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第154回芥川賞受賞作『死んでいない者』を読みました。

普段は小説を読むことはほとんどなく、話題の新刊を読むのは10年くらいぶりじゃないかと思うのですが、今回本作を手にしたのは、作者の滝口悠生さんが同郷出身だからです。

市役所では垂れ幕を掲げてお祝いしていました。扇小と向原中とのことなので、私の出身校とは学区が隣り合っています。

本作は、亡くなった男性の通夜の晩の出来事を描いたものです。男性は埼玉の農家で子供から孫、曾孫まで四世代が集まり、主体を変えながらそれぞれの行動が淡々と描かれていきます。

登場人物が多く人間関係が複雑なのでちゃんと追おうと思うと大変ですが、視点の移り変わりが自然だし、重要な人物は設定がはっきりしているのですべての人間関係をしっかり把握する必要もないように思います。むしろ普段交流の薄い親戚関係が突然一か所に集まって誰が誰かわからないカオスな雰囲気を醸し出すために、あえてわかり易さを排除しているのかもしれません。

私も2年前に父親の葬儀を経験しましたが、通夜の晩の雰囲気というのは独特なものがあります。明日には火葬されて骨になるわけで、故人が人間の形をしている最後の夜ですから。うちの場合は親戚も多くなく大雪のせいで友人関係もほとんど来られなかったので、本作のような賑やかな通夜というのは羨ましくも感じました。

物語自体は大きな盛り上がりもなく淡々と進行して消えるように終わっていきます。逆に通夜から告別式へ向かう特別な時間をうまく切り取った印象を与えるものになっているように思えます。

なかなか良作だと思いました。今後のご活躍をお祈りします。

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