見なくても)国に貢献していますし、立派な仕事だと思いますが、綺麗事かな。
    「生活給」の概念は日本らしくて面白いです。本読んでみます。

    • QJV97FCr

      メタリカ学習帳さま
      コメントありがとうございました。どうも不具合があってコメントが反映されない状態になっていたのに気づいていませんでした。すいません。
      もう遅いかもしれませんが、大変興味深い内容ですので、おすすめします。